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第二章
7 ※
しおりを挟む週末になり、コーンウォリス家へ、ルカ君と一緒に馬車で向かう。
お屋敷に着き、ユリアさんとセリーナ様が出迎えてくれた。
「ミアさん、ルカ、来てくれてありがとう! ミアさんは、休暇中は、ずっとルカの所にいるの……?」
「ああ、そうだよ。……実は、ミアさんと婚約の話を進めている所で、今日は僕も同席させてもらいたいんだけれど……」
「そうなのね! やっぱり。そうだろうとは思ってたのよ。分かったわ」
「……セオドアは、驚くかもしれないわね」
と、セリーナ様が、心配そうに呟いていた。
セオドアさんの部屋へ、ルカ君と、ユリアさんと共に入る。
「あれ、ルカ? 久しぶりだね。……どうして、ルカもいるの?」
「ルカとミアさんは、婚約されるらしいの。今日は、だから、ルカも同席させて欲しいって」
「突然すまないね。良いかな? セオドア」
「そう、なんだね……」
セオドアさんが、目を見張って驚いた表情をする。
「私は、いつもの様に隣の部屋で待ってるわね」
と言って、ユリアさんが部屋を出て行く。
「……セオドアさん、こんにちは。体調はいかがですか?」
「……ミアさん、今日は、眼鏡をかけてないんだね」
眼鏡をかけないのに慣れてしまい、すっかり忘れていた。
「あ……、はい。学校がある間はかける様にしていたのですが、今は休暇中なので、外しています」
「そう、なんだね。……その方が、ずっと素敵だ」
「……ありがとうございます」
「僕は、こっちで待っているね」
ルカ君が、ベッドの横にある椅子に腰掛ける。
……ルカ君に、見られていると思うと、なんだか緊張してしまう。
いつもの様に、ブラウスのボタンを外し、靴を脱いで、ベッドの上で膝立ちになる。
「……ミアさん、触るね?」
「……はい」
セオドアさんが、そっと胸に触れ、胸の先を口に含む。
もう片方の胸の先を、指先で弄られながら、舌で押し潰す様に転がされる。
「んっ」
柔く舌先で転がされ、もう片方の胸の先を、指先で掠める位の刺激を与え続けられる。
強い刺激では無いのに、身体がビクビクと勝手に反応してしまう。
「……ぁ、……んッ」
なるべく声を抑えようと思うのに、思わず出てしまう。
いつもなら、終わっている頃合いなのに、中々終わらせてくれない。
気がつくと、ルカ君が立ち上がり、ベッドに近づいていた。
「……時間がかかり過ぎじゃないかな? 僕も手伝うよ」
と、言い、ベッドの上に乗り、私の後ろで、同じように膝立ちになる。
「……セオドア、手を退けて」
と、胸の先を弄り続けていた、セオドアさんの手を剥がす。
後ろから、そっと胸を掬う様に触れられる。
やわやわと揉まれながら、耳を甘噛みされる。
「ん、ルカくん、だめ」
セオドアさんの、舌の動きが激しくなる。
「んッ、ぁ、やっ」
ルカ君の舌が耳の中に入ってきて、肌が粟立つ様な感覚に襲われる。
「あ、や、」
同時に、胸を形が変わるくらいに揉まれ、胸の先を弄られる。
セオドアさんにも、強く吸われてしまい、身体がびくんっと仰反る様に反応する。
「あッ、ンンッ」
身体の力が抜けてしまい、ルカ君が、後ろから抱える様に、受け止めた。
「……ミアさん? 大丈夫?」
恥ずかしすぎて、見られたくなくて、手で顔を覆う。
「…………も、やだ」
「ミアさん……?」
「……ルカ君も、セオドアさんも、……もう、触らないで」
ルカ君の身体が固まる。
ルカ君の手を振り解く様に、身体を起こす。
はだけた服を急いで整え、靴を履き、呆然とする二人を尻目に、隣の部屋へと駆け込んだ。
「ミアさん? どうしたの?」
ユリアさんに心配そうな声で言われ、安心してしまい、涙が出てくる。
「え、ちょ、ちょっと、何があったの?!」
ポロポロと出てくる涙が止まらず、ユリアさんに身体を抱えられ、ソファに座らせてもらう。
ユリアさんが、何も言わず、隣に座って背中をさすってくれる。
いつのまにか、メイドさんを呼んで、お茶を淹れてくれていた。
「温かいお茶はどうかしら?」
「……はい。頂きます」
こくりと一口飲むと、強張っていた身体が、少し緩んでホッとする。
「…………その、中々終わらなくて、ルカ君とセオドアさんに、同時に触られて、しまって……なんで、あんな事……」
思い出して、また恥ずかしくなってしまい、手で顔を覆う。
「あ、の……馬鹿二人……」
ユリアさんの低い声が聞こえる。
「ミアさん、ちょっと待ってて」
ユリアさんが、早足で部屋を出て行き、隣の部屋から声が聞こえてくる。
「何、二人共ショックを受けた顔をしてるのよ?! 馬鹿じゃないの?! セオドア、何の為に、ミアさんが来てくれてると思ってるの? ルカだって、何の為について来たのよ?! ミアさんを傷つける為に来たの?!」
「っ、違う!! 傷つけるつもりなんか……!!」
「こんな事、喜んでしている訳がないでしょう?! あなた達の為に、あなた達の身体の事を思って、ミアさんは気持ちを奮い立たせて、身を呈してくれてるのよ? 思い上がるのも、いい加減にしなさい!!!」
「二人共、少しは頭を冷やしなさい!!!」
バシャッ!!と水の音がする。
あ……濡れてしまって、セオドアさん、大丈夫なんだろうか……?
