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第三章 あなたの決意
ミリアーナの本気と甘いチョコ(ダヤンside)
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シーンと部屋の中に静寂が訪れる。
お、女の子?興味?無い?いやいやいや!そんな訳ない!
「ミ、ミア?」
俺は絞り出すようにミアの名前を呼ぶとミアは下を向いてしまった。
俺は一度大きく息を吸いふぅ~と息を吐くとカリカリ頭を掻く。
「えっと…興味はあるよ。て、言うか何でそんな話になったんだ?まあ、取り敢えず座ろうか」
「は、い…」
俺とミアは二人掛けのソファに横並びに座った。
「チョコレート買って来たよ。色んなフレーバーが入ってるらしい。チョコ好きだよな?」
「はい。こんな時間ですけどね?いっぱい歯を磨かないと。ふふっ」
「今日はアッサムの茶葉持ってきた。チョコにはアールグレイも合うよな」
紅茶は渋い方が合う。
「そうですね。あ、カップとポット持ってきますわ」
ミアはそう言うと飾り棚の中にディスプレイしているカップを取り出した。これは俺がミアにプレゼントした物の一つでペアになっている。普段は飾ってる風にしてあるが実際に夜来る時用に使ってる。イチゴと蔦が描いてある。ミアに似合ってるかな、と思って選んだ。
俺はいつも通りポットに茶葉を入れて、魔術で水を出し、熱を加えて中に転移させる。
…さあ、ちょっと頭から遠いとこに置いといたやつ、引き寄せようか。
「で?なんで俺が女の子に興味が無いなんて話になる訳?」
ビクッと体を跳ねらせてから、ミアは意を決したように話始めた。
「あ、あの魔術学院には女の子沢山、い、居ますよね?そ、その。ダヤン様モテ、じゃ、なくて、えっと仲の良い女の子居ますか?」
「ん?んー、別に居ないかな。そりゃペアを組んでしないといけない授業とかはあるけど。仲が良いとかじゃないし。まあ、あっちからベタベタ触ってくるけど」
「え!触ってくるんですか?」
「んー、そうだな。割と。触れ合う方が魔術が上手く使える、とか何とか」
「触れ合う…そうなんですか?」
「さあ?俺はよく分からん。大した術も使ってないしミアの魔力とは違うから必要は無いと思うぞ?」
「でも…許してるんですよね?触るの」
「気にしてなかったな。悪意があれば俺の防御の術で弾かれるし授業だと思って。なんか駄目だったか?」
ペアは攻撃魔術の授業の中だけで自分側の奴がペッタリ俺に張り付いているだけだ。基本手袋をしているし過度な接触をされそうになれば避けている。これが日常なのでキョトンとしてしまった。
「他には、えっと、寄って来ないんですか?女の子。休み時間とかお昼休みとか」
「寄ってくる?ああ、ほぼ毎日沢山引っ切り無しに寄ってくるぞ?レジンと剣の訓練の時なんか、近づき過ぎて危ないからヒヤヒヤする。ちゃんと練武場は立ち入り禁止の警告がされてるのに…」
俺はタオルや飲み物を持って突進してくる女共を思い出しウンザリしながらポットの紅茶をカップに注いでミアの前に置く。
「ダ、ダヤン様、やっぱり凄くモテるんですね。美人な方とか可愛い方とかいっぱいいるでしょ?そ、その…気にならないんですの?」
これはあれだな…何か試されてる?女の子に興味があるかって聞いてきたんだよな?え?そりゃ、ミアにはあるけど。ん?じゃあ普通にあるって答えれば良いのか?
「…ま、まあ気には、なるけど?」
「や、やっぱりそうですわよね…」
そう言ってシュンとしてしまったミア。あれ?俺答え間違えた?
「えっとミアはそんな事聞いてどうするんだ?
「……」
下向いちまって動かないな…ん?なんか、ミアの顔がほんのり赤いし、少し震えてる?
あ!
