鬼に成る者

なぁ恋

文字の大きさ
45 / 210
炎鬼

しおりを挟む
 
*元気side*
 
まほろばの答えは
しっくり来る様な来ない様な……
でも、スッキリした感じはある。


樹利亜

鬼に成ったのか。
それも仕方ないのかもしれない。

けど、なんでさ。
何で俺の前に出てくれない?

ドレスを垂らして見て
随分とセクシーな作りで13歳の外見じゃあ着れないものだと解る。


「今の元気の姿じゃ着れないよ」

ライの笑いを含んだ声が寄越される。

「うるさいさっ!」

「行ってきます!」

バタバタ と音を響かせながら慌しく出掛ける二人。

「行っておいでー」

バタン 扉の閉まる音。
確かノブは取れたまんまだったよな。一人笑う。


二人が居なくなると途端に静かになる室内。

溜め息さえ響きそうだ。

空には白く小さな月が見える夜の訪れ、青い空が徐々に黒く染まる。

そんな外の姿を窓から眺めながら、もう“闇”を怖がっていない事に気付く。

一人で居ると思い浮かぶのは……「樹利亜」名を呼べば答えてくれそうで


ドレスを握り、ベランダへ出る。
梅雨の時期に入った外気はひんやりと身体を冷やして、ムズムズと鼻が───……


クシッ!


『可愛いらしいくしゃみね。早く服を着なさい』

「樹利亜!」

小さく笑う声が頭に直接聞こえて来た。

『居るわよ。大好きよ……元気』

「樹利亜……俺だって! 会いたいよ……姉さん」

『“樹利亜”で良いの。その内、会えるかも? 今はまだ、貴方の内が居心地好くて……ちゃんと私を想って居てね』

心臓の辺りに手の平を当てると、重なる鼓動が伝わって来る。

確かに樹利亜は俺の内に居るんだ

「樹利亜!」

『おやすみ……愛しい人』
 
 
───愛しい人?


優しい樹利亜。
俺の姉さん。
 
  
*********
 


*ライside*
 
けたたましいサイレンの音に振り向く。

ざわつくココロ。

“朱色の鬼”の気配。

『美麗』に入りながらその場所に目をやる。


燃える鬼気。
炎のイメージ。

「まほろば」
「あぁ。朱色の鬼だ」

その気配はすぐに消えた。



「いらっしゃいませ」

いつもの制服に着替えていつもの仕事をこなす。まほろばも慣れて来てちゃんと接客出来る様になっていた。


『美麗』は、喫茶店の様な作りになっている。
丸いテーブルにイスを二脚から四脚。仲間で来るも良し、一人で来ても気が合えば同じテーブルに着き会話する。そんな自由に話せる空間にしてあり、種類豊富なアルコールと、店長の作る美味しい軽食とが人気になっていた。
楽しい雰囲気に仕事の度に毎回癒されてる感じ。

ざわつく中、気になる会話が聞こえる。

「……でさ、その火事おかしいんだぜ」

若い男二人連れ。
話してる方の背後に気配を感じる。

燃える鬼気。


「お待たせ致しました」

テーブルにアルコールを置きながら会話に入る。

「さっきのサイレンの音は火事の?」

「そうだよ。それが変なんだ、炎は出て無いんだぜ! なのに室内が溶けてたんだってさ!」

「溶けて?」

「そうだよ。人間だったものの残骸。鉄扉に溶けてくっついてたって!」

興奮して話す。


「よく判りましたね」

そんな事件なら、ちゃんと判るまで他に漏らす事はない筈だ。

「二回目だからね。一年前に火の無い火事がおきてて大騒ぎになったんだ! 絶対そうだよ!」

騒ぐ男の唇に人差し指を置くと笑みを浮かべ。

「しぃ……そんなに大声を出さないで下さい。死者に気の毒だ」

赤くなる彼に会釈し、

「では、ごゆっくり」

言い置いて席を後にする。

 
***
 
喉を通るアルコールの熱さに幸せを感じる。

「クッ」

手に握る万札。
もともとは俺のものだから遠慮なく持ち帰った。

まぁ、もうアイツには必要ないよなぁ
溶けて無くなっちまったんだから


自業自得さ


アイツを探すのに手間取った。
一年も待つなんて退屈でつまらなかった。

「おっと」
手に持つビール缶が グニャリ と歪み、開いた穴から液体が零れる。
「もったいねぇ」
手を伝う液体を舐める。


丁度一年前、
自暴自棄になってアルコールに逃げた。

文字通り
酒を浴びる様に呑んで───酒を呑むと、体中が燃える様に熱くなる。

それで気付いたのは偶然。

燃やせる。

酒を呑んだ後、それが出来るんだ。
鉄は溶け。木材は燃え。水分は蒸発する。

「ククク……」

手に持つ缶が どろり と溶けて流れ落ちる。

「後一人」

男は ニヤリ と薄ら笑いを浮かべると立ち上がり、冷蔵庫を開け、新しい缶を取り出す。


フタを開け冷たい液体を口に流し込む。
掴んだ缶はそのままの形をとどめていた。


“能力”を完全に操る術を男は手に入れた。

それは一年を要した。

毎日毎日酒を呑み、
彼の身体には常にアルコールが溶け込んでいて……それ故、
体内の血液はアルコールに取って代わられて居た。


「クク……ククク―――」


男はただ笑う。


彼の狙う者は、
後一人。
 
 
 
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

  【完結】 男達の性宴

蔵屋
BL
  僕が通う高校の学校医望月先生に  今夜8時に来るよう、青山のホテルに  誘われた。  ホテルに来れば会場に案内すると  言われ、会場案内図を渡された。  高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を  早くも社会人扱いする両親。  僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、  東京へ飛ばして行った。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...