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第2日目
第11話 到着2日目・昼その2
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ダイニングルームは静まり返っていた。
玄関ホールで何かの獣によって殺されていたアイティさん……。
玄関の扉は内側から鍵がかかっており、何者も外に出た形跡はなかった。
そして、館内をくまなく調べたが、どこの窓も鍵は内側から閉まっていて、割れた窓などは一枚も発見できなかった。
そして、やはり館内に何かの獣が潜んでいる……ということもなかったのだ……。
つまり、アイティさんを襲った獣は、こつ然と姿を消してしまったということになる。
いったい、それはどういうことなのだろう……?
「どこかの扉か窓か、今朝になってからでも閉めた覚えがある人はいますか?」
ジェニー警視がみんなに問いかける。
だが、みなさん残念ながら首を横に振った。
「昨夜はきちんと戸締まりをしましたので……。」
管理人カンさんがそう証言をした。
「それは何時頃のことですか!?」
コンジ先生がカンさんに尋ねる。
「はぁ……。あれは夜11時ごろのことです。一度見回りに行くのがその時間なもので……。」
「その時はどこか開いていましたか?」
「いいえ。そのときもすべて閉まっておりました。間違いございません。」
「ちくしょお! いったいどこから逃げたと言うんだ!? その獣は!」
ビジューさんが憤る。
「そうだ! そんな危険な獣がどこにいるかもわからないなんて……。困るよ……。ねえ、エラリーン?」
「そうね。イーロウの言うとおりよ。パパデスさん、なにか他に麓へ連絡手段はありませんの?」
問われたパパデスさんも苦渋に満ちた表情を浮かべながら、答える。
「それがあいにくと手段はないのです……。まあ、いつもどおりなら、あと6日後には吹雪も晴れるでしょうから、そのときには麓まで歩いて向かうことができますが……。」
「そうよ! パパが悪いんじゃないのよ。どこかで勝手に電話線のケーブルが切れたのがいけないのよ!」
「そうですわ。お姉さまの言うとおりです。私たちのせいじゃありませんのよ!」
そんなふうにみなが不安からか殺気立っているところ、コンジ先生が黙って考えていたのですが、口を開きます。
「その前に……。獣がどこから入ってきたか?……ということも疑問になりますね?」
コンジ先生が根本的なことを指摘した。
そうだ……。たしかにその獣はどこからいったい入ってきたというのだろう?
出ていった形跡がないことにばかり注目していたけど、入ってきた形跡もないのだった……。
「ああーあれじゃないか? 誰かが窓なり扉なり開けていた間に、こっそり入ってきていたとか? それで気づかずにその後、閉めてしまった……とね。」
ジニアスさんがそう考えを述べた。
「なるほどですね。ジニアスさんの言うとおりなら、その獣がどこかにこっそり隠れていて、夜中にアイティさんを襲ったと考えられますわね?」
スエノさんがジニアスさんの意見に賛成をする。
「ならやはり、その獣はどこに行ってしまったんだ? ……ということになるな。」
ビジューさんが最初の問題に話を戻す。
「簡単なことなんじゃないかしら? アイティさんは窒息死なんでしょ? ならその獣に襲われて、重傷を負ったけれど、玄関から獣を追い出したんでしょうよ。そして、その後、亡くなったんじゃないかしら……?」
エラリーンさんが新たな角度からの考えを出してきた。
「しかし……。被害者は内臓を食われていました……。そんな状態で動けたとは思えません。」
シュジイさんがそう意見を述べた。
「いや……! エラリーンさんの言う通りじゃないか!? だってその内臓の損傷を与えられても、結局死に至ってはなかったんだろう? 死因は……、ああ先生、窒息死……でしたよね?」
「そ……それは間違いありません。」
ビジューさんがほれ見たことか……と言った顔をして、みんなを見回した。
「そ……そう考えると、つじつまは合いますね。」
ジニアスさんもその意見に賛成の様子だ。
しかし、その時まで黙って聞いていたアレクサンダー神父が立ち上がった……。
「これは悪魔の獣の仕業に違いありまセン……。これはヒトに化ける悪魔の獣の仕業なのデス。悪魔に魅入られたものは悪魔に堕落してしまい、罪を犯してしまうのデス!」
神父さんはそう言って目の前で十字を切るしぐさをとった。
「悪魔の獣だって……!?」
コンジ先生の目がキラリと光る。
ああ……。コンジ先生の好奇心に今、火が着きましたよ……。
「ええ。私は教会本部から悪魔祓いのためにこの地にやってまいりマシタ……! この地には古の昔より悪魔の獣が棲んでいるのデス!」
「ほほお? それは狼の姿をしているのじゃあないか?」
「イエース! そのとおりデース。悪魔の獣は人間に化けるのです。決してヒトのチカラでは見抜くことはできまセン!だから、神のチカラで裁きが下ることを信じまショウ!」
「ふん! 馬鹿馬鹿しいですわ! ねえ? 私のイーロウ……? あなたもそんなおとぎ話のような話……信じられませんでしょう?」
