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〜55章〜
魔女の憂鬱 その六
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「まったく。嫌になるわ」
魔女シニコローレは雲一つない空の下、枯れ果てて朽ちた大木に腰を掛け一人口笛を吹いていた。そこは魔女の「いつもの場所」であった。
「にゃーお」
小さな黒猫がそれに合わせるかのように鳴いている。
どこまでも果てしなく続く地平線はいつもと変わらず退屈で、照りつける陽光もまたいつもと変わらず意地悪であった。
七色に輝くパラソルに身を隠していた魔女はそれでもどこか晴れやかな顔をしており、いつまでも口笛を吹いている。
「噛ませ犬ね、完全に」
まったくもう、とため息をつきながらも優しく微笑んだ魔女は懐からそっとタバコを取り出し煙を巻き始めた。
コーラス相手がいなくなり退屈してしまったのか、黒猫はゆっくりとまどろみ始める。
「誰か教えてくれればよかったのに。・・・骨折り損だわ!」
魔女は黒猫の頭を優しく撫で回しながら、笑顔で悪態をついていく。
ほんの少しばかりの風がタバコの煙をゆっくりとさらっていく。
いつもと変わらぬ光景は、いつもよりも少しだけ輝いて見えた。
「はぁ・・・なんて素敵なのかしら」
うっとりとした表情を浮かべ、空を見上げる魔女。その目はどこか別のところを思い浮かべているかのようにぼんやりとしていた。
黒猫が不思議そうに片目を開けてその魔女を見上げる。
視線に気がついたのか、ふふっと笑顔を浮かべウィンクを送る魔女。黒猫は意に介さずといった様子で欠伸を一つ、吐き出した。
ふんっと再び空を見上げ、ゆっくりとタバコの煙を吐き出す魔女。
「またいつか、どこかで」
誰に言うでもなく、魔女は一人呟いた。
魔女シニコローレは雲一つない空の下、枯れ果てて朽ちた大木に腰を掛け一人口笛を吹いていた。そこは魔女の「いつもの場所」であった。
「にゃーお」
小さな黒猫がそれに合わせるかのように鳴いている。
どこまでも果てしなく続く地平線はいつもと変わらず退屈で、照りつける陽光もまたいつもと変わらず意地悪であった。
七色に輝くパラソルに身を隠していた魔女はそれでもどこか晴れやかな顔をしており、いつまでも口笛を吹いている。
「噛ませ犬ね、完全に」
まったくもう、とため息をつきながらも優しく微笑んだ魔女は懐からそっとタバコを取り出し煙を巻き始めた。
コーラス相手がいなくなり退屈してしまったのか、黒猫はゆっくりとまどろみ始める。
「誰か教えてくれればよかったのに。・・・骨折り損だわ!」
魔女は黒猫の頭を優しく撫で回しながら、笑顔で悪態をついていく。
ほんの少しばかりの風がタバコの煙をゆっくりとさらっていく。
いつもと変わらぬ光景は、いつもよりも少しだけ輝いて見えた。
「はぁ・・・なんて素敵なのかしら」
うっとりとした表情を浮かべ、空を見上げる魔女。その目はどこか別のところを思い浮かべているかのようにぼんやりとしていた。
黒猫が不思議そうに片目を開けてその魔女を見上げる。
視線に気がついたのか、ふふっと笑顔を浮かべウィンクを送る魔女。黒猫は意に介さずといった様子で欠伸を一つ、吐き出した。
ふんっと再び空を見上げ、ゆっくりとタバコの煙を吐き出す魔女。
「またいつか、どこかで」
誰に言うでもなく、魔女は一人呟いた。
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