3 / 28
真夏の情景
しおりを挟む
夏の朝、母が朝からカレーライスを作っていた。昼と夜にも食べられるから、朝のうちに作っておくと、便利なのだと、母が言った。
「朝もカレー?」と、僕が聞いた。
「ううん。朝はお味噌汁が作ってあるから」と、母が言った。
僕の母は、多代子という。僕の名前は、高梨幸人だ。
「あげの入った味噌汁?」と、僕が聞いた。
「ううん。おネギが入ったのだから……」と、母が丁寧に言う。
母は品が良い。父も色々女の人に、お金の関係でだまされたが、母を本当の人に選んだのは、良かったと僕は、思う。
それから、僕らはだらだらとテレビを付けて、見ながら食事をする。
「環境汚染だって」と、僕がテレビを見ながら言った。
「うん。空気が汚くなるのね……。肺に入るとか、こわいわ」と、母が言った。
僕の母親は、こうして、朝から僕の話しに色々付き合ってくれるのだ。
窓の外の、緑が静かに揺れている。
母は、ことりと音を立てて、味噌汁のお椀を、テーブルの上に置いた。
僕は朝食を黙々と食べる。やはり母の作ってくれたご飯は美味しい。
「そろそろ学校に行こうかな? 今日も暑くなりそうだし」と、僕が言った。
「うん、行ってらっしゃい。幸人くん、気を付けてね」と母が言った。
僕の母は、僕にいつも「くん」を付けて呼ぶ。そのことがなぜか嬉しい。
「それじゃあ行ってきます」
「うん。ずっと家にいるから……」
一歩外に出ると、汗が出てきた。今日もとても暑い一日になりそうだった。僕は息をはきながら、
新見高校に向けて、坂を登って行った。白い後ろ姿が、ゆらゆらと陽炎と混ざってゆれている。
有紀、長谷川有紀の後ろ姿だった。
「長谷川さん?」
「あっ、高梨くん……」
有紀がそう言って、にっこりと笑った。一瞬だけ涼やかな風が吹いたような気分になる。
「暑いね。今日何度あるんだろう」
「三十一度」
有紀がそう細かいことを言う。
そのまま僕らは、新見高校に向けて歩いて行った。
夏の花が、住宅街に静かにゆれている。
僕らは、校門をくぐって行った。
教室に着くと、有紀が金魚鉢に向かって行った。金魚が、プカプカと泡をはいて、ゆったりと自由に泳いでいる。
「エサもうあげたのかな?」
「まだだと思う」
有紀はしばらく、あごに手を当てて考え始めた。
「たまには、エサあげてみたいんだけど」
「いいんじゃない。ちょっとくらいだったら」
有紀はそのまましばらく考えて、金魚のエサをあげはじめた。金魚たちがいっせいにエサをめがけて泳ぎ出す。
「早い」
「うん。早いよね。お腹空いていたのかもね」
それから、僕らは、席に着いて、しばらくじっとしていた。
新見高校の、木々がさやかに陽に当たり揺れている。
僕は、少し吹き出す汗とともに、眠気を覚えた。
「ねえ」と、有紀が言う。
「何?」と、僕が言う。
チクタクチクタクと、時計の秒針が進む音がする。そうしていると、同じ同級生の、南条広人が教室に入って来た。
「どもー。おはようっす!」と、広人が言った。
「え?」と、僕が言った。
「あっ、長谷川さんがいる。めっちゃ美人。美しすぎる」と、広人が少し疲れた顔で言った。
「ありがとう」と、言って、有紀がにっこりと笑う。
そのまま、広人につられるようにして、生徒たちがづらづらと教室に入って来た。有紀が少し疲れたような顔をしていた。僕は、席に着いて、少し目を閉じた。
「朝もカレー?」と、僕が聞いた。
「ううん。朝はお味噌汁が作ってあるから」と、母が言った。
僕の母は、多代子という。僕の名前は、高梨幸人だ。
「あげの入った味噌汁?」と、僕が聞いた。
「ううん。おネギが入ったのだから……」と、母が丁寧に言う。
母は品が良い。父も色々女の人に、お金の関係でだまされたが、母を本当の人に選んだのは、良かったと僕は、思う。
それから、僕らはだらだらとテレビを付けて、見ながら食事をする。
「環境汚染だって」と、僕がテレビを見ながら言った。
「うん。空気が汚くなるのね……。肺に入るとか、こわいわ」と、母が言った。
僕の母親は、こうして、朝から僕の話しに色々付き合ってくれるのだ。
窓の外の、緑が静かに揺れている。
母は、ことりと音を立てて、味噌汁のお椀を、テーブルの上に置いた。
僕は朝食を黙々と食べる。やはり母の作ってくれたご飯は美味しい。
「そろそろ学校に行こうかな? 今日も暑くなりそうだし」と、僕が言った。
「うん、行ってらっしゃい。幸人くん、気を付けてね」と母が言った。
僕の母は、僕にいつも「くん」を付けて呼ぶ。そのことがなぜか嬉しい。
「それじゃあ行ってきます」
「うん。ずっと家にいるから……」
一歩外に出ると、汗が出てきた。今日もとても暑い一日になりそうだった。僕は息をはきながら、
新見高校に向けて、坂を登って行った。白い後ろ姿が、ゆらゆらと陽炎と混ざってゆれている。
有紀、長谷川有紀の後ろ姿だった。
「長谷川さん?」
「あっ、高梨くん……」
有紀がそう言って、にっこりと笑った。一瞬だけ涼やかな風が吹いたような気分になる。
「暑いね。今日何度あるんだろう」
「三十一度」
有紀がそう細かいことを言う。
そのまま僕らは、新見高校に向けて歩いて行った。
夏の花が、住宅街に静かにゆれている。
僕らは、校門をくぐって行った。
教室に着くと、有紀が金魚鉢に向かって行った。金魚が、プカプカと泡をはいて、ゆったりと自由に泳いでいる。
「エサもうあげたのかな?」
「まだだと思う」
有紀はしばらく、あごに手を当てて考え始めた。
「たまには、エサあげてみたいんだけど」
「いいんじゃない。ちょっとくらいだったら」
有紀はそのまましばらく考えて、金魚のエサをあげはじめた。金魚たちがいっせいにエサをめがけて泳ぎ出す。
「早い」
「うん。早いよね。お腹空いていたのかもね」
それから、僕らは、席に着いて、しばらくじっとしていた。
新見高校の、木々がさやかに陽に当たり揺れている。
僕は、少し吹き出す汗とともに、眠気を覚えた。
「ねえ」と、有紀が言う。
「何?」と、僕が言う。
チクタクチクタクと、時計の秒針が進む音がする。そうしていると、同じ同級生の、南条広人が教室に入って来た。
「どもー。おはようっす!」と、広人が言った。
「え?」と、僕が言った。
「あっ、長谷川さんがいる。めっちゃ美人。美しすぎる」と、広人が少し疲れた顔で言った。
「ありがとう」と、言って、有紀がにっこりと笑う。
そのまま、広人につられるようにして、生徒たちがづらづらと教室に入って来た。有紀が少し疲れたような顔をしていた。僕は、席に着いて、少し目を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる