寝取られ王太子妃のウチごはん。今日も元気にいただきます!

糸掛 理真

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2.まずいぞ王宮

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 今回の里帰りは、ノルメール公爵の母君、つまりアマールカの祖母が先日体調を崩したのでその見舞いということになっている。

 しかしもちろんそんなものは建前で、実際は今回の王太子の女性問題のせいだというのは誰の目にも明らかなことだった。

 そして、王太子妃である自分がそう簡単に王宮を離れるわけにはいかないと言っていたアマールカが結局里帰りを承諾したのは、祖母君ご本人の強い希望のためだった。

 『頭がしっかりしているうちにどうしても孫娘に会いたい。来たる収穫祭に合わせて家族や親戚が公爵家に集まる、その時に死後の財産分与について話をする予定だ。アマールカに譲ると決めているものもあるし、老い先短い老人の願いをどうか聞いてほしい』

 という祖母君からの手紙を見て、アマールカは両陛下と王太子に、しばらく実家に帰らせていただきたいと願い出たのだった。

 その時すでにアマールカはいつもよりかなり痩せていた。

 そのため王も王妃も王太子も、実家でゆっくり静養するよう言った。

 長くても数週間程度で戻って来るものと思い、それを疑うことすらしなかった。





 王太子は自分がやらかした事の後始末のためとはいえ、すっかり疲弊していた。

 「やらかした事」の詳細をアマールカに説明することはしなかった。

 結局自分に非があるのだから、女々しく言い訳をしてこれ以上恥の上塗りをするのは嫌だった。

 嘘をつくことはそれ以上に嫌だったので、端的に説明し、謝罪した。

 『泥酔して、夜会に来ていたオーシバ男爵の娘と関係を持った。馬鹿なことをした、本当に申し訳ない』

 生まれて初めて誰かの前に跪き、頭を垂れ、どうか許してくれと嘆願した。

 アマールカは表情を変えぬまま、今夜はひとりにしてほしいと言った。

 長い長い夜が明け、ようやくアマールカから聞けた言葉が耳に残って離れない。

 『わたくしが許すとか許さないとか、それは重要ではありません。ただ、この国のことを考えて行動していくしかありません。それが王家の人間というものですから』

 凪いだ海にように穏やかで、静かで、強い声だった。

 アマールカは一個人としての感情を捨て、王室の一員として、王太子妃としてどうするべきなのか考え、答えを出したのだ。

 その言葉は、シュタイナーの胸に刺さった。いっそ罵倒してくれたら、怒って泣いてくれたらと思った。

 (自分が立てた貞操の誓いを破ったことを、アマールカはどう思っているのだろうか。なんの効力ももたない口約束だからと諦めているのだろうか。それとも、初めから守らないだろうと思われていたのだろうか)
 
 そう思うと寂しい気持ちになったが、アマールカの方が正しかった。

 国王または王太子に愛された女性はすぐに宮殿に部屋を与えられ、側妃あるいは妾として暮らす。

 女が妊娠した場合に備えての決まりだ。

 落とし胤が行方知れずになって、民衆に紛れてしまうことがないように。

 逆に他の男の胤が直系の血筋に紛れ込むこともないように。

 王室における妾の立場は不安定であり、側妃であっても何か大きな問題を起こせば離縁されることもある。

 しかし、そのようなことがなければ基本的に王や王太子の妻もしくは愛人として、ずっと王宮の一室で暮らす。

 過去には豪奢な離宮を贈られ、そこの女主人として気ままに楽しく暮らした側妃もいた一方で、すぐに飽きられて捨てられた妾や収賄等の罪を犯すなどして離縁されたり投獄されたりした女たちもいた。

 (アマールカが望む通り、自分は責任をとらなければいけない)

 王太子はそう考えてはいた。

 だから、アンナ・オーシバを不安定な弱い立場の妾ではなく、歴とした側妃にすることにした。

 一体なぜなのだろう。

 しかし、王太子なりに一生懸命考えた結果であったのだ。
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