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餓鬼
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しおりを挟む*ライside*
奴の動きは素早かった。
視界から消えた朱色の鬼が、次の瞬間には目の前に居た。
赤い
血の様に赤い眼
「あ!!」
見えたのは吹き出る鮮血。
痛みより先に鮮やかに飛び散る血。
続く痛みは、生きて居る証しなのか。
避けたつもりだった。
狙われた喉元をかすめ、右肩に食い込んだ牙。
人を喰う為に変化した固く尖った歯。
左腕に伸びた爪が刺さる。
「ライっ!!!!」
悲鳴の様に自分の名前を呼ばれてそちらに視線だけを動かす。
元気が叫んでた。
まほろば?
「「ガッハッ!?」」
痛みが離れる。
血の筋を流しながら朱色の鬼が床に飛ばされ転がり止まる。
「すまない」
まほろばの腕の中に居た。
温かくなる患部。瞬時に施される癒し。
閉じる傷。
引く痛み。
「大丈夫」
笑ってみせる。
金の瞳が苦悩の色に揺らぐ。
ココロに映る
自分の死んだ場面。
慟哭と真っ赤に染まったまほろばの躰。
俺の躰を残らず食べるまほろばの姿。
なんて事をさせたのか
まほろばのココロは傷付いて閉じる事で自我を守った。
何がなんでも生き抜いて俺を探して彷徨って……自分が失くしたココロを取り戻す為に。
俺だけを想って
俺だけを想って……
それはもはや“友情”とは呼べない。
俺だけを見つめるまほろばの金の瞳。
震えるココロが“愛情”を伝える。
そして返る想い。
「愛してる」
唇から零れた言葉を、まほろばのそれが塞いで居た。
もう迷う事はないだろう
*元気side*
おいおいおい!
お───い!?
なぁにしてんのさっ
あの二人はっ!
朱色の鬼が四つん這いになってこちらを見ている。
合わさる視線。
「「お前……見た。」」
肩までの黒髪、
赤い眼が光る鼻の高い大きな口が特長の顔。
口の周りから顔中にべったりと塗りたくった様についた赤い血。
「あぁ。元気って言うんだ。よろしくな!」
なんて自己紹介したって返ってくる言葉はない。
無言で光る眼。
ふー
ふー
と、鼻の荒い息遣いが響く。
俺にとっちゃ、初陣なのに
「まほろば!」
朱色の鬼と視線を離さない様にして呼んでみる。
返事は返って来ない。
天窓から覗く光りに、
朱色の鬼の全体像がうっすらと見えて来た。
普通の服装をしている。紺のジーパンに
薄い色のシャツ。
赤黒く染まってるのはお洒落じゃないよな。
俺と同世代だろうか?
“鬼”に成るにはそれなりの理由があるんじゃないか?
少なくとも、ライにしろ俺にしろ理由はあった。
“朱色の鬼”
は、悪事を働いて成る。
“鬼”
は、自らの意思で変化した者。
ただ、朱色の鬼の血を要する。
野放しに出来ない悪鬼を退治する。
一石二鳥の理由。
“千里眼”
使う時は眼が熱くなる。何かしら解決の糸口になるなら、こいつを探ろう。
視線は外さず、神経を集中させる。
喰われたくないからな!
***
………………………
小さな男の子が泣いて居る。頬はこけ眼はくぼんで、泣いて居るのに流れない涙。
だぼついた汚れたシャツから見える手足は棒の様に細く……ガリガリと言っていいくらいに痩せた身体を震わせてゆっくりと、足を進ませて歩く。
周りの風景が視える。
一面の焼け野原。
沢山の焼けた遺体。
また、赤く染まった空から聞こえるサイレンの音。
聞こえる戦闘機の通る音。
男の子はお腹を空かせていた。
骨と皮に成るまで何も口に出来ない状態は、偶然の重なった不運による。
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その山に戦闘機が突っ込む形で墜落し、山崩れが起こる。戦闘機と共に岩を含む土が入口を塞いだ。
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どうにかしようと大人達は素手で土を掘る。
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けれど、光りも見えず、息苦しくなるばかりで、最初に力尽きたのは小さな命。
生まれて間もない妹が死んだ。
息が苦しい。
次に、老人達が自ら命をたつ。それは、若い者達を生かす為に。
母親とおじさんと子ども二人が無心に穴を掘る。
穴を掘る
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