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第8章
349話
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チルはリガスにアトスの事を任せて、姉の所に向かった。
そして、姉と炎弾の戦いを見て目を見開き驚愕する。
「姉さん!?」
村全体には炎弾の攻撃で火が広がっていたが、ロピと炎弾が戦っている戦場は特に酷い有様となっていた……
一言で表すなら、正に火の海という表現が正しいだろう。
「ね、姉さん……?」
そして、チルの瞳に映る姉の姿はいつもの様子とはかけ離れており、チルの知らない姉がそこには居た。
「絶対ゆるさい……ゆるさない……」
ロピはスリングショットを構えて、カウントを始める。
「1……2……3……」
「ははは、楽しいぞ雷弾よ!」
ロピは炎弾の言葉に一切反応せず、ひたすら倒す事だけを考えている様だ。
そして、炎弾もまた攻撃準備を始める。
「黄炎……」
持っている木が黄色い炎に包まれる。
「4……5……フィンフショット……」
「黄炎ランセッ!」
ロピの放った雷弾とヘラデスが放った炎弾が激突して、また爆発が起きる。
「お、おい……ヘラデス様と互角にやりあっているぞ……何者だ、アイツは?」
炎弾の背後に控えている一人の兵士が呟く。
「た、確かに。ヘラデス様と互角にやりあっているなんて、バケモンだな……」
兵士が驚くのも無理は無い。
それ程までにヘラデスという人間は強い。
人間性は置いといて、強さだけであれば兵士達はヘラデスに絶大な信頼を寄せている。
ヘラデス相手に互角の戦いを繰り広げているロピを見て驚くのは当然だろう……
そんな兵士達とは別の意味で驚いている者が居る。
チルだ……
「いつもの姉さんじゃ無い……」
チルは普段の雰囲気とは違うロピを見て心配そうな表情を浮かべる。
「1……アインスショット……」
「おっと! ははは、流石雷弾──威力だけでは無い様だな」
「ゆるさない……ゆるさない……」
チルは姉がどんどん自分の知らないナニカに変わって行く事に恐怖を覚える。
そして、直ぐに姉の元に向かって走り出す。
「ね、姉さん、手伝いに来たよ!」
チルがロピに近付き声を掛ける。
すると、ゆっくりとロピが振り返る。
「ね、姉さん……?」
「チルちゃん……?」
「そ、そうだよ!」
チルを見るロピの目は、いつもの様にキラキラとした感じでは無く、どこかフィルターが掛かっている様な感じであった。
そして、少しの間チルを見ていたロピは……
「あれー? なんでチルちゃんがここに居るのー?」
「よ、良かった……いつもの姉さんだ……」
「ん? あわわ……どうしたの?」
いつもの雰囲気に戻り安心したのか、一瞬だけ姉に抱き着き、すぐに戦闘態勢を取る。
「雷弾よ、そいつは誰だ?」
ロピとチルのやり取りを黙って見守っていた炎弾が首を傾げる。
「ベーッだ貴方には教えてあげない!」
先程、アトスを散々馬鹿にされた事を怒っている様で、炎弾にチルの事を教える気は無い様だ。
「ふふふ、嫌われたものだな」
「当たり前だよ! お兄さんを馬鹿にした人は許さないんだから!」
「姉さん、何があったの?」
「あの人に、お兄さんの事馬鹿にされた!」
ビシッ! っと指を炎弾に向けるロピ。
「それは、許せない……」
ロピの告げ口に、チルは炎弾を睨み付ける。
「だよね? だよね?」
「うん……姉さんが何故、あんなに怒っていたかが分かった」
「流石チルちゃんだよ!」
同じ気持ちを持つ仲間に出会えた喜びにロピは、ようやく笑顔が浮かべた。
「ふむ。分かったぞ──そこに居る者は雷弾の姉だな?」
「「……」」
「背格好も似ているから、もしかしたらと思ったが、そうだろ?」
自分の推理に自画自賛するかの様に腕を組んで首を縦に振り、何やら盛大に勘違いする炎弾。
