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〜53章〜
使命を果たす
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ソルは小さな樹になってしまったルーナに抱きついたまま、溢れ出る嗚咽を堪え小刻みに震えていた。ザラついた呼吸音が耳に痛い。
そんなソルをただただ見守ることしかできなかったロキエッタは、二人に背を向けるようにして地面に座り込んだ。
遠くの方では子供たちがモケちゃんの周りを駆け回り歓声を上げ続けている。モケは子供たちを喜ばせることに長けているようで、飽きもせず元気に走り回る子供たちを楽しませていた。
子供たちの笑う声だけが、この静かな森の中にこだましている。
ぼんやりと絶望にも似た気持ちで子供たちを眺めていたロキエッタであったが、ふと何か違和感を覚え思わず振り返った。
「ソル⁉︎」
ロキエッタはフラフラと立ち上がり慌ててソルの側へと近寄った。
「嘘・・・でしょ?」
先ほどまで荒い呼吸を繰り返し小刻みに震えていたソルであったが、今はもう呼吸をしていないようでまた悲しみに打ち震えている様子も微塵もない。
樹にしがみつくようにして動かない、金属の塊がそこにはあった。
ソルもまた死んでしまった。
「あぁ」
ロキエッタは静かに涙を流し、一人項垂れた。
なんて残酷な世界なのだろうか。
ロキエッタは樹になってしまった親友と、その樹にしがみつくようにして息絶えた友人を目の前に呆然と立ち尽くした。
ボロボロと涙が溢れ出て目の前の光景がぼやけていく。
こんなことがあっていいのだろうか。
神様というのはなんて残酷なのだろう。
ロキエッタは全身の力が抜け落ちてしまったかのように崩れ落ち、それでも目の前の二人から目が離せなかった。
すると、突如目の前の樹が輝き始めた。
「え・・・?」
脈打つように光を放つその樹はゆっくりとその背を天に伸ばしていく。
樹皮が剥がれ始めたかと思うと、なんとその樹はまるでソルのことを抱き抱えるかのように取り込んでいくではないか。
泣き崩れていたロキエッタは目の前の光景に言葉を失い、ただただ呆然と見守った。
まるで液体になってしまったかのようにソルの体が溶け出し、ルーナの中へと取り込まれていく。若々しい樹の表面に金属の煌めきが澄み渡るように流れ、キラキラと優しい光を放ちながらゆっくりと一つになっていく。
ロキエッタは穏やかに涙を流しながら二人を見つめた。
さよなら、ね。
これでよかったんだ。・・・きっと二人は再会を果たすことができたんだ。
ゆっくりと一つになっていく二人を見て、ロキエッタはそっと微笑み頬を伝う涙を拭った。
そんな温かい気持ちを、突如突風が吹き荒れ遮った。
生重たい音と共に空が強烈に光を放った。
ハッとして空を見上げると、そこには何かが高速に飛び回っているのが見えた。
その何かから真っ赤な光線が放たれる。
「アイアスだ・・・」
あの身の毛のよだつ幾重にも重なった叫び声が森中に響き渡り、ロキエッタは思わず身を震わせた。
もうここまで来てしまった。・・・終わりだ。子供たちまでもが。
もう何度目のことだろうか。絶望に包まれたロキエッタはアイアスの放つ赤い光線をぼんやりと眺め、高速移動を繰り返すその影を目で追っていた。
と、その空飛ぶ巨影神を追いかけるかのようにして、もう一つの影が上空に姿を表した。
その影は銀色の光線を放ったかと思うと、雄叫びを上げながらもう一方の影へと突進していく。
その雄叫びはなんとも心地よく、まるで悲しみに暮れた心を抱き締めるかのように優しい叫び声であった。
「何・・・あれ」
高速で大空を移動するその二つの影は互いに光線を放ち合いながら、まるで競争をしているかのように互いを叩き落とさんともつれ合っている。
二つの影がしのぎを削るその上空には雲が生まれ始め、陽光の遮られた森はすぐに薄暗くなっていった。
空を覆った重苦しい雲が一瞬のうちに強く光ったかと思うと、すぐに轟音が鳴り響き近くのどこかに雷が落ちた。
子供たちの悲鳴と鳴き声がすぐに聞こえてくる。
ハッとして子供たちの方へと駆け出しすロキエッタ。
〔早く逃げるぞい!〕
突如見知らぬ声が響き渡る。
ギョっとして思わず転びそうになったロキエッタはなんとか立ち止まり、キョロキョロと辺りを見渡した。
が、ロキエッタの周りには誰もいる様子はない。
〔早くこっちへ来なさい!〕
またしてもビクッと体を震わせたロキエッタは、その声が自身の心の中で響いていることに気がついた。
何かの気配を感じて振り返ると、なんとモモンガのモケがものすごいスピードでこちらに向かってきているではないか。
籠のついた気球のような姿にその身を変身させており、その籠の中には子供たちが乗せられている。
「モケちゃん⁉︎」
あっという間にモケに掴まれ大空へと浮き上がったロキエッタは、眼下に輝くソルとルーナの姿を目の端に捉えた。
先ほどよりも輝きが強くなっているように見え、二人はどんどんと融合していくようである。
どんどんと高度を上げていくモケ。二人の姿はすぐに見えなくなり、きらりと光る一筋の光のみがロキエッタの瞳へと届いた。
モケの足に鷲掴みされたままのロキエッタはふっと顔を上げ、今まさに目の前で繰り広げられている光景に戦慄した。
そこでは神々の争いが繰り広げられていた。
「モケちゃん、早く逃げて!」
二つの影から逃げるように風に流され飛んでいくモケ。
ロキエッタはもう遠く離れ見えなくなってしまったソルとルーナのいる森へと目を向けた。
