群雄割拠した異世界では訳アリな人物で溢れていた

霧矢風月

文字の大きさ
110 / 110

第110話 エルフの里 滝行

しおりを挟む
 翌朝、シェーナ達は宿で朝食を取ると、リィーシャが宿に顔を出した。

「おはよう。昨日は無理なお願いをしてすまなかったね」
「おはようございます。リィーシャさんの頼みなら断れませんよ」

 シェーナはリィーシャに挨拶すると、普段から色々と世話になっているリィーシャには頭が上がらない。
 リィーシャはシェーナ達を見渡すと、本題に入る。

「里の用事は済んだから、今日は君達と一緒に行動しようと思う。構わないかい?」
「ええ、是非お願いします。よろしければリィーシャさんにエルフの里を詳しく案内して頂けますか?」
「それなら、穴場を紹介してあげるよ」

 リィーシャはシェーナ達を先導して宿を出ると、中央エリアに進んで行く。
 中央エリアは木造の住居が点々と並んで、他のエリアと比べて圧倒的にエルフの人口が多い。
 その中には人間が住んでいる者も何人か見受けられて、エルフと婚姻を結んでハーフエルフの子供と一緒にいるところも見られた。

「中央は里の心臓部と言っても過言ではないよ。ここには神々がこの世界を創造した時から存在している精霊の樹木があってね。その近くに祠を建立して、毎年この時期に精霊の儀式を執り行うことになっている。あれが精霊の樹木だよ」

 リィーシャは中央エリアにある巨大な樹木を指差すと、精霊の樹木は圧倒的な存在感を示す。
 近くで見ると、神秘的で生命の鼓動を肌で感じ取れる程だ。
 シェーナは精霊の樹木を見上げると、リィーシャが特等席で精霊の樹木を眺められる場所に案内する。
 しばらく細道を通って石段の階段を上ると、頂上は展望台として開放されている。
 そこから見える景色は格別で、精霊の樹木のすぐ横には滝が流れている。
 身を乗り出して下を覗いてみると、数人のエルフが滝から流れてきた水を汲んでいる。
 リィーシャは滝にまつわる面白い話をしてくれた。

「その滝から流れている水は里全体で生活用水として活用しているよ。一説では一万年前に剣神ペトラ殿が滝行の修業をしたと伝説になっている。一時期は伝説の噂を聞きつけて滝行をする冒険者が増えたおかげで、今では滝行を禁止にしているけどね」

 一同はペトラに視線を向けると、伝説の真相は如何なものなのか。

「……やりました。当時のエルフ族は閉鎖的で人間と交流があまりなかった時代でしたから、無断で里に侵入しました。結局、エルフ族に見つかって一戦交えながら里を出て行って、今に至ります」

 里のエルフにとって、ペトラは神聖な精霊の樹木がある滝に侵入した挙句に暴れ回った不届き者と認識されたが、一万年後には里の入口に銅像や伝説を残して英雄扱いされているのだから、本人が一番困惑していることだろう。
 シェーナ達は苦笑いすると、リィーシャはペトラに感謝の言葉を送る。

「ペトラ殿の伝説のおかげで、閉鎖的な里は考えを改めるきっかけになったのは事実です。時間は掛かりましたが、今の里があるのは剣神ペトラ殿の功績と言っても過言ではありません。よろしければ、一万年ぶりに滝行をやっていきませんか?」
「え……遠慮します! 勝手に滝行して申し訳ありませんでした」

 ペトラはリィーシャの誘いを丁寧に断ると、一万年ぶりに現地のエルフに謝罪することができた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

処理中です...