群雄割拠した異世界では訳アリな人物で溢れていた

霧矢風月

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第41話 炊飯器の条件

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 シェーナは工房の案内をするためにルトルスと同行することにした。
 ルトルス一人でサリーニャと合わせるのは妙な事になるのではないかと心配になったからだ。
 キシャナは炊飯器をできたら欲しいとのことで、朝食を届けるついでにサリーニャと相談することにする。
 シェーナはサリーニャのことをルトルスに話すと、似顔絵の件で理解してくれた。

「サリーニャとは、前に私とシェーナの似顔絵を描いてくれたエルフの少女か」
「彼女も俺やキシャナと同じく転生リインカーネーションしたんだ」
「まさか……三人目がいたのか」
「前世から変わり者でね。あの似顔絵も彼女が趣味で描いた物だよ」
「なかなか良い趣味をしているな」

 ルトルスは似顔絵を自室で額縁に飾る程、気に入っている。
 個人の趣味にとやかく言うつもりはないが、自分が顎クイされている絵を飾られるのは気恥ずかしいとシェーナは思う。
 シェーナやルトルスは騎士として国に忠誠を誓っていたが、シェーナの場合は自分の居場所を見つけるために騎士になったようなもので、一般的な騎士に比べたら忠誠心は高くない部類だろう。だから、冷蔵庫を無料で購入するためにサリーニャの条件を呑むこともできたし、同郷の騎士に知れたら、騎士失格の烙印を押されても仕方がない。
 工房に到着すると、営業中の立て札があった。

「お邪魔するよ」

 シェーナは工房に入ると、ルトルスも続いて中の様子を窺う。
 サリーニャは中央の台座にある試験管らしき物に液体を注いでいる最中で、どうやら錬金の作業中らしい。
 サリーニャはシェーナ達に気が付くと、錬金の作業を止めて出迎えてくれた。

「ごめんね。錬金の作業に集中すると、周りが見えなくなってしまうんだ」
「忙しそうだね。サリーニャに塩むすびのおにぎりを用意したんだ」
「塩むすびか。君が握ってくれたのかい?」
「キシャナと彼女が握ってくれたんだよ」

 シェーナはルトルスを紹介すると、ルトルスは簡単に自己紹介をしてサリーニャと握手をする。

「元気になってよかったね。失礼だけど、ここに来る前は何をやっていたの?」
「ガフェーナの暗黒騎士だった。今はシェーナに誓いを立てた騎士をやっている」

 過去を包み隠さずに告げるルトルスはシェーナの手の甲にキスをして証明する。
 サリーニャは呆然とその様子を見ていると、シェーナは慌てて誤解を解こうとする。

「人妻ダークエルフに浮気して、女騎士同士の百合かよ……」
「だから違うんだよ! キシャナやルトルスは大切な仲間だけど、そんな関係じゃないよ」
「……まあいいや。塩むすびは美味しくいただくよ」

 サリーニャは、ルトルスが握った少々不格好な塩むすびを手にして口にする。
 誤解は解けたか微妙だが、シェーナは話題を変えて冷蔵庫のお礼を述べる。

「冷蔵庫は無事に届いたよ。本当にありがとう」
「こっちも仕事だからね。他に作って欲しい物があったら何でも言っていいよ。君達のような女騎士なら大歓迎だ」

 あんな恥ずかしい思いは御免なので、次からはきちんと代金は支払うつもりだ。

「今度は炊飯器が欲しいとキシャナは言っているけど、次は代金を払うよ」
「炊飯器か。金貨十五枚で三日後にはできるけど、例の方法だとこんな台詞で無料になります!」

 サリーニャはメモ用紙を取り出すと、二人に別々の台詞が書かれた物を見せる。
 それを見たシェーナは首を横に振って拒否すると、意外なことにルトルスは承諾をする。

「ルトルス! 君は本気か!」
「炊飯器が無料になるのだろう? シェーナやキシャナのためなら私は全然構わない」
「……騎士の誇りは?」
「誇りも大切だが、目的のためなら仕方がない」

 そこは騎士の誇りを捨てないで欲しかったとシェーナは思った。
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