「ああ。もちろんだよ。エラリーン……。僕がそんなたわごとを信じるわけないじゃないか? 僕が信じているのは君の愛だけだよ?」
「まあ……!? あなたったら……。」
「……おほん……。とりあえず、今、この館内のどこにもその獣はいない。戸締まりさえ気をつけておけば、心配はないということじゃ!」
「そのとおりです。アイティさんには気の毒なことでしたが、あとは警察におまかせしますわ……。ねえ? ジェニー警視?」
パパデスさんとママハッハさんにそう言われてしまったジェニー警視は恐縮しながら、頷いた。
「はい。6日後に警察が来たら、対応させていただきましょう。」
「頼みましたよ。」
ふと、コンジ先生を見ると、じっとアレクサンダー神父のほうを見つめていた。
さきほどの神父さんの発言に興味を持ったようだった。
コンジ先生の『化け物センサー』が反応したようです。
あ……。もちろん、あの有名な妖怪漫画の主人公のような髪の毛が立つセンサーのようなものじゃなく、鋭い観察眼と洞察力による推理なのですけどね……。
「コンジ先生……? なにか気になることでもありましたか?」
「ああ。ジョシュア。かの神父殿はどうやら僕と目的が同じだったようだよ?」
「え……!? というと……人狼伝説……ですか?」
「そのとおりだ。さすがは我が助手だ。彼は確固たる目的があってこの地に来たというわけだ。」
「さきほど神父さん、教会本部から悪魔祓いのためにこの地に来たって言ってましたもんねぇ……。」
しかし、神父さんはどうやって彼の言うところの悪魔の獣を退治しようというのかな?
見たところ、別に何か武器のようなものを持っているわけでもなさそうなんだけど……。
私たちが話している間に、ダイニングルームには朝食が運び込まれてきていた。
そして、私たちは朝食をいただいたのだが、みなさん、やはり食欲があまりなかったようでした。
肉やポテト、とろけるチーズといった具がたくさん入った具だくさんのオムレツに、フレンチトーストのサンドイッチ。
定番のシリアルにミルク、それに半分に割ったイングリッシュ・マフィンの上にポーチドエッグを乗せ、上にオランデーズソースをかけたエッグ・ベネディクト。
朝からボリュームたっぷりの朝食でした。
え……!? 私? いや……。あはは。もちろん、この日の朝食はさすがに少食でしたよ?
ええ。いつもならエッグ・ベネディクトのおかわりを5回は頂くところを、たったの2回しか頂かなかったのですから……。
朝食後、みなさんはバラバラに口数も少なく、それぞれが自室に戻った様子でした。
まあ、なにかする気分でもないでしょうし……。
しかし、私とコンジ先生、主治医のシュジイ先生、アレクサンダー神父、ジェニー警視はこの後、パパデスさんの部屋に招かれた。
シープさん、カンさんも同席しましたが。
どうやら……。この地方に伝わる人狼伝説についてのお話のようですね……。
さきほどの神父さんの話の際、パパデスさんは非常に真剣な表情でなにごとか考えてるご様子でしたからね。
~続く~
玄関ホールで何かの獣によって殺されていたアイティさん……。
玄関の扉は内側から鍵がかかっており、何者も外に出た形跡はなかった。
そして、館内をくまなく調べたが、どこの窓も鍵は内側から閉まっていて、割れた窓などは一枚も発見できなかった。
そして、やはり館内に何かの獣が潜んでいる……ということもなかったのだ……。
つまり、アイティさんを襲った獣は、こつ然と姿を消してしまったということになる。
いったい、それはどういうことなのだろう……?
「どこかの扉か窓か、今朝になってからでも閉めた覚えがある人はいますか?」
ジェニー警視がみんなに問いかける。
だが、みなさん残念ながら首を横に振った。
「昨夜はきちんと戸締まりをしましたので……。」
管理人カンさんがそう証言をした。
「それは何時頃のことですか!?」
コンジ先生がカンさんに尋ねる。
「はぁ……。あれは夜11時ごろのことです。一度見回りに行くのがその時間なもので……。」
「その時はどこか開いていましたか?」
「いいえ。そのときもすべて閉まっておりました。間違いございません。」
「ちくしょお! いったいどこから逃げたと言うんだ!? その獣は!」
ビジューさんが憤る。
「そうだ! そんな危険な獣がどこにいるかもわからないなんて……。困るよ……。ねえ、エラリーン?」
「そうね。イーロウの言うとおりよ。パパデスさん、なにか他に麓へ連絡手段はありませんの?」
問われたパパデスさんも苦渋に満ちた表情を浮かべながら、答える。
「それがあいにくと手段はないのです……。まあ、いつもどおりなら、あと6日後には吹雪も晴れるでしょうから、そのときには麓まで歩いて向かうことができますが……。」
「そうよ! パパが悪いんじゃないのよ。どこかで勝手に電話線のケーブルが切れたのがいけないのよ!」
「そうですわ。お姉さまの言うとおりです。私たちのせいじゃありませんのよ!」
そんなふうにみなが不安からか殺気立っているところ、コンジ先生が黙って考えていたのですが、口を開きます。
「その前に……。獣がどこから入ってきたか?……ということも疑問になりますね?」
コンジ先生が根本的なことを指摘した。
そうだ……。たしかにその獣はどこからいったい入ってきたというのだろう?
