新生活はパスタとともに

矢木羽研

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本編

あとがき

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 最後までお読みいただきありがとうございました。

 カクヨムでは、毎年アニバーサリーイベントとして「カクマラソン」というものがあります。数日おきに発表されるお題に対して、即興で作品を書き上げるというお祭りのようなイベントです。

 特にフォーマットは定められていないのですが、去年のイベントで私は「続き物のストーリー」という形で挑戦してみました。お題は当日までわからないので、ロードムービー形式にして主人公の旅先と絡めるという手法をとりました。『ある休日の出来事』というタイトルでアルファポリスにも掲載してあります。興味がある方は、一番下にあるリンクからお読みになってみてください。

 さて、今年も続き物で行こうと思いましたが、ちょうど昨年末に『日曜の昼は後輩女子にパスタを作る』という、一年近くにわたって連載した作品が完結していたところでした。何らかの形で続編を発表したかったので、ちょうどいい機会です。KACのお題と、パスタのレシピを両立させるのは困難かも知れませんが、やりがいはあると思いました。さらにもう一つ「旬の食材」というテーマも取り入れることにしました。

 *

第1話:アジのシチリア風さんが焼きのパスタ
 テーマ「書き出しが『○○には三分以内にやらなければならないことがあった』」、食材「アジ」

 もともとは別の小説に登場させたレシピでした。パスタを茹でるのと具を作るの同時進行なので、自然な形でスタート。アジのなめろうを作るところから始める場合、シリーズで一番手間がかかるレシピかも知れません。

 冒頭、同棲を匂わせるようなところから始まりますが、あくまで今はただのお泊りです。近いうちに同棲を計画しているんだろうなと想像しながら書いていたら……


 *

第2話:葉ニンニクのペペロンチーノ
 テーマ「住宅の内見」、食材「葉ニンニク」

 というわけで、前回の結びからぴったりのお題になりました。内見そのものはそこそこにして、珍しい野菜の供給ポイントとして「近所の八百屋さん」という便利屋を設定。旬の食材という方向性も、このあたりからはっきりと定めました。

 ペペロンチーノはある意味万能で、極端なことを言えばあらゆる野菜で作れます。そのため、以降のレシピではやや強引にペペロンチーノから外していったりもしたくらいです。

 *

第3話:アンチョビと菜の花と新玉ねぎのパスタ
 テーマ「箱」、食材「菜の花」

 極めて無難なお題でした。適当な食材でも調理器具でも箱に入れてしまえばいいのですから。たまたまリアルで買っておいた菜の花と合わせるためにアンチョビということに。引っ越し作業中に古い缶詰が出てくるというのも、よくある話だと思いますので。ついでに、引っ越しの箱詰めの話も入れました。

 そして前回に引き続きペペロンチーノにしてしまいました。やっぱりアンチョビの風味はシンプルに活かしたかったので。

 *

第4話:わさび菜のサグキーマカレーソース
 テーマ「ささくれ」、食材「わさび菜」

 わさび菜というややマニアックな素材。これもリアルで手に入ったからです。サグカレーにまつわる雑学(本当はほうれん草じゃない)は、いずれ何らかの作品を通して語りたかったので良い機会となりました。「ささくれ」から話を広げづらかったので、傷んだ指先をケアするために包丁を使わないという強引な形でまとめました。

 シンプルながらも、カレー粉に頼らないスパイスカレーです。ターメリックを敢えて使わないという引き算の発想にはお褒めの言葉もいただきました。

 *

第5話:ハーブ薫る春キャベツのパスタ
 テーマ「はなさないで」、食材「春キャベツ」

 作中でフェンネルシードが手に入らなかったというのはリアルを反映しています。最初は例によってペペロンチーノにしそうになりましたが、ハーブの香りを活かすという方向性でひと味アレンジ。後述のカモミールと被ってしまいましたが……。

 ワンパンパスタなので「目を離さないで」、ついでに胃袋もつかんで離さないと、ちょっとのろけさせてみました。

 *

第6話:今が旬?!卵タルタルと南蛮風チキン
 テーマ「トリあえず」、食材「鶏卵」

 卵の旬が春という雑学と、このお題(カクヨムのマスコットキャラの「トリ」を意識したものらしい)。最初は親子丼風を考えたのですが、ちょっと無理そうなのでチキン南蛮風にしてみました。

 今回のレシピは盛り合わせ的なもので、チキンだけでもタルタルソースだけでも単品で使えるレシピです。パスタ料理としてまとめるならもう少しパンチがあっても良かったと思いますが、このあたりのライブ感も本作の特徴だと思っています。

 *

第7話:彩りのカモミールクリームソース
 テーマ「色」、食材「カモミール」

 テーマを見てから食材調達に行ったのですが、まさか生のカモミールが手に入るとは思いませんでした。今までに使ったことは全くなかったので、色々調べてみてなんとかクリームソースにたどり着きました(店員さんは葉っぱもサラダで食べられると言っていたが、香りが強すぎてとても無理だと思う)。

 最後はカモミールの見た目から連想してハルジオンなどの春の花の思い出。なかなかきれいにまとめられたのではないかと。

 *

第8話:しらす干しと柚子のオイルソース
 テーマ「めがね」、食材「柚子」

 実は後輩ちゃんが眼鏡を掛けている(ときもある)というのは、連載初期の頃から考えていたのですが、作中では一度も出していないことに後から気づいて失敗したと思いました。食材選びは適当、というかちょうど前日にプライベートで柚子のパスタを作っていたので、それを流用することにしました。

 最後は眼鏡をかけたカップルあるあるのキスシーンで、甘い幕引きです。

 *

 やり始めたときは本当に完走できるのか不安だったのですが、「先輩と後輩」というフォーマットが想像以上に体に馴染んでおり、蓋を開けてみればとてもスムーズに書き進めることができました。二人の物語については、いずれまた何らかの機会にお披露目することにいたしましょう。

 それでは最後までありがとうございました。以降は作中に登場したレシピの紹介です。
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