もしかして焼きもちか!焼きもち焼いてる?本当に? うっわ。やばい!!いや、ちょっと待て俺!浮かれるな!まだそうとも限らないぞ…でも
「ミ「ダヤン様!」ア、はい!」
ミアに名前を呼ばれて思わず元気に返事を返して、左側に座るミアを見下ろす。するとミアはギギギと音がなりそうなくらい首に力を入れて俺に顔を向けた。
顔赤!なんか涙目なんだけどめちゃくちゃ可愛い!じゃなくて、大丈夫か?俺が泣かせたのか?え?いつ?なんで?酷いこと言ったか?なんて言ったかな?
「えっと…」
俺が混乱する中突然ミアが震える両手で俺の頭をパシッと挟んだ。
「 !?」
「わ!わたくし!が、が、頑張ります!!!」
そう言ってミアは
自分の唇を
俺の唇に重ね合わせた。
*
はた、と気づいたらミアの姿が消えていた。部屋を見渡すとミントグリーンのカーテンの後ろにいつの間にか隠れていた。
俺は座っていたソファから立ち上がりカーテンの前までゆっくり歩いてカーテンを隔てたミアに問うた。
「俺、ミアを不安にさせてた?」
「…」
「ミア顔見せて?」
「い…今駄目…ぐちゃぐちゃにっ…なってる、から」
「ミアは可愛いよどんな顔でも。俺、ミアの事嫌だなんて思った事一度も無い」
そう言って俺はカーテンの端を掴んだ。でもミアはぎゅっと掴んで少し抵抗する。
「ミア出て来て。ミアの顔見たい」
「駄目」
フルフルと頭を振っているようだ。カーテンが緩く揺れる。
「わかった。じゃあ、灯り消すからそれなら良い?」
俺は右手をサッと振って魔術で出していた灯りを全て消す。ロウソクの灯りも風を投げて消した。窓の外の月の光が部屋に入ってくる。カーテン越しに小さなミアの影が映し出される。
「出て来てくれる?」
ミアは少し間を空けてゆっくりとカーテンから姿を現わした。
顔はやっぱり…赤くて月明かりだけでも判る。少し不貞腐れたような照れてるような…目からは今にも涙が溢れ出しそうだ。
「は、はしたない事してしまいました。わ、わたくし…ごめんなさいダヤン様…」
「ミア」
良いかな?良いよな…
俺は小さなミアを胸に抱く。ふわふわの髪の間に手を入れてちいさい肩を抱き締めた。
ああ、俺の心臓の音聞かれてしまう。でも離したくない。離れたくない。
「嬉しいよ。でも、ごめんな?なんか不安にさせちまったか?学校も違うし、ミアからはすぐに会える距離じゃ無いし当たり前か」
「お、お友達にく、く…口付けもしてないのは、お、女の子として興味無いかもって。だから…」
「なるほど」
友人めなんて事を!だが良い仕事した!!
「ミアは、嫌じゃ無い?その、口付け、とか。鍛錬じゃ無い触れ合いは…嫌?」
「…嫌じゃ…な、ぃ、です」
言質頂きました!
