鬼に成る者

なぁ恋

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花鬼

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「……私がどんな状態にあったか、私がどれだけ醜いか、貴方は知らないから」

言って、隣りに座る龍太郎の手を取り、能力で、私の過去。母との暗闇の時間のすべてを流す。

半身を母に喰い取られ、元気と共存する事で身体を取り戻した過程を、

人として生きて行けないから鬼に成った事。





私は、浅はかで、弱い女なんだ。


「私は愛される資格はないのよ。
でも、愛する事は、そうね、貴方の言う通り、止められる筈がない」

握った手がいつの間にか強く握り返されていた。

「人とは弱いものだ。だから愛だの恋だの相手が居て成り立つものに“依存”するんだよ」

否、俺達は人でなく、鬼だったか? と、笑う。

「私は、危うい。面倒な女よ」

頬が熱くなるのが分かる。

「俺だって言えたもんじゃない」

手の甲に優しく口付けられ、上向く龍太郎の視線が絡む。

「俺と、恋をしろ」

「命令口調は嫌い」

言いながら、私から唇を寄せる。

唇が重なり、頭を支えられ、身体を優しく抱き寄せられた。

彼から来る熱は優しい。

甘えてしまいたくなる。
それを許してくれる男性。

元気を想う時は辛さが先立つ。龍太郎は、優しい気持ちにさせてくれる。


これが、恋なのだろうか?

唇から伝わる甘さが、何故か涙を流させた。

寿を、元気を想い、
春は、樹利亜は、冷たい涙を流した。

この涙は温かくて……
 
 
 
*元気side*  
  
***
………………………

私の膝で眠る小さな春。
名付けたのは私。
育てたのも私。

だから、親から貰えなかったありったけの愛を貴方に上げる。
返る気持ちが嬉しくて。

でも、離れないとならない。

私は贄になり、
春は巫女になる。

……………………… 
***


「ハ……ル……」

「元気? 大丈夫か?」

声に目を覚ます。

「まほろば?」

何だろう?
夢見てた。

ゆっくりと起き上がる。布団の上に居た。

「あ! 樹利亜は?」

「彼女なら龍太郎と一緒に居る」

「そう……か。何だろ? 泣いていたからさ」

「そう言う時はそっとしておいてやれ。
龍太郎が、慰めている」

何だか引っ掛かるんだよな。龍太郎?
そう言えば、樹利亜やたらと意識してた感じ。


「巣立つと思えば良い」

含み笑いでまほろばが意味深に言うから余計気になった。

「まだ、小さいんだ。守ってやらないと」

小さい?
「否。おかしいな。樹利亜は姉さんだ。むしろ 恋せよ乙女 だよな」

何か引っ掛かる。

「元気。思い出さないのは辛いか?」

まほろばが優しく言う。
思い出す?

「ココロに引っ掛かるものがある。それが何か、俺達姉弟に関係ある様な……」

「そして俺にも、だ」

頬に当てられたまほろばの手の平。
血が、逆流する。
俺に流れるまほろばの血が、
何かを思い出させる。

切なさがココロを一杯にする。
 
思い出せば、楽になるんだろうか? 
 
 
 
***  
………………………
 

沈む沈む
沈む

躰の内に、
血の流れに乗って、
ゆるりと、




水の中。
蠢くのは小さな生命。

感じるのは、自分の内。
自分の胎内。






俺?
俺は……

私。
私は、寿。

胎内に居るのは、私の愛し児。


愛しい赤児。
生まれたのは夕陽色の髪の男児。

彼を思い起こさせる愛児。


彼、
彼は、まほろば。

哀しみを内に秘めた鬼神。

私は彼を愛してた。
一方通行の想い。
けれど、
彼を助けたい。

そして、彼の傍に。
最期まで彼と居たくて、
赤児を春に託して山に入る。

春、
春は私の愛しい弟。

彼になら任せられる。





まほろばは、別れた同じ場所に居て、浅く眠って居た。

この眠りを強固にする。
私の予知は、200年後の再会。


ねぇ?
私も連れて行って、
貴方の傍で、
貴方と笑って過ごしたい。

能力のすべてを、まほろばの眠りに。
私の寿命を削って、
私は、
まほろばの傍で眠り、
やがて、
そう遠くない未来で






再会しましょう。



解ってる。
まほろばは、ひたすらに待って居た。

ライを。



私はそこに居て、安心したい。

どんなに切なくても、
どんなに苦しくても。




ただ、傍で見て居たい。



それが、幸せ。
 
 
 
 
 
 
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