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しばらく学生証を眺めていると、フッと息を吐く。
僕は、今違う肉体を持っているのだ。もう、新見高校の中の様に、「高梨君」と声をかけてくれる生徒もいない。
僕は、痛切な寂しさを感じ始めていた。
僕の脇を、分厚い図書館蔵書のシールが貼られている、本を小脇に抱えた若い男性が通り過ぎた。
ちらちらと僕の方を、気にするように見ている。
僕は立ち上がると、有紀に連れられた、研究室の方へと向かって行った。
やはり有紀の姿が見えない。時刻は、9時55分だった。
しかし、このままあのアパートの方へと帰っても仕方ないだろう。
僕はそう思って、しばらく立ちすくしていた。
そうだ、僕は元の新見高校へと戻らなければならない。そして広人とも再会するのだ――。
野球部で、マンガ家にもなりたかった広人。今は一体どうしているのだろうか。
今? 今という時間も、奇妙に思えてくる。もしかして、僕が札幌に来てから、時は止まったままなのかもしれない。
新見高校に、戻らなければ。僕は、妙な使命感に燃えていた。
仕方なく、大学の構内を歩き回っていると、三号館の中にある、図書閲覧室で、静かに本を眺めている長谷川有紀がいた。
「有紀」
僕の口から、そう声が漏れる。思わず「長谷川さん」ではなく、有紀と呼んでしまった。
「えっ、ああ……。幸人君ね」と、有紀が言った。
「昨日の話しの続きだ。僕はしつこいんだ。ちょっと外の方へと出よう」
僕はそう言って、有紀の手を引っ張って行った。
僕は、今違う肉体を持っているのだ。もう、新見高校の中の様に、「高梨君」と声をかけてくれる生徒もいない。
僕は、痛切な寂しさを感じ始めていた。
僕の脇を、分厚い図書館蔵書のシールが貼られている、本を小脇に抱えた若い男性が通り過ぎた。
ちらちらと僕の方を、気にするように見ている。
僕は立ち上がると、有紀に連れられた、研究室の方へと向かって行った。
やはり有紀の姿が見えない。時刻は、9時55分だった。
しかし、このままあのアパートの方へと帰っても仕方ないだろう。
僕はそう思って、しばらく立ちすくしていた。
そうだ、僕は元の新見高校へと戻らなければならない。そして広人とも再会するのだ――。
野球部で、マンガ家にもなりたかった広人。今は一体どうしているのだろうか。
今? 今という時間も、奇妙に思えてくる。もしかして、僕が札幌に来てから、時は止まったままなのかもしれない。
新見高校に、戻らなければ。僕は、妙な使命感に燃えていた。
仕方なく、大学の構内を歩き回っていると、三号館の中にある、図書閲覧室で、静かに本を眺めている長谷川有紀がいた。
「有紀」
僕の口から、そう声が漏れる。思わず「長谷川さん」ではなく、有紀と呼んでしまった。
「えっ、ああ……。幸人君ね」と、有紀が言った。
「昨日の話しの続きだ。僕はしつこいんだ。ちょっと外の方へと出よう」
僕はそう言って、有紀の手を引っ張って行った。
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