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2章 Rixy
3 摩訶不思議なアドベンチャー
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もう日が沈んでいたので、ボク達はその場所で世を明かすこととなった。シオリはトモキチにあまり遠くに行かないように言ってから、寝る体勢へと入った。その日はボクもすぐに、眠りについた。
「...」
「...ね!」
「え、......の?」
「オアウ」
「わあ、ありがとうございます!」
ボクはその声を聞いて眼を覚ます。まぶたとまぶたの間の狭い隙間に、光沢の浮き出た少年と、大きな深緑の爬虫類が現れた。
「カメオ...?」
ボクは体を起こし、周囲を見回した。横では、シオリが寝息をたてて眠っている。シオリよりボクのほうが早く目覚めるというのは珍しい。
まだ太陽は登っておらず、空には深い青と水色のグラデーションができていた。
ボクは立ち上がって、トモキチの近くへと歩いていく。隣の爬虫類は、紛れもなく昨日のカメだった。
(カメオ、戻ってきたんだ...)
ボクが近くまで行くと、トモキチがボクに気づいて、こちらを見る。
「あっ、ロンさん。こんにちは!」
「あーうん...”おはよう”かな?」
トモキチはカメオの方に向き直る。
「このカメさん...えっと、カメオさんが、トモキチ達と一緒に来ると言ってくれたんです!」
トモキチはニコニコしながらカメオの頭を撫でる。
「トモキチはこいつがカメだって分かるの?」
「はい!」
カメオは口を小さくパクパクと開け閉めしている。
「こんなにかっこいい生き物は、カメさん以外にはいませんから!」
「...」
ボクはカメオの顔を上から覗く。よこっぴらなその顔は、カッコイイというより、マヌケな顔だと思った。
「そうでした!」
トモキチは川の浅い所まで駆けていく。少し遠ざかった所でトモキチはしゃがみこみ、何かを両手で抱えてこちらに運んできた。
トモキチの手には...赤い魚が横たわっていた。
「カメオさんが、この魚さんをくれたんです。でも、僕には食べる事ができないので、ロンさんとシオリさんにお預けします!」
目の前には、夢にまで出てきた魚の肉があった。思わず、その肉から漏れ出るしょっぱい汁の味を想像してしまう。
「これ、カメオから無理やり奪って取ったとか、そういうんじゃないよね?」
「ち、違います違います!カメオさんがここに置いていってくれたんです」
そういってトモキチは両手で足元に楕円を描き、その状況を説明している。
「そうですよね、カメオさん」
「...オオア!ウーアンアウオゥ」
何か言っている。
何故かカメオがくれたというこの魚は、決して大きくはない。本来であれば一人で食べても足りないくらいだろうが、いくらシオリが寝ているからといって独り占めするのは気が引けたので、シオリと半分に分けようとボクは考えた。
ボクはまず、魚を川の淵にある小さな水の溜まり場にそっと置いた。そして、シオリを起こしに行こうと後ろを振り返ると...
ボクより先に、カメオがシオリの元まで歩いていった。
カメオは重そうな体を引きずって、覆いかぶさるようにシオリのすぐ横まで来ると、長い首をシオリの顔の近くまで伸ばす。
「オア」
そのまま、口の下でツンツンとシオリの頰をつついた。シオリは一度避けるように寝返りを打つと、ゆっくりとまぶたを開ける。
「...カメオ?」
シオリの瞳に、溢れんばかりの朝日の光が反射する。
「カメオおおおおおおおお!!」
シオリは両手両足をカメオの首に巻きつけるように抱きついた。泣きじゃくる音と歓喜の音が入り混じったようなぐちゃぐちゃな声で、シオリはカメオの名前を連呼する。
ようやく太陽は木々の間から顔を出し、川は銀色に輝きはじめた。ボクは一度大きく息を吸いんでから、土で汚れたショルダーバッグを肩に背負い直した。
「...」
「...ね!」
「え、......の?」
「オアウ」
「わあ、ありがとうございます!」
ボクはその声を聞いて眼を覚ます。まぶたとまぶたの間の狭い隙間に、光沢の浮き出た少年と、大きな深緑の爬虫類が現れた。
「カメオ...?」
ボクは体を起こし、周囲を見回した。横では、シオリが寝息をたてて眠っている。シオリよりボクのほうが早く目覚めるというのは珍しい。
まだ太陽は登っておらず、空には深い青と水色のグラデーションができていた。
ボクは立ち上がって、トモキチの近くへと歩いていく。隣の爬虫類は、紛れもなく昨日のカメだった。
(カメオ、戻ってきたんだ...)
ボクが近くまで行くと、トモキチがボクに気づいて、こちらを見る。
「あっ、ロンさん。こんにちは!」
「あーうん...”おはよう”かな?」
トモキチはカメオの方に向き直る。
「このカメさん...えっと、カメオさんが、トモキチ達と一緒に来ると言ってくれたんです!」
トモキチはニコニコしながらカメオの頭を撫でる。
「トモキチはこいつがカメだって分かるの?」
「はい!」
カメオは口を小さくパクパクと開け閉めしている。
「こんなにかっこいい生き物は、カメさん以外にはいませんから!」
「...」
ボクはカメオの顔を上から覗く。よこっぴらなその顔は、カッコイイというより、マヌケな顔だと思った。
「そうでした!」
トモキチは川の浅い所まで駆けていく。少し遠ざかった所でトモキチはしゃがみこみ、何かを両手で抱えてこちらに運んできた。
トモキチの手には...赤い魚が横たわっていた。
「カメオさんが、この魚さんをくれたんです。でも、僕には食べる事ができないので、ロンさんとシオリさんにお預けします!」
目の前には、夢にまで出てきた魚の肉があった。思わず、その肉から漏れ出るしょっぱい汁の味を想像してしまう。
「これ、カメオから無理やり奪って取ったとか、そういうんじゃないよね?」
「ち、違います違います!カメオさんがここに置いていってくれたんです」
そういってトモキチは両手で足元に楕円を描き、その状況を説明している。
「そうですよね、カメオさん」
「...オオア!ウーアンアウオゥ」
何か言っている。
何故かカメオがくれたというこの魚は、決して大きくはない。本来であれば一人で食べても足りないくらいだろうが、いくらシオリが寝ているからといって独り占めするのは気が引けたので、シオリと半分に分けようとボクは考えた。
ボクはまず、魚を川の淵にある小さな水の溜まり場にそっと置いた。そして、シオリを起こしに行こうと後ろを振り返ると...
ボクより先に、カメオがシオリの元まで歩いていった。
カメオは重そうな体を引きずって、覆いかぶさるようにシオリのすぐ横まで来ると、長い首をシオリの顔の近くまで伸ばす。
「オア」
そのまま、口の下でツンツンとシオリの頰をつついた。シオリは一度避けるように寝返りを打つと、ゆっくりとまぶたを開ける。
「...カメオ?」
シオリの瞳に、溢れんばかりの朝日の光が反射する。
「カメオおおおおおおおお!!」
シオリは両手両足をカメオの首に巻きつけるように抱きついた。泣きじゃくる音と歓喜の音が入り混じったようなぐちゃぐちゃな声で、シオリはカメオの名前を連呼する。
ようやく太陽は木々の間から顔を出し、川は銀色に輝きはじめた。ボクは一度大きく息を吸いんでから、土で汚れたショルダーバッグを肩に背負い直した。
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