と、ぼんやりと思う。
階段を駆け上がる足音がする。
「ユリア? どうしたの? ……セオドア!! 濡れてるじゃない?! 早く、早く、誰か来てちょうだい!!」
セリーナ様の声がして、バタバタと慌ただしい音がする。
ドアが開き、ユリアさんが戻ってくる。
「ミアさん、ごめんなさい……。私がお願いをしたのに、こんな事になってしまって」
「い、いえ……、あ、あの、セオドアさん、大丈夫でしょうか?」
「……大丈夫よ。随分と元気になっているし。少し濡れる位どうって事無いのよ。母が心配性過ぎるの……」
「そう、なんですね……」
「……ミアさん、もう、ここには来なくて良いわ」
「……ユリアさん?」
「セオドアも、……ミアさんのおかげで、随分と元気になったもの。もう、大丈夫よ」
「でも……」
「ミアさんには、ルカがいるでしょう? ミアさんにばかり、甘えていては駄目だわ」
「本当に、もう、大丈夫なんでしょうか……?」
「ええ。セオドアだって、いずれ結婚相手を探さなければいけないんだもの。それが、少し早まるだけよ。その方が、相手の方にとっても、きっと良い事だわ」
「……そう、なんですね」
「ええ、だから、ミアさんは、ルカとの関係を大切にしてちょうだい」
「…………でも、さっき、ルカ君に、触らないでと言ってしまいました」
「それは、ルカがミアさんを傷つけたからでしょう? 当然の報いよ」
コンコンと、ドアを叩く音がする。
「だれ?」
「ルカだよ。……ミアさんと、話がしたい」
「……ミアさんは、どうしたいかしら」
「……話します」
「……私は、席を外した方が良い? ミアさん、ルカと二人で大丈夫……?」
「ユリアさん、ありがとうございます。大丈夫です」
「……分かったわ。何かあれば、すぐに呼んでね」
「はい」
ユリアさんがドアを開け、ルカ君が入ってくる。
「扉を、少し開けておくわね」
と言って、ユリアさんが部屋を出て行く。
ルカ君が、伺う様にこちらを見ている。
服は着替えた様で、濡れていないけれど、髪の毛がまだ濡れてしまっている。
「ミアさんの、隣に座っても良い……?」
「……嫌、です」
「…………分かった」
と言って、ソファの向かい側の、一人掛けの椅子に座る。
「……ミアさん、ごめん。本当にごめん」
「…………私の身体は、おもちゃじゃありません」
「っ、分かってる! ミアさんが、大事だよ?! だからこそ、見ていられなくて……」
「……ルカ君以外の人に、あんな姿、……見られたくない、のに」
また、ポロポロと涙が出てきてしまう。
「っ、ごめん!!」
ルカ君が弾かれた様に立ち上がり、私の足元に跪く。
膝の上で固く握りしめていた手の上から、包み込む様にぎゅっと手を握られる。
「ごめん。ミアさん、ごめん。本当に、無神経な事をしてしまった」
旅が始まってから、気持ちが昂る事が多くて、普段は泣く事なんてないのに、簡単に涙が出てきてしまう。
「ごめん……」
手の甲に額をつけて、祈る様な姿勢で謝られる。
「……ユリアさんが言って下さった様に、この行為自体を、簡単に受け入れられてる訳ではないの」
「うん」
「……でも、それ以上に、ルカ君にも、セオドアさんにも元気になって欲しいし、成長してる姿を見られる事が、とても嬉しい」
「……うん。ありがとう……」
「だから、あんな事をされたら、何の為に、こんな事をしなくちゃいけないのか、分からなくなってしまって」
「……本当に、ごめん。…………子供じみた嫉妬心で、馬鹿な事をしてしまった……ごめん」
ルカ君が顔を上げて、目が合う。
「……ユリアさんに、ここには、もう来ないで良いって、言われたの。……本当に、良いのかな? セオドアさん、大丈夫、なのかな?」
「……セオドアの状態を、詳しくは、分からないけれど、もう来ないで良いと言われたのなら、良かったんじゃないかな……。だって、多分、セオドアは……」
ドアをノックする音がする。
「ユリアよ。ちょっと、良いかしら?」
「……はい」
ユリアさんが部屋へ入ってくる。
「ごめんなさいね。まだ話している途中だった?」
「……いや、大丈夫だよ」
「セオドアが、ミアさんに謝りたいと言っていて、……話をしてもらえるかしら?」
「…………分かりました」
「っ、ミアさん、僕も一緒に」
「私が一緒にいるから、大丈夫よ」
と、ユリアさんがきっぱりと言う。
「……ルカ君大丈夫。待っていてくれる? ちゃんとお話してきます」
「……分かった」
と、ルカ君に心配そうな顔で言われた。
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