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四聖龍
王として
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四聖龍の敗北は、騎士団の敗北を意味する。
さらに、イングヴァーも殺せていない。完全に負け戦だ。
幸いなのは、敵の目的がイングヴァーのみということもあり、他の騎士団員に敵の手が伸びていない。
よって、そちらはノーダメージで済んでいる。唯一の救いは、そこだけだ。
ただ、それはそれだ。
レイズたちも目の前には、圧倒的絶望が広がっている。
「終わりだ……何もかも……!」
バージルは膝から崩れ落ちる。
正直、レイズも同じ事を思ったが、剣は握ったままだ。自分は、まだ戦える。
だが、戦ってどうする。四聖龍が一対一で戦って勝てなかった相手だ。自分たちでどうにかできるレベルではない。
しかし、このままイングヴァーが奪われてしまうのは、あまりにも酷だ。
「イングヴァーは貰っていくぜ」
「くそ……」
バージルは動けない。
立ち上がろうにも、足が震え、力が入らない。
フリアはそれを見て、意味深に鼻で嗤う。
そのまま目的に近付こうとした時だ。
「……させません」
レイラがフリアの前に立つった。
剣を構え、龍力を高める。ドラゴン・ソウルを超えている力が満ちていく。
「ほぅ……俺とやろうってか?」
「ッ……!!」
彼は右で刀を抜き、肩に構える。
彼の龍圧に、レイラは思わず怯んでしまう。
それにシンクロするように、龍力が揺らぐ。土台を失ったかのように、不安定になる。
ドラゴン・ソウルは解除されていないようだが、力はだいぶ落ちている。
「俺たちの力が分からない間抜けでもないだろ」
「く……ですが……」
それでも、彼女は退かない。
龍力こそ高まっているものの、足は震え、全く覇気を感じない。
「イングヴァーさえ貰えれば、ここはオサラバしてやるよ」
フリアはそう言いながら、レイラの脇を通りぬける。
「……!!」
剣を振れば当たる。その距離なのに、レイラは動けなかった。
四聖龍を凌ぐ龍力者。それが三人いる。
不意打ちが通じる相手でもない。
(何がフル・ドラゴン・ソウルですか……!!全然敵わないじゃないですか!?)
堪えきれず、涙が流れる。
レイラは、シャンバーレでの修行の日々を思い出していた。
とある日、レイラは、修行終わりにクラストに呼び出されていた。
「お前は、基礎は十分できている。だが、応用力がなさすぎる」
「応用力……」
「あぁ。ここ数日の付き合いだが、それは断言できる」
確かに、騎士団に長く身を置いていたし、特訓はキッチリ行っていた。
自分でも基礎力はあると思っている。クラストもそれは認めてくれた。しかし、自分より格上であったり、想定外のことが起こったりした際、脆さが目立つという。
「どんな戦闘でも決まった『型』を作るのにおれは反対しない。だが、それではいつか限界が来る」
「限界……ですか?」
「あぁ。いくらお前がフル・ドラゴン・ソウルを扱えるようになったとはいえ、龍にとっては『器』は変わっていない。お前のパートナー(龍)は、それを感じるはずだ」
『主の力は、こんなもんだ』と。
レイラの目が見開かれる。
最初の座学で、龍魂を扱える理由や原理は学んだ。
その理屈で言うと、自分の限界は近い。
「どうすれば……いいでしょうか……」
「お前は、『守る戦い』では力を発揮する傾向にある。光龍なのも関係あるだろうが、主の性格的な部分もある」
「守るのは……はい……」
「マリナも似たような傾向があるが、アイツのは少し違うな。人を選ぶ感じだ。だが、お前のそれは、光龍と性格と……」
「肩書と」と言いかけ、慌てて口を閉じるクラスト。大丈夫。気付かれてはいない。
「守る、戦い……」
守るのが好き。この表現は適切ではないが、レイラはそんな戦いでは力が出せる気がしていた。
だが、そんな戦いは今までもあった。力が出せる気がするだけで、力が増したわけではない。
「それは、『思い』と『力』のリンクが不十分だからだ。本当に危機的状況になれば、きっと分かる」
「……思いを……力に……?」
レイラはそれを習得しきれないまま、シャンバーレを後にした。
『感じる領域』であるし、特訓レベルではホンモノの危機的状況を作れない。
クラスト的には、今後の戦闘でそれを理解してほしいと考えたのだろう。
そして、今。
レイラはその状況にいる。国を守り、率いる者として。
「今、ここが!守る戦いです!!ここで力を出せずに、王が名乗れますか!?」
レイラは叫ぶ。
フリアは足を止め、振り替える。
「あ?」
「……ここで退く王が!!国を守れますか!!?」
レイラの龍力が膨れ上がる。
『フル・ドラゴン・ソウル』の領域へと、一気に力が充実していく。
「!!」
「私は!!御下がりの王じゃない!!!」
クラストの言う、『守る戦い』。
彼女の意志と、光龍の意思がシンクロし、過去にないレベルの力を引き出している。