「あ、あはは。あの頭の弱い人は何を勘違いしちゃっているのかな?」
「……」
ロピは乾いた笑いで炎弾を指差す。
そして、チルは額に一筋の冷や汗を垂らしながら、横目で姉の姿をうかがった……
「ま、まぁ。頭のおかしい人に何を言われても全然気にしないけどねー」
そう言うとロピは今まで使用していた中型スリングショットを腰に収めると、次に背中にある漆黒の大型スリングショットを取り出した。
「ね、姉さん?」
「んー? 何かな?」
「な、何でもないです……」
ロピのあまりの圧力と目力にチルは何も言えない様だ。
「お? 雷弾よ、その武器は会った時から気になって居たが、なんだ?」
「貴方には教えて上げない!」
「ふふ、またか──だが、面白い!」
ロピの様子を見て、更に笑みを浮かべる炎弾。
そんな、炎弾に一人の兵士が近付き、何やら話している様子だ。
「あ? 退却だと?」
部下の言葉にあからさまに、表情を変える炎弾。
だが、部下である兵士が今の状況を簡潔に話す。
「なんだと……バルオールもか?」
部下の報告に少し驚いた様子の炎弾は、少しだけ表情を歪める。
「この光が原因か……」
炎弾は突如現れた青く光る円陣を見る。
「どうやら、少し甘く見過ぎていた様だ……退却する」
部下に退却指示を出した炎弾。直様、兵士達は退路を確保しつつ退却して行く。
「雷弾よ、申し訳ないが今回の勝負はここまでだ」
「ん?」
「我々はここで一度引かせて貰う」
「私が、逃すとでも?」
少し、脅す様な言葉を投げかけるロピ。
「ほぅ……私はこのまま戦っても良いが?」
ロピの言葉にニヤリと笑みを浮かべて、構えを取ろうとする炎弾。
そんな様子を見たロピは慌てて否定する。
「う、うそうそ! 早くこの村から出て行って!」
「アハハ、それは残念だ──また戦う事を楽しみにしているぞ?」
「わ、私は貴方と戦いたく無い!」
「それは無理だな──私とお前は必ず近い内にまた戦う事になる、それまでに更には強くなっている事を願うぞ」
そう言って、炎弾を含めた兵士達はエルフの村から出て行ったのであった……
そして、姉と炎弾の戦いを見て目を見開き驚愕する。
「姉さん!?」
村全体には炎弾の攻撃で火が広がっていたが、ロピと炎弾が戦っている戦場は特に酷い有様となっていた……
一言で表すなら、正に火の海という表現が正しいだろう。
「ね、姉さん……?」
そして、チルの瞳に映る姉の姿はいつもの様子とはかけ離れており、チルの知らない姉がそこには居た。
「絶対ゆるさい……ゆるさない……」
ロピはスリングショットを構えて、カウントを始める。
「1……2……3……」
「ははは、楽しいぞ雷弾よ!」
ロピは炎弾の言葉に一切反応せず、ひたすら倒す事だけを考えている様だ。
そして、炎弾もまた攻撃準備を始める。
「黄炎……」
持っている木が黄色い炎に包まれる。
「4……5……フィンフショット……」
「黄炎ランセッ!」
ロピの放った雷弾とヘラデスが放った炎弾が激突して、また爆発が起きる。
「お、おい……ヘラデス様と互角にやりあっているぞ……何者だ、アイツは?」
炎弾の背後に控えている一人の兵士が呟く。
「た、確かに。ヘラデス様と互角にやりあっているなんて、バケモンだな……」
兵士が驚くのも無理は無い。
それ程までにヘラデスという人間は強い。
人間性は置いといて、強さだけであれば兵士達はヘラデスに絶大な信頼を寄せている。
ヘラデス相手に互角の戦いを繰り広げているロピを見て驚くのは当然だろう……
そんな兵士達とは別の意味で驚いている者が居る。
チルだ……
「いつもの姉さんじゃ無い……」
チルは普段の雰囲気とは違うロピを見て心配そうな表情を浮かべる。
「1……アインスショット……」
「おっと! ははは、流石雷弾──威力だけでは無い様だな」
「ゆるさない……ゆるさない……」
チルは姉がどんどん自分の知らないナニカに変わって行く事に恐怖を覚える。
そして、直ぐに姉の元に向かって走り出す。
