都市伝説から逃げ切るには……

こーぷ

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あの、都市伝説が再び……

92話

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「カハッッ……」
「ミ、ミズキちゃん!?」

 ソラタの投げた大きなハサミはミズキの喉元に、まるでダーツの様に突き刺さっていた。

「あはは、ソラタ上手よ!」
「オレ、アテル、トクイ」

 すると、ソラタがゆっくりとミズキに向かって歩いて来る。

「に、逃げるわよ!」
「でも、ミズキちゃんが……」
「いいから!!」

 プルがメグの手を引っ張り逃げ出す。

「オ、オカ! 俺達も早く!」
「ソラタが来る……」

 ダルマとフィブが放心しているオカを両方から無理矢理立たせて逃げる。

(クソ!)

「ゴハン、ニゲル!」
「あはは、逃しちゃだめよー?」
「オレ、オイカケル!」

 アケミは余裕な表情を浮かべてオカ達が逃げる後ろ姿を見つめる。
 そしてソラタはミズキに突き刺さっているハサミを抜き、オカ達を追いかけ始める。

「プルさん、どうする?!」

 パークが焦った様に話し掛ける。

「何処かに逃げるしか無いけど……」

 前を向いても、見えるのは長い廊下のみである。

「マテ、ニゲルナ」

 巨体に似合わずソラタは素早い動きで追って来る。

「オカ! お前シッカリしろよ!」

 ダルマが、語り掛ける。

「別にお前のせいでも何でもねぇーよ! どっちにしろココに来る時点で危険なのは知ってたんだし!」
「ダルマの言う通り……」

 二人がオカに自分の思っている事を伝える。

「ダルマ達の言う通りだぜ! もしここで死んだとしても、それはオカのせいじゃ無いぜ?」
「パークと同じ意見だよ。どっちにしろアケミ達を倒すには、ココに来るしか無かったし、むしろ早めに来て力が増す前に来れて逆に良かったさ」

 パークとヒューズもオカに自分達の考えを伝える。

「オカ君、落ち込んでいる暇は無いわよ。皆んなで一緒に生きて帰りま……ッッツ!?」

 プルが途中で話すのを止めた……いや止められたと言うべきか……

「え……プルさん……?」

 そこには、ソラタが投げ付けたであろう大きなハサミがプルの頭に突き刺さり、貫通した刃はプルの片目から飛び出していた。

「「「「「プルさん!?」」」」」

 オカ達が叫ぶが、返答も無くプルはその場で電池の切れたロボットの様に倒れた……

 パラノーマルのメンバーは誰もが足を一度止めようとするが、そこをカンジとカメラマン、メグが後ろから背中を押して走り出す様に押す。

「お前ら、落ち込んでいる暇なんてねぇーぞ! このままじゃ全滅しちまう!」
「そうです! 早く逃げましょう!」

 カンジとカメラマンの言葉を聞いて、いち早く正気に戻ったヒューズとパーク。

「皆んな、いくよ!」
「で、でもヒューズさん……プルさんが……」
「俺の目の前で……」

 ダルマとオカはまだ同様している為、ヒューズとパークがそれぞれ手を引いて足を無理矢理動かす。

「……」

 そして、一番後ろにいたフィブは最後にプルを見て、オカ達の後を追うように走り出す。


「ヒトリ、シカ、コロセナカッタ」

 少しして、ソラタがプルの死体を見下ろしている。

「ユビダケ、モラッテ、オイカケヨウ」

 そう言って、プルの頭からハサミを抜き取り、指を切断し始める……

「オンナノユビ、ヤッパリイイ」

 一体何人の指を切断したのか、ソラタは素早く十本の指を切り取りポケットに入れて再びオカ達を追い掛ける。




「はぁはぁ……」
「お、おい。あそこに扉があるぞ!?」

 カンジが皆に知らせる。

「入りましょう!」

 ヒューズが直ぐに答え、全員で流れ込む様に扉を開けて中に入る。

「し、閉めとくぞ……」

 最後にフィブが中に入る事を確認してパークが扉を閉める。

(プ、プルさんが……)

 オカの身体は震えていた。それはオカだけでは無く、隣で座り込んでいるダルマも同様である。

「……」

 プルの死を受け入れたく無い気持ちと、実際にプルが死んだ光景が入り混じり、オカ達の頭はぐちゃぐちゃになっている。
 恐らく、パラノーマルの誰もが自分達は、あのマサオさんの都市伝説を生き抜いたと言う自負があったのか、仲間が死ぬ事を想像しなかった様だ……


「落ち込んでいる所、悪いがこれからどうする?」

 カンジが全員に向かって話し掛ける。

「ひとまず、この部屋に何か無いか探しましょう」

 ヒューズやパークは流石に年長者と言う事もあり、オカ達みたいに落ち込んでは居るが、その様子を見せない為気丈に振る舞っている様だ。

 全員が黙々と部屋を探すが特に何か見つける事は出来なかった。

「依代ってどんなのなんだ?」
「前回見た時は、アケミは和服でソラタは指の剥製みたいなのでしたね」

 ヒューズの言葉を聞きカンジはもう一度部屋をグルリと見渡すが、特にそれらしき物があるとは思えないのか、すぐに視線を戻す。

「どうやら、ここには無さそうだな」
「えぇ……」

 依代が無いと分かり、再度移動する為にオカ達は扉を開けて廊下を歩き出す。

「よし、いないぜ」

 パークが顔だけ覗かせて廊下を確認するが、アケミやソラタの姿は見当たらない。

「慎重に行こう」

 先程より、一層静かに歩き始める一同であったが、やはり廊下そのものが古い為、どうしても足音が鳴ってしまう様だ。

「あはは、アンタ達まだこんな場所にいたのかい?」

 全員が声の正体を確認せずに前に向かって走り出した。

「あはは、いい反応だね……」

 アケミはニヤリと笑みを浮かべたのであった……



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