善悪を超えて行く者

べんぞう

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動くことと休むこと

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続き。

さて、やってみたのだが、「あげる」はちょっと難しい。対象が曖昧だ。
自分が別な場所に家を建て、引っ越すともなれば、この「あげる」はたやすくできる。
だが、自分は路頭に迷うのに、誰かに家をあげる、というのは無理がある。自分一人ならまだしも、家族を連れているのもネックになる。それに、家を欲しがる相手は、最終的には個人になるだろうが、まずは不動産関係のブローカーたちだから、商品のひとつとして見られるだけで、ビジネスライクな交流にしかならない。とにかく、「あげる」に持って行くにはかなり苦労しそうなので、このやり方は後回しにする。

ヘッドバットをやってみると、少し考えが進んだ。
家とは、住むところとは何か? 自分はそれをどう認識しているのか?
住所が無いといろいろ困るのは、実際には戸籍の話である。家がなくても、戸籍を実家や親戚に移させてもらえば、形式上は住所保持者になれるから、あまり問題ではない。
家の役割というのは、人を休ませることである。ホテルを考えてみればいい。
雨風をしのぎ、安心して眠れる場所が確保できれば良い。旅をしていて、(なるべく安い)宿を探すときは、それ以外何もいらない。
乱暴な区切りをすると、体温調節に関わる項目である。体温調節は本能の分野だから、欲とは言っても消せない欲の部類に入る。衣服より大きな、体温調節のため設備と考えてしまえばシンプルで良い。
衣服と違って持ち運べないから、入手・維持が難しいのだ。
例えば、一年中気候が温暖で、治安が良く、警察を含めて人々が寛容で、夜になっても獣や虫が出ない、そんな土地で生まれ育っていたら、住家への執着はほとんどなかったかもしれない。いつでもどこでも野宿できる土地ならば。
だがそんな環境は実在しないから、やはり一定の囲われた区域を確保していくしかない。その確保の代償が大きいから困るわけだ。

以上を整理してみると、
・住家がほしい欲は体温調節と休息の本能から来ている
・住家に付随する要素(戸籍、家族、所持品)は、大きくて多いので、住家を失うとそれらへのフォローが大変だ、とマインドが走る(節労)

家を失うと、連鎖でいろんなものを失う。それに関わる労力を思うと、マインドはうんざりするのだ。
それに、動くことと休むことは表裏一体である。ゆっくり休める宛てがないと、労力は発揮しにくい。絶対に休めない環境に追いやられたら、マインドは自殺を選んでしまうだろう。
常に休みたいわけではないが、休める保証があると安心できる。私が旅をするとき、まず宿を決めるのもそういう理由だ。
行動と休息という、動物的に大事な問題になってきた。

そこまで大きい問題は、マインドには克服できない。
なので次に、住家に関するトラウマを洗い出してみよう。

続く。
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