【読者への挑戦状あり!】化け物殺人事件~人狼伝説・狼の哭く夜~

あっちゅまん

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【解決編】 第8日目

第50話 【解決編】 到着8日目・朝その3

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 コンジ先生が事件の真相を語り始めました。


 「まず、第一の殺人、アイティさん殺しだ。これはオレたちが到着した日の深夜に起きた。」

 「うむ。そうだったな。その翌日の朝、アイティさんが館の1階、玄関の扉を入ったホールで無残な姿となって発見されたのだったな……。」



 「現場はそうでしたが、アイティさんが襲われたのはキッチンの前の廊下です。血の跡が玄関ホールまで続いていたのが確認されています。」

 「そうだったな。しかし、深夜のアリバイは誰も確認できた者はいなかったぞ?」

 「ええ。そうでしたね。だから、ここでは犯人たる人狼が誰に化けていたかを特定することはできない。だが……。」



 コンジ先生が息を継ぐ。

 みんな、コンジ先生が次の言葉を喋りだすのをただ、じっと待っていました。



 「殺害の動機は先の述べたとおり、食欲から来る『暴食』であることは明白ですね? キッチンに向かう理由……、それは空腹で食べるものを探しに行ったからにほかなりません。」

 「キノノウ様のおっしゃることはわかりますわ。キッチンと言ったら食料が置いてある場所なんですもの。でも、アイティさんはなぜキッチンに……?」

 「スエノお嬢様。それはあっしにもなんとなく、わかりまさぁ……。あの日の夜、アイティさんはワインをしこたま飲まれていた。……で、あっしが休みを頂いた際にも、まだ飲み足りないご様子でしたからね……。おおかた、深夜にキッチンに来て、ワインをあさっていたのでしょうねぇ……。」

 「なるほどな!? そこで人狼と出くわしてしまったというわけか!」

 「そのとおりです。」



 「では、続いてその次の日の夜、ああ……、オレたちが到着して第2日目の夜遅くに、カンさんとエラリーンさんが人狼の犠牲となった。」

 「ああ。そのとおり……。やはり夜半だな。カンさんは人狼を目撃したから殺されたのか否かわからないが、エラリーンさんが目的だったと言えるだろうな。」

 「それは……、アイティさんの欲望からか?」

 「ええ。そうです。アイティさんは成り上がろうとする野望を抱えていました。それが『強欲』と結びついたのでしょう。エラリーンさんに取り入ってさらなる富を得ようとしていたのでしょうね……。」



 「この日の夜、最後にエラリーンを見たのがスエノさんでスエノさんが疑われてしまいました。時間は0時過ぎとのこと。カンさんはイーロウさんが見たのが深夜1時。アリバイが完全にないのがスエノさん、アレクサンダー神父、ジニアスさん、ジョシュア、ジジョーノさん、ビジューさん……、そしてオレだ。

 アネノさんとイーロウさんはいちゃこらしていたので除外。

 パパデスさんにはシュジイが深夜0時半ごろまで付添いし、その後就寝したという。

 ママハッハさんはシープと1時まで話をしていた以降はアリバイなし。

 メッシュさんとジェニー警視は料理の確認で23時までは確認されているが、その後アリバイなしだった。」

 コンジ先生がすらすらとあの日の夜のアリバイを復唱する。



 「結局、スエノさんは無実が証明されたのだったな……。」

 「そうですよ! 私は最初から人狼なんかじゃあありませんよ!」

 ジェニー警視の一言に、スエノさんが息を荒くして言うのだった。

 おとなしかったスエノさんの面影は微塵も感じない……。



 「まあまあ……。スエノさんは人狼ではなかったのだから、とりあえず良しとしてください。それで、アリバイは二人で一緒にいたというアネノさんとイーロウさん、『左翼の塔』に閉じこもっていたアレクサンダー神父の三人以外はないも同然だった……。スエノさんだけ容疑をかけられたが、あれはアネノさんの主張だったからな……。」