「本当は我慢してた。でも鍛錬でさ、正気を失って襲った事でミアを怖がらせてる気がしてたんだ。だからあんまり、その、駄目かなって思ってた。嫌われるくらいなら、我慢出来るし」
「嫌いになんてなりませんわ」
ミアは俺の胸に顔を埋めたままハッキリと言った。
「わ…わたくし、小さいし背が伸びるまで待っててもらおうと思ってたんですの。でも、もうあんまり伸びないかもって言われて。そしたら、自分が凄くちっぽけな子に感じてい、いつも寝間着姿だし色気とかな、無いから。お、お胸もまだ大きくなくて。だから…ダヤン様に見合わない存在になるのが怖くて…」
「…馬鹿だな。本当馬鹿」
ミアの顔を両手で挟みぐいっと起こして顔を見つめる。いきなり顔を起こされ、驚いて大きな目を見開いたミアが俺を見上げた。
アプリコット色の瞳とふわふわの髪がキラキラと月の明りで白く光る。
「俺がどんなに君を好きなのか思い知らせてやる」
ミアの小さな唇に自分のを合わせチュッと吸い付いた。一度離してもう一度。今度は舌で甘い唇を舐める。ハッとミアの口から息が漏れ、少し口を開いた隙間に舌をねじ込んだ。
もう、止まらなかった。
ミアの舌を磨り上げ吸い付き、口の中にある唾液を吸い上げる。ハア…と息を吐き、再び舐め上げる。舌を絡めてまた吸い付く。
ミアの頭を左手で支え、右腕を滑らせ覆い被さる様に腰を抱き締める。
あのバラ園でミアの涙を舐めた時、甘くて驚いた記憶が蘇る。今はそれ以上に濃厚で甘くて、トロリと染み込むような痺れが頭を支配していた。ミアの魔力の所為もあるだろうがもうどうでもよかった。
どれくらいそうしていたのか。
ミアの手が俺の胸を弱く数度叩く。歯列をなぞり、下唇に舌を這わせて最後にまたチュッと吸い付いて唇を離す。
ミアはちゃんと息が出来なくてハッと息を吸い、小さくハアハアと苦しそうに呼吸を繰り返した。もう足に力が入っていない。目はトロンとして端から涙が流れていた。
ミア、君はどこもかしこも甘い。
俺はフゥと息を吐いて耳に口を付けて彼女に聞いた。
「ミア…ちょっとはわかってくれた?」
頬に、鼻に、瞼に、額に、唇に軽くキスしてミアの体を横に抱き上げ、ソファまで運びそのまま俺の太腿の上に座らせる。くったりしたミアを胸に抱き頭に顔を埋めた。
なんて愛しい存在。胸がズクズク熱い。息が苦しい。このまま食べてしまいたい…
「見合わないなんて有り得ない。こんなに可愛い女の子他にいない。五年前から君しか見てない。そんな隙あったと思うか?七日に一度のこの夜を俺がどれだけ待ち望んでいるか…君は知らな過ぎる。 好きだよミア」
「ダヤンさまぁ…」
ミアは弱々しく泣きながら俺の背中に手を回し抱き着いた。
これからはちゃんと言葉にしてあげないとな。ちょっと我慢し過ぎてたかな?いや、レジンの奴ならこう言うな。
【タイミングもあるだろ。必要な期間だったんだ。考え過ぎるな】
俺達はこれぐらいの速度で良い、そうだろ?
*
ロウソクの灯りを魔術の炎でつけ直し、抱き合ってしばらく余韻に浸っていたが、結構時間が経ってしまい、帰る時間になっていた。
「あ、鍛錬は…」
ミアが心配そうに俺を見上げる。
「今日は良いよ。それより俺は離れ難い。連れて帰りたい」
そう言ってミアの瞼にキスをした。
「ダヤン様…わ、わ、わたくし」
「ふふ、冗談。そうだ。鍛錬の日増やさないか?俺はもっと逢いたいけど、ミアは迷惑?」
「い、いえ。大丈夫ですわ」
「じゃあ、そうだな試しに五日に一度にしようか?疲れるようならまた日を延ばせば良いし、それで良いか?」
「はい」
「決まりな」
ミアを太腿からソファに下ろし、紅茶を飲み干した。使った食器は洗浄の術で綺麗にする。ふとテーブルの上にある箱に目がいった。
「チョコ食べ損ねたな」
「あ、じゃあ、帰る前に…」
ミアが急いで箱から一粒指で取り出して俺の口元に差し出す。
「違うだろミア」
「え?」
「こう言う時は口移しじゃないか?ほら?」
ニヤッと笑いながらミアの柔らかな唇を指で軽く押す。
「! そんなの出来ませんわっ」
彼女がプイッと横を向く。何でそんなに可愛いんだ。可愛い過ぎるよミア!
