怠惰令嬢の玉の輿計画 昼寝してたら侯爵様と面倒なことになりました

糸掛 理真

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第十七話 王宮という名の舞台に立ちました

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 王宮は、眩しかった。

「……目が疲れそう」

 プリップルは正直にそう思った。

 絢爛な装飾。
 完璧な所作の貴族たち。
 値踏みする視線。

(ここ、昼寝向きじゃない)

 ◇

「緊張しているか」

 隣を歩くアデルバートが、低い声で聞く。

「いいえ」

「……即答だな」

「緊張するほど、期待してないので」

 彼は、一瞬だけ口元を緩めた。

 ◇

 広間に入った瞬間、空気が変わる。
 視線が、集まる。

「侯爵様と、その……」

「噂の男爵令嬢ね」

 プリップルは、聞こえないふりをした。
 聞こえたら、疲れる。

 ◇

「プリップル様」

 声をかけてきたのは、セシリアだった。
 控えめな微笑み。
 だが、目はよく見ている。

「本日は、お疲れでしょう」

「はい」

 即答。
 セシリアは、少し驚いた後、微笑んだ。

「……正直で、いらっしゃるのですね」

「面倒なので」

 ◇

 そこへ、幼い王子が走ってくる。

「このひと、けっこんするの?」

「しません」

「仮です」

 二人の答えが、見事に噛み合わない。
 王子は目を輝かせた。

「へんだね!」

「よく言われます」

 プリップルは頷いた。

 ◇

 舞踏会が始まる。
 音楽。
 視線。
 誘い。

「踊るか?」

「ご遠慮します」

「なぜ?」

「疲れるからです」

 貴族たちが、ざわついた。

 ◇

(……なんだ、この女)

 評価は、真っ二つだった。
 礼儀知らず。
 無気力。
 だが。

(……動じない)

 誰にも、媚びない。
 誰にも、怯えない。

 ◇

 アデルバートは、それを黙って見ていた。

(……計算外だ)

 王宮は、飲み込む場所だ。
 だが彼女は、溶けない。

 ◇

 夜の終わり。

「……どうだった」

 馬車の中で、アデルバートが聞く。

「思ったより、平気でした」

「なぜだ」

「侯爵様が、隣にいたので」

 プリップルは、さらっと言った。
 自覚はない。
 だが。
 アデルバートは、言葉を失った。

 ◇

 王宮の灯りが遠ざかる。

(……これは)

 彼は、ようやく認め始めていた。
 この関係は、
 合理性だけでは、もう説明できない。
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