 コンジ先生が、あのときスエノさんだけを疑っていたのではないことはわかっていました。

 「そうでさね……。みんな、自分に疑いが向くのを恐れていただけなんだ……。」

 メッシュさんがボソリとつぶやいたのだった。



 「つまり、このとき人狼ではなかったと断言できるのは、アレクサンダー神父、アネノさん、イーロウさんの三名だけということになる。」

 「ふむ。そういうことだな……。つまり、なんにも絞られていないと言ってもいいな。」

 「ええ。ジェニー警視。しかし、次の日の夜の殺人……、つまりイーロウさん、パパデスさんの連続殺人が鍵となるのです!」

 「おお……!? 聞かせてくれたまえ!」



 コンジ先生が目をキラリと光らせた。

 「当主・パパデスさんとイーロウさんが殺された夜ですが、ジジョーノさんも姿を消している……。犯人はジジョーノさんなのか? ……といった考察も出ましたが、のちほど発見されたジジョーノさんの遺体からジジョーノさんが死亡したのは、イーロウさん、パパデスさんと同じ夜のことだろうことはわかっている。そして、この日はスエノさんが『右翼の塔』の地下室に拘束されていたため、潔白が証明されてもいる。……ここまでは、いいかい?」

 「ええ。キノノウ様。私は潔白ですわ。」

 「グッド! ジジョーノさんがいつ殺されたか? だが、オレはイーロウさんと一緒に殺害されたと確信している。」

 「ええ!? それはどうしてなんで?」

 メッシュさんが疑問をぶつける。



 「そうだな。イーロウさんの部屋とジジョーノさんの部屋は同じ『左翼の塔』にある。そして、ジジョーノさんは前日にアネノさんがイーロウさんと一晩を過ごしたと聞いて、激しく嫉妬していたのだ。それは、あの日のジジョーノさんの態度からも容易に推測が可能だ。ジジョーノさんはアネノさんに部屋から出ないように誘導していた……。そうしておいて自分がイーロウさんの部屋に忍んで行ったのだろう。」

 「そ……、そんなことが行われていたなんて……! 」



 「人狼は、まず、イーロウさんの部屋を訪れ、部屋にいたイーロウさん、ジジョーノさんの二人を殺害し、その後、パパデスさんを殺害しに行ったのだ。イーロウさんを先に狙った動機はとしては、おそらくはエラリーンさんにあるのだろう。人狼はエラリーンさんに成り代わり、その心の奥底の欲望……『色欲』を展開させたのに違いない。エラリーンさんはイーロウさんにベタぼれだったからな……。」

 「コンジ先生! お忘れですか!? その日の夜はシープさんが夜通し徹夜で『右翼の塔』側の3階を……、そして、私が2階を見張っていたのですよ? 仮に私が人狼だったとして、イーロウさんとジジョーノさんを殺害後、パパデスさんの部屋に行くためには、シープさんの監視の目をくぐり抜けなければいけなかったのです! 私が人狼であるというのは無理なお話なんじゃあないです!? やっぱり、スエノさんが人狼で『右翼の塔』のパパデスさんの部屋の裏の扉を通って侵入したのですよ!」

 「なんですって!? 私は先程、容疑は晴れましたのよ!?」

 「それは、『右翼の塔』にある扉を使っていなかったらの話ですよ? ねえ? ジェニー警視!?」

 「うむむ……。たしかに、殺害の順番の謎はあるが、『右翼の塔』からの扉を開けられたなら、ありえるか……?」

 ここまでじっと聞いていたジョシュアがここぞとばかりに反論に出たのだ。

 コンジ先生の眼が獲物を捉えたかのように光る。



 「いいえ。スエノさんは地下室の鍵がなければ出られない状況下にあった。そして、その地下室の鍵は他ならぬパパデスさんの部屋にあったのだよ。スエノさんには犯行は不可能だった。それに、シープさんの見張りの監視の目の問題もあったな……、だが、その謎は解けたんだよ?」

 「キノノウくん! それは本当かい!?」

 「ええ。ジェニー警視。イーロウさんとジジョーノさんを殺害した人狼は、シープさんにも見つかることなく、パパデスさんの部屋に侵入することが可能だったんですよ。」


 コンジ先生の言葉に、みんなが黙ってしまいました。

 不可能と思えたあの連続殺人を、いったい、どうやって……?




 雪に反射する日光がまぶしく、それはそれは明るく一面の銀世界が広がる中、みんなはコンジ先生の次の一言を待っているのでした-。




 ~続く~




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