「ね、姉さん、手伝いに来たよ!」
チルがロピに近付き声を掛ける。
すると、ゆっくりとロピが振り返る。
「ね、姉さん……?」
「チルちゃん……?」
「そ、そうだよ!」
チルを見るロピの目は、いつもの様にキラキラとした感じでは無く、どこかフィルターが掛かっている様な感じであった。
そして、少しの間チルを見ていたロピは……
「あれー? なんでチルちゃんがここに居るのー?」
「よ、良かった……いつもの姉さんだ……」
「ん? あわわ……どうしたの?」
いつもの雰囲気に戻り安心したのか、一瞬だけ姉に抱き着き、すぐに戦闘態勢を取る。
「雷弾よ、そいつは誰だ?」
ロピとチルのやり取りを黙って見守っていた炎弾が首を傾げる。
「ベーッだ貴方には教えてあげない!」
先程、アトスを散々馬鹿にされた事を怒っている様で、炎弾にチルの事を教える気は無い様だ。
「ふふふ、嫌われたものだな」
「当たり前だよ! お兄さんを馬鹿にした人は許さないんだから!」
「姉さん、何があったの?」
「あの人に、お兄さんの事馬鹿にされた!」
ビシッ! っと指を炎弾に向けるロピ。
「それは、許せない……」
ロピの告げ口に、チルは炎弾を睨み付ける。
「だよね? だよね?」
「うん……姉さんが何故、あんなに怒っていたかが分かった」
「流石チルちゃんだよ!」
同じ気持ちを持つ仲間に出会えた喜びにロピは、ようやく笑顔が浮かべた。
「ふむ。分かったぞ──そこに居る者は雷弾の姉だな?」
「「……」」
「背格好も似ているから、もしかしたらと思ったが、そうだろ?」
自分の推理に自画自賛するかの様に腕を組んで首を縦に振り、何やら盛大に勘違いする炎弾。
「あ、あはは。あの頭の弱い人は何を勘違いしちゃっているのかな?」
「……」
ロピは乾いた笑いで炎弾を指差す。
そして、チルは額に一筋の冷や汗を垂らしながら、横目で姉の姿をうかがった……
「ま、まぁ。頭のおかしい人に何を言われても全然気にしないけどねー」
そう言うとロピは今まで使用していた中型スリングショットを腰に収めると、次に背中にある漆黒の大型スリングショットを取り出した。
「ね、姉さん?」
「んー? 何かな?」
「な、何でもないです……」
ロピのあまりの圧力と目力にチルは何も言えない様だ。
「お? 雷弾よ、その武器は会った時から気になって居たが、なんだ?」
「貴方には教えて上げない!」
「ふふ、またか──だが、面白い!」
ロピの様子を見て、更に笑みを浮かべる炎弾。
そんな、炎弾に一人の兵士が近付き、何やら話している様子だ。
「あ? 退却だと?」
部下の言葉にあからさまに、表情を変える炎弾。
だが、部下である兵士が今の状況を簡潔に話す。
「なんだと……バルオールもか?」
部下の報告に少し驚いた様子の炎弾は、少しだけ表情を歪める。
「この光が原因か……」
炎弾は突如現れた青く光る円陣を見る。
「どうやら、少し甘く見過ぎていた様だ……退却する」
部下に退却指示を出した炎弾。直様、兵士達は退路を確保しつつ退却して行く。
「雷弾よ、申し訳ないが今回の勝負はここまでだ」
「ん?」
「我々はここで一度引かせて貰う」
「私が、逃すとでも?」
少し、脅す様な言葉を投げかけるロピ。
「ほぅ……私はこのまま戦っても良いが?」
ロピの言葉にニヤリと笑みを浮かべて、構えを取ろうとする炎弾。
そんな様子を見たロピは慌てて否定する。
「う、うそうそ! 早くこの村から出て行って!」
「アハハ、それは残念だ──また戦う事を楽しみにしているぞ?」
「わ、私は貴方と戦いたく無い!」
「それは無理だな──私とお前は必ず近い内にまた戦う事になる、それまでに更には強くなっている事を願うぞ」
そう言って、炎弾を含めた兵士達はエルフの村から出て行ったのであった……
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