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〜50章〜
大地に還る乙芽
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突如背中に強い衝撃を感じ思わず目を覚ましたロキエッタは、辺りをキョロキョロと見回した。
「ルーナ!」
振り返るとルーナは口元を押さえ腰を折り激しく咳き込んでいるではないか。
「ちょっと、大丈夫?」
背中をさすりながら顔を覗き込むロキエッタ。
咳き込んでいる親友の顔を見てロキエッタはハッと息を呑んだ。
「ルーナ・・・」
ロキエッタはたった今、目にしたその事実を口にすることはできなかった。
ルーナが咳き込んでいる間、ロキエッタは背中をさすり続けることしかできない。
やっとのこと咳が治まったルーナはふぅっと深いため息をついた。
「わっ」
ふとルーナの掌を見ると、なんと血が付着しているではないか。
「血が・・・出てる」
服の裾でルーナの口元を拭ってあげ、両手についた血も綺麗に拭き取ってあげたロキエッタはいよいよに焦り出す。
ルーナは目の前で苦しそうにゼエゼエと嫌な音を立てながら呼吸をしていた。
「どうしよう・・・」
ロキエッタは周りに助けを求めようと辺りをキョロキョロと見回した。
と、ガシッと腕を強い力で掴まれる。
ルーナが息も絶え絶えロキエッタのことを掴んでいた。
「ルーナ?」
苦しそうにロキエッタにしがみつくルーナは、声を振り絞るかのように囁いた。
「だめ、子供たちが、怖がる」
「で、でも・・・あんたこのままじゃ」
ロキエッタは両腕でしっかりとルーナを支える。ルーナはすがりつくかのようにロキエッタに顔を寄せ口を開く。
「ロキー・・・聞いて」
ルーナの腕や背中を侵食していた腐食が今では首元にまでも走り始め、また自身を覗き込むその目は白く濁り始めていた。
ロキエッタは今にも泣き出しそうになりながらも、ルーナの言葉に耳を傾ける。
「多分・・・私、もう助からないと、思う」
その言葉に思わず涙がこぼれ落ちるロキエッタ。嗚咽がこぼれそうになり慌てて口を覆ったが、今にも全てが決壊してしまいそうだ。
ルーナは苦しそうに浅い呼吸をしながらも微笑んでいる。
「お祖父様の声が聞こえるの」
もはや見えているのかさえわからないその目は何かを見据え優しく微笑んでいる。
「ルーナ・・・」
「今まで、本当に・・・ありがとう」
ロキエッタの顔を包み込むようにそっと撫でるルーナ。
ルーナはその言葉を伝えることができて安心したのか、ゆっくりと目を閉じる。
「だめ、待って!逝かないで!・・・お願い・・・ソルと虹を見るんじゃなかったの⁉︎」
ソル、という言葉を聞いてルーナがそっと微笑んだ。が、もう喋る力もないのだろう。
安らかな表情をしたまま、まるで眠っているかのようだ。
気がつくとルーナの足元からは根が生え始め、ゆっくりと大地に溶け出していくではないか。
それはまるで大地がルーナのことを出迎えているようであった。
「ルーナ・・・そんな・・・」
ロキエッタは呆然とその様子を涙を流しながら見つめることしかできなかった。
「ルーナ・・・ごめんね・・・いつも意地悪なことばっかり言って。ごめんね・・・いつも迷惑ばかりかけちゃって・・・ごめんね・・・」
今まさに、大地に還ろうとしている親友を抱きしめ、ロキエッタはひたすらに謝り続けた。
「死んだ人の分まで、幸せになりなさい」
耳元でルーナがふっと笑いそう呟く。
その言葉にロキエッタはまるで何かが決壊したかのようにボロボロと泣き始めた。
ロキエッタにはもはやなす術もなく、自身の無力さにただただ打ちひしがれた。
「ロキー・・・何か、歌って」
ルーナの声は吐息のように弱々しくか細かった。
親友の最期を安らかな時にすべく、ロキエッタは歌い出そうとしたが口をついて出てくるのは嗚咽ばかりである。