「そう言わず、ふふ。じゃあ、目を瞑るから。それなら良いだろ?」
「…渡すだけですよ?あ、あんなく、口付けしちゃダメですわよ?何回もしたら倒れちゃいますわ」
「可愛い事言うな~」
いやもう本当勘弁して…悶え死ぬ…
「もう!じゃあ目を閉じて下さいませ」
ミアが顔を赤くしながらそのピンクの唇にチョコを咥える。俺が目を開けたままで待っていると困ったような顔をして徐に俺の目の上に柔らかい小さな両手を被せた。
唇に固いチョコをそっと押し付けられる。
それを舌で受け止め口の中に入れた。そのまま小さくてふっくらした唇に優しく吸い付く。口の中に溶けたチョコの甘さが広がる。舌で転がしながらまたミアの口の中に押し返した。
「ありがとう、美味かった」
じゃあ、五日後に、と耳元で囁いて部屋に掛けた術を解除し俺は転移の術で部屋をあとにした。
その後俺がこっそり一人で浮かれまくったのは言うまでもない。
****
「で?やれたのか?昨日鍛錬の日だったろ?」
「うるさい。やってない」
「その割には上機嫌じゃねーか?なんかあっただろ?お前分かり易いな。ミリアーナ嬢の事以外は分かりにくいけど」
またもやニヤニヤしてくるレジン。
「くっ。なんか見透かされてる…」
「なになに?とうとう出来たんだ!おめでとう!今日なんか幸せオーラ出てるよ?」
カプが顔を寄せてくる。その顔をベシッと手で抑えながら吐き捨てた。
「違う!やってない!一々聞いてくるなっ」
「ダヤン~?嘘付かなくて良いって。彼女王都に来てるのか?失敗した訳じゃ無いんだろう?何だ、入れるとこ間違えたのか?」
破廉恥極まり無いこの年頃男子達は何でも知りたいお年頃だった。
「だから、違うって!キスしただけだよ!」
『「………」』
「く…口だぞ?」
『「ぷっ……ぐっ」』
「ダ…ダヤン…まさかまだ口チューした事無かったのか?」
リオが震えながら口を押さえ笑いを堪える。
「あ、ある!えー確か…十一歳の婚約式の…」
『「ぶははははははは────!!!!」』
「お前そ……それ..」 プルプルするレジン。
「十一歳って~~」 プルプルするカプ。
「何年経ってんだよ!ぶはっ!」吹き出すリオ。
今日も綺麗に自爆するダヤンであった。
お、女の子?興味?無い?いやいやいや!そんな訳ない!
「ミ、ミア?」
俺は絞り出すようにミアの名前を呼ぶとミアは下を向いてしまった。
俺は一度大きく息を吸いふぅ~と息を吐くとカリカリ頭を掻く。
「えっと…興味はあるよ。て、言うか何でそんな話になったんだ?まあ、取り敢えず座ろうか」
「は、い…」
俺とミアは二人掛けのソファに横並びに座った。
「チョコレート買って来たよ。色んなフレーバーが入ってるらしい。チョコ好きだよな?」
「はい。こんな時間ですけどね?いっぱい歯を磨かないと。ふふっ」
「今日はアッサムの茶葉持ってきた。チョコにはアールグレイも合うよな」
紅茶は渋い方が合う。
「そうですね。あ、カップとポット持ってきますわ」
ミアはそう言うと飾り棚の中にディスプレイしているカップを取り出した。これは俺がミアにプレゼントした物の一つでペアになっている。普段は飾ってる風にしてあるが実際に夜来る時用に使ってる。イチゴと蔦が描いてある。ミアに似合ってるかな、と思って選んだ。
俺はいつも通りポットに茶葉を入れて、魔術で水を出し、熱を加えて中に転移させる。
…さあ、ちょっと頭から遠いとこに置いといたやつ、引き寄せようか。
「で?なんで俺が女の子に興味が無いなんて話になる訳?」
ビクッと体を跳ねらせてから、ミアは意を決したように話始めた。
「あ、あの魔術学院には女の子沢山、い、居ますよね?そ、その。ダヤン様モテ、じゃ、なくて、えっと仲の良い女の子居ますか?」
「ん?んー、別に居ないかな。そりゃペアを組んでしないといけない授業とかはあるけど。仲が良いとかじゃないし。まあ、あっちからベタベタ触ってくるけど」
「え!触ってくるんですか?」
「んー、そうだな。割と。触れ合う方が魔術が上手く使える、とか何とか」
「触れ合う…そうなんですか?」