出ていった形跡がないことにばかり注目していたけど、入ってきた形跡もないのだった……。
「ああーあれじゃないか? 誰かが窓なり扉なり開けていた間に、こっそり入ってきていたとか? それで気づかずにその後、閉めてしまった……とね。」
ジニアスさんがそう考えを述べた。
「なるほどですね。ジニアスさんの言うとおりなら、その獣がどこかにこっそり隠れていて、夜中にアイティさんを襲ったと考えられますわね?」
スエノさんがジニアスさんの意見に賛成をする。
「ならやはり、その獣はどこに行ってしまったんだ? ……ということになるな。」
ビジューさんが最初の問題に話を戻す。
「簡単なことなんじゃないかしら? アイティさんは窒息死なんでしょ? ならその獣に襲われて、重傷を負ったけれど、玄関から獣を追い出したんでしょうよ。そして、その後、亡くなったんじゃないかしら……?」
エラリーンさんが新たな角度からの考えを出してきた。
「しかし……。被害者は内臓を食われていました……。そんな状態で動けたとは思えません。」
シュジイさんがそう意見を述べた。
「いや……! エラリーンさんの言う通りじゃないか!? だってその内臓の損傷を与えられても、結局死に至ってはなかったんだろう? 死因は……、ああ先生、窒息死……でしたよね?」
「そ……それは間違いありません。」
ビジューさんがほれ見たことか……と言った顔をして、みんなを見回した。
「そ……そう考えると、つじつまは合いますね。」
ジニアスさんもその意見に賛成の様子だ。
しかし、その時まで黙って聞いていたアレクサンダー神父が立ち上がった……。
「これは悪魔の獣の仕業に違いありまセン……。これはヒトに化ける悪魔の獣の仕業なのデス。悪魔に魅入られたものは悪魔に堕落してしまい、罪を犯してしまうのデス!」
神父さんはそう言って目の前で十字を切るしぐさをとった。
「悪魔の獣だって……!?」
コンジ先生の目がキラリと光る。
ああ……。コンジ先生の好奇心に今、火が着きましたよ……。
「ええ。私は教会本部から悪魔祓いのためにこの地にやってまいりマシタ……! この地には古の昔より悪魔の獣が棲んでいるのデス!」
「ほほお? それは狼の姿をしているのじゃあないか?」
「イエース! そのとおりデース。悪魔の獣は人間に化けるのです。決してヒトのチカラでは見抜くことはできまセン!だから、神のチカラで裁きが下ることを信じまショウ!」
「ふん! 馬鹿馬鹿しいですわ! ねえ? 私のイーロウ……? あなたもそんなおとぎ話のような話……信じられませんでしょう?」
「ああ。もちろんだよ。エラリーン……。僕がそんなたわごとを信じるわけないじゃないか? 僕が信じているのは君の愛だけだよ?」
「まあ……!? あなたったら……。」
「……おほん……。とりあえず、今、この館内のどこにもその獣はいない。戸締まりさえ気をつけておけば、心配はないということじゃ!」
「そのとおりです。アイティさんには気の毒なことでしたが、あとは警察におまかせしますわ……。ねえ? ジェニー警視?」
パパデスさんとママハッハさんにそう言われてしまったジェニー警視は恐縮しながら、頷いた。
「はい。6日後に警察が来たら、対応させていただきましょう。」
「頼みましたよ。」
ふと、コンジ先生を見ると、じっとアレクサンダー神父のほうを見つめていた。
さきほどの神父さんの発言に興味を持ったようだった。
コンジ先生の『化け物センサー』が反応したようです。
あ……。もちろん、あの有名な妖怪漫画の主人公のような髪の毛が立つセンサーのようなものじゃなく、鋭い観察眼と洞察力による推理なのですけどね……。
「コンジ先生……? なにか気になることでもありましたか?」
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しかし、神父さんはどうやって彼の言うところの悪魔の獣を退治しようというのかな?
見たところ、別に何か武器のようなものを持っているわけでもなさそうなんだけど……。
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ええ。いつもならエッグ・ベネディクトのおかわりを5回は頂くところを、たったの2回しか頂かなかったのですから……。
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