龍魂

ぐらんじーた

文字の大きさ
303 / 469
ある一族

阻害因子

しおりを挟む
「すげぇじゃねぇか!お前!」
「ふん、余裕よ」

興奮するレイズと、まんざらでもなさそうなアルナ。
彼らの家系は、月龍であることが全てだ。故に、その後の力量に両親は興味がなく、いくら強かろうが評価することもない。
よって、初めて誰かから認められた気がしているのだ。

良くも悪くも、レイズの素直な性格が功を奏した形となる。

「ちょっと本気を出せば、もっと短時間でやれるわ」
「マジかよ!技もかっけぇよな!」

銀色の刃で!!など、レイズは興奮が治まらない。
こう!で、こう!!など、リルナの真似事をしている。先程までの苛立ちが嘘のようだ。
これが、掌ドリルか。

「……レイラ」
「えぇ」

レイズとアルナが話しているのを見ながら、バージルとレイラは少し離れた場所で、二人を眺めていた。
バージルもレイラも、似たようなことを考えていた。

「強い。『けど』だよな」
「同感です。強さは本物ですが、『ドラゴン・ソウル』の域を出ていません」

間違いなく、リルナは強い。出会う時期が少しずれていれば、レイズたちよりも実力は上だっただろう。
だが、その強さは『ここ』だけの話だ。
彼女のレベルで外界に出たとして、フリアやスゼイに匹敵する龍かと問われれば、答えは「ノー」だ。
実際に、外界でリルナと戦えば、苦戦することなく勝てるだろう。
それだけ、暗雲界では彼らの実力の阻害因子がある。

今のリルナでも、騎士団で見積もっても、上位に食い込める。
ただ、世界全体を見たとき、リルナや自分たちは、上位クラスには入ることはない。
これは、『あの日』により龍魂は無秩序に広がったこと。それに起因してかは不明だが、各地で強い魔物や龍力者が現れ始めていること。そして、フリアたちの勢力、四聖龍の存在が大きい。
この短期間で、世界のパワーバランスは大きく崩れてしまった。

リルナは強いが、それは「井の中の蛙大海を知らず」だ。
そして、今もここに潜伏しているのか分からないが、フリアやスゼイと出くわしてしまえば、その自信は粉々に砕け散るだろう。

「この中でも、力は存分に発揮できる。ってことが分かったな」
「えぇ。影響を受けているのは、私たちだけのようです」

リルナの戦闘を見たことで、『龍力そのものが使えないのではなく、影響を受けているため扱えていない』ことが証明できた。
彼女が龍力を扱えるのだから、自分たちだって扱うことができるはず。それが理解できたことは、精神的にもメリットなのかもしれない。
ただ、問題は解決していない。この最悪なコンディションの中、力を出せる方法を学ばなければ、ここでは戦えないのだから。
色々考えていると、レイズがドンピシャな質問をアルナに投げかけた。

「……どうやってあんな力を出せるんだ?俺らだと、なんか力が入りにくいんだよな」
「?……どういうこと?」
「『外』と比べて、なんか力が出ないんだよ。この雲?のせいだと思うんだけど」
「……アンタたち、知らずに来たの?」
「え?」
「暗雲界のこれは、自然現象じゃないわ。龍力によるものよ」
「ほぇ?」

ほんとか?と、え?が混じった変なアホっぽい声を出してしまうレイズ。

「……そうか」
「みたいですね」

レイズたちの会話を盗み聞きし、力が出しにくい原因を理解したバージルとレイラ。

四聖龍や自分たちも感付いてはいたが、あくまで予測だった。
これまでは『疑惑』だったものが、『確証』へと変わった瞬間だ。

この暗雲により、何らかの影響が発せられ、外界生活者の精神的ダメージを与える。その結果、龍とのリンクがうまく繋がらず、力を引き出せなくなる。
しかし、龍の力であれば、もっと強く龍力の気配を感じても良いものだが。
こんなにも広範囲に、かつ分厚い雲を常時発動させているのだから。

「けど、(龍力者から殺意を向けられたような)嫌な感じはしねぇぞ」
「当然よ。力の源?に悪意がないわ。現象自体は龍によるものだけど、攻撃するものじゃない。リルナには分からないけど、あんたたちが龍力を使うときに、この力が干渉しているだけ」

四聖龍や自分たちが感じた・感じている気味の悪さ。
これは、この暗雲から発せられる龍力が自分の龍と干渉し、リンクの『歪み』を生じさせているから。か。
嫌な気配を感じるものの、殺意ほどのそれをかんじないのは、あの力に明確な殺意がないから。
それでも、体調不良を訴えるのは、強力な龍力故に、か。加えて、日の光を浴びていないから。も加わるのか。

「……アルナはこれが普通だけど、あんたたちは違うみたいね。この歪みを攻略できないと、いつまでたっても雑魚のままよ」

ま、月龍じゃない時点で雑魚だけど、とリルナは話を結ぶ。
うんざりしそうな月龍上げだが、今は何とも思わない。実力は証明されているからだ。

漠然としていたものが、急に明確になった。
具体的な解決案は浮かばないが、また一歩進んだ気がしたレイズたちであった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

『悪役令嬢』は始めません!

月親
恋愛
侯爵令嬢アデリシアは、日本から異世界転生を果たして十八年目になる。そんな折、ここ数年ほど抱いてきた自身への『悪役令嬢疑惑』が遂に確信に変わる出来事と遭遇した。 突き付けられた婚約破棄、別の女性と愛を語る元婚約者……前世で見かけたベタ過ぎる展開。それを前にアデリシアは、「これは悪役令嬢な自分が逆ざまぁする方の物語では」と判断。 と、そこでアデリシアはハッとする。今なら自分はフリー。よって、今まで想いを秘めてきた片想いの相手に告白できると。 アデリシアが想いを寄せているレンは平民だった。それも二十も年上で子持ちの元既婚者という、これから始まると思われる『悪役令嬢物語』の男主人公にはおよそ当て嵌まらないだろう人。だからレンに告白したアデリシアに在ったのは、ただ彼に気持ちを伝えたいという思いだけだった。 ところがレンから来た返事は、「今日から一ヶ月、僕と秘密の恋人になろう」というものだった。 そこでアデリシアは何故『一ヶ月』なのかに思い至る。アデリシアが暮らすローク王国は、婚約破棄をした者は一ヶ月、新たな婚約を結べない。それを逆手に取れば、確かにその間だけであるならレンと恋人になることが可能だと。 アデリシアはレンの提案に飛び付いた。 そして、こうなってしまったからには悪役令嬢の物語は始めないようにすると誓った。だってレンは男主人公ではないのだから。 そんなわけで、自分一人で立派にざまぁしてみせると決意したアデリシアだったのだが―― ※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

処理中です...