「さあ?俺はよく分からん。大した術も使ってないしミアの魔力とは違うから必要は無いと思うぞ?」
「でも…許してるんですよね?触るの」
「気にしてなかったな。悪意があれば俺の防御の術で弾かれるし授業だと思って。なんか駄目だったか?」
ペアは攻撃魔術の授業の中だけで自分側の奴がペッタリ俺に張り付いているだけだ。基本手袋をしているし過度な接触をされそうになれば避けている。これが日常なのでキョトンとしてしまった。
「他には、えっと、寄って来ないんですか?女の子。休み時間とかお昼休みとか」
「寄ってくる?ああ、ほぼ毎日沢山引っ切り無しに寄ってくるぞ?レジンと剣の訓練の時なんか、近づき過ぎて危ないからヒヤヒヤする。ちゃんと練武場は立ち入り禁止の警告がされてるのに…」
俺はタオルや飲み物を持って突進してくる女共を思い出しウンザリしながらポットの紅茶をカップに注いでミアの前に置く。
「ダ、ダヤン様、やっぱり凄くモテるんですね。美人な方とか可愛い方とかいっぱいいるでしょ?そ、その…気にならないんですの?」
これはあれだな…何か試されてる?女の子に興味があるかって聞いてきたんだよな?え?そりゃ、ミアにはあるけど。ん?じゃあ普通にあるって答えれば良いのか?
「…ま、まあ気には、なるけど?」
「や、やっぱりそうですわよね…」
そう言ってシュンとしてしまったミア。あれ?俺答え間違えた?
「えっとミアはそんな事聞いてどうするんだ?
「……」
下向いちまって動かないな…ん?なんか、ミアの顔がほんのり赤いし、少し震えてる?
あ!
もしかして焼きもちか!焼きもち焼いてる?本当に? うっわ。やばい!!いや、ちょっと待て俺!浮かれるな!まだそうとも限らないぞ…でも
「ミ「ダヤン様!」ア、はい!」
ミアに名前を呼ばれて思わず元気に返事を返して、左側に座るミアを見下ろす。するとミアはギギギと音がなりそうなくらい首に力を入れて俺に顔を向けた。
顔赤!なんか涙目なんだけどめちゃくちゃ可愛い!じゃなくて、大丈夫か?俺が泣かせたのか?え?いつ?なんで?酷いこと言ったか?なんて言ったかな?
「えっと…」
俺が混乱する中突然ミアが震える両手で俺の頭をパシッと挟んだ。
「 !?」
「わ!わたくし!が、が、頑張ります!!!」
そう言ってミアは
自分の唇を
俺の唇に重ね合わせた。
*
はた、と気づいたらミアの姿が消えていた。部屋を見渡すとミントグリーンのカーテンの後ろにいつの間にか隠れていた。
俺は座っていたソファから立ち上がりカーテンの前までゆっくり歩いてカーテンを隔てたミアに問うた。
「俺、ミアを不安にさせてた?」
「…」
「ミア顔見せて?」
「い…今駄目…ぐちゃぐちゃにっ…なってる、から」
「ミアは可愛いよどんな顔でも。俺、ミアの事嫌だなんて思った事一度も無い」
そう言って俺はカーテンの端を掴んだ。でもミアはぎゅっと掴んで少し抵抗する。
「ミア出て来て。ミアの顔見たい」
「駄目」
フルフルと頭を振っているようだ。カーテンが緩く揺れる。
「わかった。じゃあ、灯り消すからそれなら良い?」
俺は右手をサッと振って魔術で出していた灯りを全て消す。ロウソクの灯りも風を投げて消した。窓の外の月の光が部屋に入ってくる。カーテン越しに小さなミアの影が映し出される。
「出て来てくれる?」
ミアは少し間を空けてゆっくりとカーテンから姿を現わした。
顔はやっぱり…赤くて月明かりだけでも判る。少し不貞腐れたような照れてるような…目からは今にも涙が溢れ出しそうだ。
「は、はしたない事してしまいました。わ、わたくし…ごめんなさいダヤン様…」
「ミア」
良いかな?良いよな…
俺は小さなミアを胸に抱く。ふわふわの髪の間に手を入れてちいさい肩を抱き締めた。
ああ、俺の心臓の音聞かれてしまう。でも離したくない。離れたくない。
「嬉しいよ。でも、ごめんな?なんか不安にさせちまったか?学校も違うし、ミアからはすぐに会える距離じゃ無いし当たり前か」
「お、お友達にく、く…口付けもしてないのは、お、女の子として興味無いかもって。だから…」
「なるほど」
友人めなんて事を!だが良い仕事した!!