涙が龍圧で遡り、目尻から宙を舞う。
勝負はまだ、終わっていない。
さらに、イングヴァーも殺せていない。完全に負け戦だ。
幸いなのは、敵の目的がイングヴァーのみということもあり、他の騎士団員に敵の手が伸びていない。
よって、そちらはノーダメージで済んでいる。唯一の救いは、そこだけだ。
ただ、それはそれだ。
レイズたちも目の前には、圧倒的絶望が広がっている。
「終わりだ……何もかも……!」
バージルは膝から崩れ落ちる。
正直、レイズも同じ事を思ったが、剣は握ったままだ。自分は、まだ戦える。
だが、戦ってどうする。四聖龍が一対一で戦って勝てなかった相手だ。自分たちでどうにかできるレベルではない。
しかし、このままイングヴァーが奪われてしまうのは、あまりにも酷だ。
「イングヴァーは貰っていくぜ」
「くそ……」
バージルは動けない。
立ち上がろうにも、足が震え、力が入らない。
フリアはそれを見て、意味深に鼻で嗤う。
そのまま目的に近付こうとした時だ。
「……させません」
レイラがフリアの前に立つった。
剣を構え、龍力を高める。ドラゴン・ソウルを超えている力が満ちていく。
「ほぅ……俺とやろうってか?」
「ッ……!!」
彼は右で刀を抜き、肩に構える。
彼の龍圧に、レイラは思わず怯んでしまう。
それにシンクロするように、龍力が揺らぐ。土台を失ったかのように、不安定になる。
ドラゴン・ソウルは解除されていないようだが、力はだいぶ落ちている。
「俺たちの力が分からない間抜けでもないだろ」
「く……ですが……」
それでも、彼女は退かない。
龍力こそ高まっているものの、足は震え、全く覇気を感じない。
「イングヴァーさえ貰えれば、ここはオサラバしてやるよ」
フリアはそう言いながら、レイラの脇を通りぬける。
「……!!」
剣を振れば当たる。その距離なのに、レイラは動けなかった。
四聖龍を凌ぐ龍力者。それが三人いる。
不意打ちが通じる相手でもない。
(何がフル・ドラゴン・ソウルですか……!!全然敵わないじゃないですか!?)
堪えきれず、涙が流れる。
レイラは、シャンバーレでの修行の日々を思い出していた。
とある日、レイラは、修行終わりにクラストに呼び出されていた。
「お前は、基礎は十分できている。だが、応用力がなさすぎる」
「応用力……」
「あぁ。ここ数日の付き合いだが、それは断言できる」
確かに、騎士団に長く身を置いていたし、特訓はキッチリ行っていた。
自分でも基礎力はあると思っている。クラストもそれは認めてくれた。しかし、自分より格上であったり、想定外のことが起こったりした際、脆さが目立つという。
「どんな戦闘でも決まった『型』を作るのにおれは反対しない。だが、それではいつか限界が来る」
「限界……ですか?」
「あぁ。いくらお前がフル・ドラゴン・ソウルを扱えるようになったとはいえ、龍にとっては『器』は変わっていない。お前のパートナー(龍)は、それを感じるはずだ」
『主の力は、こんなもんだ』と。
レイラの目が見開かれる。
最初の座学で、龍魂を扱える理由や原理は学んだ。
その理屈で言うと、自分の限界は近い。
「どうすれば……いいでしょうか……」
「お前は、『守る戦い』では力を発揮する傾向にある。光龍なのも関係あるだろうが、主の性格的な部分もある」
「守るのは……はい……」
「マリナも似たような傾向があるが、アイツのは少し違うな。人を選ぶ感じだ。だが、お前のそれは、光龍と性格と……」
「肩書と」と言いかけ、慌てて口を閉じるクラスト。大丈夫。気付かれてはいない。
「守る、戦い……」
守るのが好き。この表現は適切ではないが、レイラはそんな戦いでは力が出せる気がしていた。
だが、そんな戦いは今までもあった。力が出せる気がするだけで、力が増したわけではない。
「それは、『思い』と『力』のリンクが不十分だからだ。本当に危機的状況になれば、きっと分かる」
「……思いを……力に……?」
レイラはそれを習得しきれないまま、シャンバーレを後にした。
『感じる領域』であるし、特訓レベルではホンモノの危機的状況を作れない。
クラスト的には、今後の戦闘でそれを理解してほしいと考えたのだろう。
そして、今。
レイラはその状況にいる。国を守り、率いる者として。
「今、ここが!守る戦いです!!ここで力を出せずに、王が名乗れますか!?」
レイラは叫ぶ。
フリアは足を止め、振り替える。
「あ?」
「……ここで退く王が!!国を守れますか!!?」
レイラの龍力が膨れ上がる。
『フル・ドラゴン・ソウル』の領域へと、一気に力が充実していく。
「!!」
「私は!!御下がりの王じゃない!!!」
クラストの言う、『守る戦い』。
彼女の意志と、光龍の意思がシンクロし、過去にないレベルの力を引き出している。
涙が龍圧で遡り、目尻から宙を舞う。
勝負はまだ、終わっていない。
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