「・・・さよなら」
そっと微笑み最後の別れを口にするロキエッタ。
神々の争いは熾烈を極めていく。
そんなソルをただただ見守ることしかできなかったロキエッタは、二人に背を向けるようにして地面に座り込んだ。
遠くの方では子供たちがモケちゃんの周りを駆け回り歓声を上げ続けている。モケは子供たちを喜ばせることに長けているようで、飽きもせず元気に走り回る子供たちを楽しませていた。
子供たちの笑う声だけが、この静かな森の中にこだましている。
ぼんやりと絶望にも似た気持ちで子供たちを眺めていたロキエッタであったが、ふと何か違和感を覚え思わず振り返った。
「ソル⁉︎」
ロキエッタはフラフラと立ち上がり慌ててソルの側へと近寄った。
「嘘・・・でしょ?」
先ほどまで荒い呼吸を繰り返し小刻みに震えていたソルであったが、今はもう呼吸をしていないようでまた悲しみに打ち震えている様子も微塵もない。
樹にしがみつくようにして動かない、金属の塊がそこにはあった。
ソルもまた死んでしまった。
「あぁ」
ロキエッタは静かに涙を流し、一人項垂れた。
なんて残酷な世界なのだろうか。
ロキエッタは樹になってしまった親友と、その樹にしがみつくようにして息絶えた友人を目の前に呆然と立ち尽くした。
ボロボロと涙が溢れ出て目の前の光景がぼやけていく。
こんなことがあっていいのだろうか。
神様というのはなんて残酷なのだろう。
ロキエッタは全身の力が抜け落ちてしまったかのように崩れ落ち、それでも目の前の二人から目が離せなかった。
すると、突如目の前の樹が輝き始めた。
「え・・・?」
脈打つように光を放つその樹はゆっくりとその背を天に伸ばしていく。
樹皮が剥がれ始めたかと思うと、なんとその樹はまるでソルのことを抱き抱えるかのように取り込んでいくではないか。
泣き崩れていたロキエッタは目の前の光景に言葉を失い、ただただ呆然と見守った。
まるで液体になってしまったかのようにソルの体が溶け出し、ルーナの中へと取り込まれていく。若々しい樹の表面に金属の煌めきが澄み渡るように流れ、キラキラと優しい光を放ちながらゆっくりと一つになっていく。
ロキエッタは穏やかに涙を流しながら二人を見つめた。
さよなら、ね。
これでよかったんだ。・・・きっと二人は再会を果たすことができたんだ。
ゆっくりと一つになっていく二人を見て、ロキエッタはそっと微笑み頬を伝う涙を拭った。
そんな温かい気持ちを、突如突風が吹き荒れ遮った。
生重たい音と共に空が強烈に光を放った。
ハッとして空を見上げると、そこには何かが高速に飛び回っているのが見えた。
その何かから真っ赤な光線が放たれる。
「アイアスだ・・・」
あの身の毛のよだつ幾重にも重なった叫び声が森中に響き渡り、ロキエッタは思わず身を震わせた。
もうここまで来てしまった。・・・終わりだ。子供たちまでもが。
もう何度目のことだろうか。絶望に包まれたロキエッタはアイアスの放つ赤い光線をぼんやりと眺め、高速移動を繰り返すその影を目で追っていた。
と、その空飛ぶ巨影神を追いかけるかのようにして、もう一つの影が上空に姿を表した。
その影は銀色の光線を放ったかと思うと、雄叫びを上げながらもう一方の影へと突進していく。
その雄叫びはなんとも心地よく、まるで悲しみに暮れた心を抱き締めるかのように優しい叫び声であった。
「何・・・あれ」
高速で大空を移動するその二つの影は互いに光線を放ち合いながら、まるで競争をしているかのように互いを叩き落とさんともつれ合っている。
二つの影がしのぎを削るその上空には雲が生まれ始め、陽光の遮られた森はすぐに薄暗くなっていった。
空を覆った重苦しい雲が一瞬のうちに強く光ったかと思うと、すぐに轟音が鳴り響き近くのどこかに雷が落ちた。
子供たちの悲鳴と鳴き声がすぐに聞こえてくる。
ハッとして子供たちの方へと駆け出しすロキエッタ。
〔早く逃げるぞい!〕
突如見知らぬ声が響き渡る。
ギョっとして思わず転びそうになったロキエッタはなんとか立ち止まり、キョロキョロと辺りを見渡した。
が、ロキエッタの周りには誰もいる様子はない。
〔早くこっちへ来なさい!〕
またしてもビクッと体を震わせたロキエッタは、その声が自身の心の中で響いていることに気がついた。
何かの気配を感じて振り返ると、なんとモモンガのモケがものすごいスピードでこちらに向かってきているではないか。
籠のついた気球のような姿にその身を変身させており、その籠の中には子供たちが乗せられている。
「モケちゃん⁉︎」
あっという間にモケに掴まれ大空へと浮き上がったロキエッタは、眼下に輝くソルとルーナの姿を目の端に捉えた。
先ほどよりも輝きが強くなっているように見え、二人はどんどんと融合していくようである。
どんどんと高度を上げていくモケ。二人の姿はすぐに見えなくなり、きらりと光る一筋の光のみがロキエッタの瞳へと届いた。
モケの足に鷲掴みされたままのロキエッタはふっと顔を上げ、今まさに目の前で繰り広げられている光景に戦慄した。
そこでは神々の争いが繰り広げられていた。
「モケちゃん、早く逃げて!」
二つの影から逃げるように風に流され飛んでいくモケ。
ロキエッタはもう遠く離れ見えなくなってしまったソルとルーナのいる森へと目を向けた。
「・・・さよなら」
そっと微笑み最後の別れを口にするロキエッタ。
神々の争いは熾烈を極めていく。
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