「ミアは、嫌じゃ無い?その、口付け、とか。鍛錬じゃ無い触れ合いは…嫌?」
「…嫌じゃ…な、ぃ、です」
言質頂きました!
「本当は我慢してた。でも鍛錬でさ、正気を失って襲った事でミアを怖がらせてる気がしてたんだ。だからあんまり、その、駄目かなって思ってた。嫌われるくらいなら、我慢出来るし」
「嫌いになんてなりませんわ」
ミアは俺の胸に顔を埋めたままハッキリと言った。
「わ…わたくし、小さいし背が伸びるまで待っててもらおうと思ってたんですの。でも、もうあんまり伸びないかもって言われて。そしたら、自分が凄くちっぽけな子に感じてい、いつも寝間着姿だし色気とかな、無いから。お、お胸もまだ大きくなくて。だから…ダヤン様に見合わない存在になるのが怖くて…」
「…馬鹿だな。本当馬鹿」
ミアの顔を両手で挟みぐいっと起こして顔を見つめる。いきなり顔を起こされ、驚いて大きな目を見開いたミアが俺を見上げた。
アプリコット色の瞳とふわふわの髪がキラキラと月の明りで白く光る。
「俺がどんなに君を好きなのか思い知らせてやる」
ミアの小さな唇に自分のを合わせチュッと吸い付いた。一度離してもう一度。今度は舌で甘い唇を舐める。ハッとミアの口から息が漏れ、少し口を開いた隙間に舌をねじ込んだ。
もう、止まらなかった。
ミアの舌を磨り上げ吸い付き、口の中にある唾液を吸い上げる。ハア…と息を吐き、再び舐め上げる。舌を絡めてまた吸い付く。
ミアの頭を左手で支え、右腕を滑らせ覆い被さる様に腰を抱き締める。
あのバラ園でミアの涙を舐めた時、甘くて驚いた記憶が蘇る。今はそれ以上に濃厚で甘くて、トロリと染み込むような痺れが頭を支配していた。ミアの魔力の所為もあるだろうがもうどうでもよかった。
どれくらいそうしていたのか。
ミアの手が俺の胸を弱く数度叩く。歯列をなぞり、下唇に舌を這わせて最後にまたチュッと吸い付いて唇を離す。
ミアはちゃんと息が出来なくてハッと息を吸い、小さくハアハアと苦しそうに呼吸を繰り返した。もう足に力が入っていない。目はトロンとして端から涙が流れていた。
ミア、君はどこもかしこも甘い。
俺はフゥと息を吐いて耳に口を付けて彼女に聞いた。
「ミア…ちょっとはわかってくれた?」
頬に、鼻に、瞼に、額に、唇に軽くキスしてミアの体を横に抱き上げ、ソファまで運びそのまま俺の太腿の上に座らせる。くったりしたミアを胸に抱き頭に顔を埋めた。
なんて愛しい存在。胸がズクズク熱い。息が苦しい。このまま食べてしまいたい…
「見合わないなんて有り得ない。こんなに可愛い女の子他にいない。五年前から君しか見てない。そんな隙あったと思うか?七日に一度のこの夜を俺がどれだけ待ち望んでいるか…君は知らな過ぎる。 好きだよミア」
「ダヤンさまぁ…」
ミアは弱々しく泣きながら俺の背中に手を回し抱き着いた。
これからはちゃんと言葉にしてあげないとな。ちょっと我慢し過ぎてたかな?いや、レジンの奴ならこう言うな。
【タイミングもあるだろ。必要な期間だったんだ。考え過ぎるな】
俺達はこれぐらいの速度で良い、そうだろ?