そんなロキエッタを優しく抱きしめ、ルーナは安らかに眠りに落ちていった。
「ルーナ!」
振り返るとルーナは口元を押さえ腰を折り激しく咳き込んでいるではないか。
「ちょっと、大丈夫?」
背中をさすりながら顔を覗き込むロキエッタ。
咳き込んでいる親友の顔を見てロキエッタはハッと息を呑んだ。
「ルーナ・・・」
ロキエッタはたった今、目にしたその事実を口にすることはできなかった。
ルーナが咳き込んでいる間、ロキエッタは背中をさすり続けることしかできない。
やっとのこと咳が治まったルーナはふぅっと深いため息をついた。
「わっ」
ふとルーナの掌を見ると、なんと血が付着しているではないか。
「血が・・・出てる」
服の裾でルーナの口元を拭ってあげ、両手についた血も綺麗に拭き取ってあげたロキエッタはいよいよに焦り出す。
ルーナは目の前で苦しそうにゼエゼエと嫌な音を立てながら呼吸をしていた。
「どうしよう・・・」
ロキエッタは周りに助けを求めようと辺りをキョロキョロと見回した。
と、ガシッと腕を強い力で掴まれる。
ルーナが息も絶え絶えロキエッタのことを掴んでいた。
「ルーナ?」
苦しそうにロキエッタにしがみつくルーナは、声を振り絞るかのように囁いた。
「だめ、子供たちが、怖がる」
「で、でも・・・あんたこのままじゃ」
ロキエッタは両腕でしっかりとルーナを支える。ルーナはすがりつくかのようにロキエッタに顔を寄せ口を開く。
「ロキー・・・聞いて」
ルーナの腕や背中を侵食していた腐食が今では首元にまでも走り始め、また自身を覗き込むその目は白く濁り始めていた。
ロキエッタは今にも泣き出しそうになりながらも、ルーナの言葉に耳を傾ける。
「多分・・・私、もう助からないと、思う」
その言葉に思わず涙がこぼれ落ちるロキエッタ。嗚咽がこぼれそうになり慌てて口を覆ったが、今にも全てが決壊してしまいそうだ。
ルーナは苦しそうに浅い呼吸をしながらも微笑んでいる。
「お祖父様の声が聞こえるの」
もはや見えているのかさえわからないその目は何かを見据え優しく微笑んでいる。
「ルーナ・・・」
「今まで、本当に・・・ありがとう」
ロキエッタの顔を包み込むようにそっと撫でるルーナ。
ルーナはその言葉を伝えることができて安心したのか、ゆっくりと目を閉じる。
「だめ、待って!逝かないで!・・・お願い・・・ソルと虹を見るんじゃなかったの⁉︎」
ソル、という言葉を聞いてルーナがそっと微笑んだ。が、もう喋る力もないのだろう。
安らかな表情をしたまま、まるで眠っているかのようだ。
気がつくとルーナの足元からは根が生え始め、ゆっくりと大地に溶け出していくではないか。
それはまるで大地がルーナのことを出迎えているようであった。
「ルーナ・・・そんな・・・」
ロキエッタは呆然とその様子を涙を流しながら見つめることしかできなかった。
「ルーナ・・・ごめんね・・・いつも意地悪なことばっかり言って。ごめんね・・・いつも迷惑ばかりかけちゃって・・・ごめんね・・・」
今まさに、大地に還ろうとしている親友を抱きしめ、ロキエッタはひたすらに謝り続けた。
「死んだ人の分まで、幸せになりなさい」
耳元でルーナがふっと笑いそう呟く。
その言葉にロキエッタはまるで何かが決壊したかのようにボロボロと泣き始めた。
ロキエッタにはもはやなす術もなく、自身の無力さにただただ打ちひしがれた。
「ロキー・・・何か、歌って」
ルーナの声は吐息のように弱々しくか細かった。
親友の最期を安らかな時にすべく、ロキエッタは歌い出そうとしたが口をついて出てくるのは嗚咽ばかりである。
そんなロキエッタを優しく抱きしめ、ルーナは安らかに眠りに落ちていった。
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