ときおりしおり

俺んぢ

文字の大きさ
31 / 32
3章 オレンジ色の街

7 商談成立

しおりを挟む
ようやく終わったロガスとシオリの言い争いは、最後にロガスは譲る形で、300リンというところで終結した(シオリは大変不満そうな顔ではあった)。

「ったくつまんねえ事に体力を使っちまったぜ」

そういってロガスさんがのれんをくぐろうとした瞬間だった。

ガコン!!という音が辺りに響く。

「がーーっ! いってえー!!」

ロガスは右足を抱え込む。どうやら段差につまづいて足をおもいきりぶつけたらしい。

「くそ、何年経ったって慣れやしねえ。どうせなら両方換えてもらえばよかったぜ」

と、ロガスが言う。

「ロガス、あんた」

とシオリが指を指す先、ロガスの左足にキラッと光る何かがある。

「これって」

とボクが言うと、ロガスはけろっとした表情でボクを見る。

「おお、これか?」

と言ってロガスは左足のズボンの裾をまくると、銀色の金属の脚があらわになった。

「義足ってやつだな。この街じゃ珍しくともなんともないぜ」

「そうなの?」

と、シオリ。

「ああ、昔この街で天使の子だかなんだかってのがやってきて、ひでえ厄があってな...そんときに腕や脚を失った奴がいっぺえいんのさ」

「天使の子...」

シオリはその言葉を復唱する。

「ねえそれ、ちょっと詳しく聞かせてくれない?」

シオリが真剣な眼差しでロガスを見る。ロガスは少し目線を逸らした。

「ああ...あんまり思い出したかない事なんだがな、まあいいだろう」

と言って、ロガスはすっと手を出す。

「もちろん、情報提供の対価はいただくがな」

ロガスはニヤリと笑う。これも商売のイロハに含まれるのだろうか。

「んー...あーいいよ、じゃあこれで勘弁して。ほら、古代の暗号機」

そう言ってシオリは、前に拾った立方体をリュックから持ち出しロガスに渡す。

「ほお、面白い物を持ってるな。いいだろう、商談成立だ」

とロガスは満足そうな顔で言うと、親指で部屋の方を指す。

「少し長くなるだろう、立ち話もなんだからこっちに来い」

シオリはボクに目線を配ってから、うんとうなずいてロガスについていく。

「はい~! 2名様、薄汚い小部屋へご案な~い!」

ロガスが笑いながらそう言ったとき、シオリの舌打ちの音がわずかに聞こえた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...