*
ロウソクの灯りを魔術の炎でつけ直し、抱き合ってしばらく余韻に浸っていたが、結構時間が経ってしまい、帰る時間になっていた。
「あ、鍛錬は…」
ミアが心配そうに俺を見上げる。
「今日は良いよ。それより俺は離れ難い。連れて帰りたい」
そう言ってミアの瞼にキスをした。
「ダヤン様…わ、わ、わたくし」
「ふふ、冗談。そうだ。鍛錬の日増やさないか?俺はもっと逢いたいけど、ミアは迷惑?」
「い、いえ。大丈夫ですわ」
「じゃあ、そうだな試しに五日に一度にしようか?疲れるようならまた日を延ばせば良いし、それで良いか?」
「はい」
「決まりな」
ミアを太腿からソファに下ろし、紅茶を飲み干した。使った食器は洗浄の術で綺麗にする。ふとテーブルの上にある箱に目がいった。
「チョコ食べ損ねたな」
「あ、じゃあ、帰る前に…」
ミアが急いで箱から一粒指で取り出して俺の口元に差し出す。
「違うだろミア」
「え?」
「こう言う時は口移しじゃないか?ほら?」
ニヤッと笑いながらミアの柔らかな唇を指で軽く押す。
「! そんなの出来ませんわっ」
彼女がプイッと横を向く。何でそんなに可愛いんだ。可愛い過ぎるよミア!
「そう言わず、ふふ。じゃあ、目を瞑るから。それなら良いだろ?」
「…渡すだけですよ?あ、あんなく、口付けしちゃダメですわよ?何回もしたら倒れちゃいますわ」
「可愛い事言うな~」
いやもう本当勘弁して…悶え死ぬ…
「もう!じゃあ目を閉じて下さいませ」
ミアが顔を赤くしながらそのピンクの唇にチョコを咥える。俺が目を開けたままで待っていると困ったような顔をして徐に俺の目の上に柔らかい小さな両手を被せた。
唇に固いチョコをそっと押し付けられる。
それを舌で受け止め口の中に入れた。そのまま小さくてふっくらした唇に優しく吸い付く。口の中に溶けたチョコの甘さが広がる。舌で転がしながらまたミアの口の中に押し返した。
「ありがとう、美味かった」
じゃあ、五日後に、と耳元で囁いて部屋に掛けた術を解除し俺は転移の術で部屋をあとにした。
その後俺がこっそり一人で浮かれまくったのは言うまでもない。
****
「で?やれたのか?昨日鍛錬の日だったろ?」
「うるさい。やってない」
「その割には上機嫌じゃねーか?なんかあっただろ?お前分かり易いな。ミリアーナ嬢の事以外は分かりにくいけど」
またもやニヤニヤしてくるレジン。
「くっ。なんか見透かされてる…」
「なになに?とうとう出来たんだ!おめでとう!今日なんか幸せオーラ出てるよ?」
カプが顔を寄せてくる。その顔をベシッと手で抑えながら吐き捨てた。
「違う!やってない!一々聞いてくるなっ」
「ダヤン~?嘘付かなくて良いって。彼女王都に来てるのか?失敗した訳じゃ無いんだろう?何だ、入れるとこ間違えたのか?」
破廉恥極まり無いこの年頃男子達は何でも知りたいお年頃だった。
「だから、違うって!キスしただけだよ!」
『「………」』
「く…口だぞ?」
『「ぷっ……ぐっ」』
「ダ…ダヤン…まさかまだ口チューした事無かったのか?」
リオが震えながら口を押さえ笑いを堪える。
「あ、ある!えー確か…十一歳の婚約式の…」
『「ぶははははははは────!!!!」』
「お前そ……それ..」 プルプルするレジン。
「十一歳って~~」 プルプルするカプ。
「何年経ってんだよ!ぶはっ!」吹き出すリオ。
今日も綺麗に自爆するダヤンであった。
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「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
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自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
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