50 / 62
第7日目
第45話 到着7日目・昼その1
しおりを挟むついに、私たちがこの『或雪山山荘』に到着してから、第7日目の朝がやってきました。
この7日目がこの地域の特殊な猛吹雪の期間の最終日になるはずで、明日、つまり第8日目は晴れ渡るということを意味しています。
そして、昨日の話し合いから、今日こそは何もなく過ごせるだろうという期待が一番大きかったのも覚えています。
しかし、その期待はすぐに打ち砕かれることとなったのでした。
「ジョシュア! いるのか!?」
「ジョシュアくん! 無事か?」
部屋の外からコンジ先生とジェニー警視の声が聞こえてきた。
どうやら、朝を迎えたようです。
「はぁーい! 今、起きます!」
私はとりあえず返事をした。
まだ、服を着替えていなくて、寝起きのままだった私は下着姿でした。
急いで、服をまとい、大慌てで部屋の扉を開けるため、ドアノブと部屋の中の柱に結びつけたワイヤーを外していく。
ガチャ……
「お待たせしました! おはようございます! みなさん、無事で何よりです!」
私がそう言うと、コンジ先生とジェニー警視は少し表情を曇らせたのです。
「どうしたんですか……? まさか……!?」
私は嫌な予感がして聞いてみる。
「ああ。シュジイ医師が亡くなった……。」
「シュジイ医師が……!? どうして? もう神父さんはこの館のどこにも隠れていなかったというのに……。」
「ここからは推測になるんだが……。おそらく地下室に安置していた遺体に化けていたのかもしれないんだ……。」
「ええ!? 遺体に……?」
「そうなんだよ。ジョシュアくん。遺体そのものに成り済ましていたとしたら……。盲点だったのだ。」
つまりコンジ先生とジェニー警視が言っているのは、昨日、館内をくまなく確認した際、遺体そのものに人狼が化けていたなら、その遺体を確認した際も怪しむことはなかったということだ。
たしかに、昨日の時点でそんな考えは一切なかったから、地下室を確認しても、遺体に化けているとは露ほども思わなかったに違いない。
現に地下室を確認したのは、ジェニー警視とスエノさん、ジニアスさんの3名で一緒に確認したとのことだ。
その時、誰一人として、遺体を見たとしても、その『死』を確認したものはいない……。
「朝、ジェニー警視が僕を呼びに来たんだが……。すぐに異変に気がついたよ。1階の階段の間に血の跡があったからね。」
「ああ。そうだったね。とにかく確認しに行ったが、シュジイ医師だということはすぐにわかった。顔の損傷はなかったのでな……。」
「そうだったんですね……。じゃあ、シュジイ医師は地下室で襲われたのですか?」
「ああ。そうだ……。地下室に彼の無残な死体があったよ。どうやら、シュジイ医師も地下室の遺体を調べに行ったらしいな……。」
「ええ!? じゃあ、シュジイ医師も人狼が遺体に化けていたと考えて確認しに行ったのですか!?」
「どうやら、そのようだな。朝になってから行けば良かったのだが……。夜明け前に自ら地下室へ行ったようだ。私の見立てによると、シュジイ医師は夜明け前近くに殺されたらしい。」
※ダイニングルーム席順・夕方
赤=死亡 ピンク=行方不明
私たちはとりあえず、ダイニングルームへと移動した。
すでにコンジ先生とジェニー警視に起こされたのか、ジニアスさん、スエノさん、メッシュさんも集まっていた。
「どういうことでしょうか!? キノノウ様。昨夜はもう被害は出ないだろうと仰ったではありませんか!?」
スエノさんが開口一番、コンジ先生に食って掛かるように言ったのです。
「ああ……。それはすまなかった。だが、僕は自室から絶対に出ないように忠告はしていた。シュジイ医師は自ら自室を出て、犠牲になったのだ。それは言わば自業自得と言えよう?」
「たしかに……だな。キノノウくんも私も昨夜は絶対に部屋の外に出ないように言っていたはず……。シュジイ医師は残念だが、それを守らなかったのだ。」
「そ……、それはそうですけど……。その、人狼はどこに潜んでいたのですか?」
「そうだ! 昨日あれほどこの館内を探したじゃあないか?」
そのとおりです。
あれほど隈なく『或雪山山荘』内を探したというのに……、そう疑問を抱くのも間違いないでしょう。
「おそらく……、死体に化けていたのでしょうな。地下の遺体安置所で、シュジイ医師が襲われたのも、その秘密を暴いたからじゃあないかと思われる。」
ジェニー警視が見解を示した。
コンジ先生は黙っている。
何やら思案している様子でした。
「うーん……、まだそう決めつけるのは早計ですが、その可能性は否定はできませんね。いずれにしても、シュジイ医師は自ら部屋を出たために、人狼の犠牲になったのは間違いないでしょう。ですから、やはり夜間に部屋から出るのは無謀ということです。今日の夜を越せば、明日はこの館周囲の吹雪が晴れると聞いています。明日、晴れたら麓の村までみんなで下りて生還いたしましょう!」
「そうですね……。とにかく、明日まで待てば吹雪は晴れます。人狼も麓の村までは追ってこないでしょう?」
「そうだな。スエノ。そうしたら、僕と一緒に故郷のイタリアに行こう。」
「まあ!? ジニアス! それって……!?」
「そうだ。結婚しよう!」
「嬉しい! ジニアス!!」
スエノさんがジニアスさんに飛びついて抱きついた!
なんですか……。これは……。
見せつけてくれますね。
お幸せに……って言うしか無いじゃあありませんか?
「キノノウ様……! あっしも明日になれば、無事に麓の村まで下りられるということはわかっちゃあいますが、本当にこの館内にもう人狼はいないということでいいんですかい?」
メッシュさんがここで誰もが思っている不安と疑問を投げかけたのです。
そうですよね。
不安ですよね。
コンジ先生はいったいどう推理されているのでしょうか?
私たちは安心していいのでしょうか……。
「そうだな……。僕の見解では、今少し警戒する必要はあるだろう。だが、神父の残してくれた聖なる結界とやらの『銀の粉』は、人狼にとって苦手な物質であるという可能性は非常に高いようだ。だから、夜の間、自室に閉じこもっていれば襲われることはないと確信している。」
「それは良かった! じゃあ、夜までは問題ないですか?」
私も思わず聞く。
「ああ。それは問題ないだろう。人狼は昼の間は特に脅威はない。昼間は人狼に変身できないのだからな。」
「そっかぁ……。じゃあ、メッシュさん! お昼はちょっと美味しいものをお願いしますね?」
「なんだよ。食事のことが心配だったのか? ジョシュアは……。」
「いえいえ! そうじゃあありませんよ! ただ、食事は美味しく頂きたいじゃあありませんか!?」
「了解しましたぜ! ジョシュア様。あっしの腕をふるって昼食をお作りしましょう!」
メッシュさんは快く引き受けてくれました。
ここ数日は、人狼を警戒して料理は作り置きしたものになってしまっていたのです。
これは昼食と夕食、期待できますね。
そういうわけで、この日、お昼にメッシュさんが用意してくれたのは、ロブスターの身を使ったサンドウィッチ……でした!
カナダといえば、ロブスター料理というくらい国民的料理になっていますが、メッシュさんは、バキバキと豪快に殻から身を取り出し、溶かしたバターをつけて、サンドウィッチにしてくれました。
ロブスターは、エビというよりカニのような味で歯ごたえがあっておいしかった!
そして、私たちは昼食後は自由行動となりました。
人狼が昼間は襲ってこないということが、わかっているからこそ、昼間くらいは自由に過ごしましょう……というふうになったというわけです。
スエノさんとジニアスさんは、やはりお二人でお部屋で一緒に過ごすそうで、ちょっと嫉妬しちゃうくらい仲良しです。
私とコンジ先生は部屋に戻り、ジェニー警視を交えて、今まで起きた事件を振り返り、事のあらましを整理しようということになりました。
メッシュさんは、やはり今まで一緒にお仕事をしてきたシープさんやカンさんがお亡くなりになり、少し感情を落ち着けたいと一人で過ごしたいと仰っていました。
お昼の後、夕方まで、みなそれぞれ過ごすということで別れたのです。
ビュゥウウォオオオォ……
館の外は明日本当に晴れるのかというくらい、激しく風巻く吹雪の音だけが低く、ゴォゴォと響いていたのでしたー。
~続く~
※料理参照
SEKAIEさんのサイトの【カナダの食べ物】有名&おいしい料理ランキング15選!名物グルメも という記事より。
https://sekai-e.com/canada-food/
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】結界守護者の憂鬱なあやかし幻境譚 ~平凡な男子高校生、今日から結界を繕います~
御崎菟翔
キャラ文芸
【平凡な高校生 × 妖従者たちが紡ぐ、絆と成長の主従現代和風ファンタジー!】
「選ぶのはお前だ」
――そう言われても、もう引き返せない。
ごく普通の高校生・奏太(そうた)は、夏休みのある日、本家から奇妙な呼び出しを受ける。
そこで待っていたのは、人の言葉を話す蝶・汐(うしお)と、大鷲・亘(わたり)。
彼らに告げられたのは、人界と異界を隔てる結界を修復する「守り手」という、一族に伝わる秘密の役目だった。
「嫌なら断ってもいい」と言われたものの、放置すれば友人が、家族が、町が危険に晒される。
なし崩し的に役目を引き受けた奏太は、夜な夜な大鷲の背に乗り、廃校や心霊スポットへ「出勤」することに!
小生意気な妖たちに絡まれ、毒を吐く蛙と戦い、ついには異世界「妖界」での政変にまで巻き込まれていく奏太。
その過程で彼は、一族が隠し続けてきた「残酷な真実」と、従姉・結(ゆい)の悲しい運命を知ることになる――
これは、後に「秩序の神」と呼ばれる青年が、まだ「ただの人間」だった頃の、始まりの物語。
★新作『蜻蛉商会のヒトガミ様』
この物語から300年後……神様になった奏太の物語も公開中!
https://www.alphapolis.co.jp/novel/174241108/158016858
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
「魔物の討伐で拾われた少年――アイト・グレイモント」
(イェイソン・マヌエル・ジーン)
ファンタジー
魔物の討伐中に見つかった黄金の瞳の少年、アイト・グレイモント。
王宮で育てられながらも、本当の冒険を求める彼は7歳で旅に出る。
風の魔法を操り、師匠と幼なじみの少女リリアと共に世界を巡る中、古代の遺跡で隠された力に触れ——。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
サイレント・サブマリン ―虚構の海―
来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。
科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。
電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。
小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。
「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」
しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。
謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か——
そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。
記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える——
これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。
【全17話完結】
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる

