最強魔術師とリス令嬢〜君の全てを手に入れるまで〜

平川

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第四章    あなたと護るべき者

天の声 inカサナロ

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 さて、こちらはカサナロ家屋敷。

 ミリアーナの婚姻を二カ月後に控えた頃。

 母ラシェルと侍女達と使用人達はカサナロ屋敷名物ハサルの花のジャムを庭の一角で大量に作っていた。

 大きな鍋にグツグツと茹でられた赤いハサルのみじん切りに砂糖を同量入れ、水を加えて焦げないように長い大きな木ベラで搔きまわす。それを五か所で鍋に一人づつ付いて同時に作っていた。

「奥様、隠し味のペトの実入れました?」
「ばっちり入れたわよ。わざわざ取り寄せしてるんだものー。香ばしくて味が引き締まるのよー」
「しかし、魔術師様は凄いですよねー。貴重な魔石をポンポンとくれちゃうんですから。ミリアーナ様には感謝しないと。あんな優良物件捕まえちゃうなんて」

【今使っている熱源はダヤンが魔石に炎の術を込めたものだった。大量だが割と屑の魔石。まあ、魔術が施行されていれば高値で売買出来る】

「あら~!うちのミリアーナだって優良物件よ!可愛いし優しいし賢いしふわふわだし。しかも愛されてお胸も大きくなってるし。身長は低いけど逆に背徳的な色気もあるわー。触っちゃ駄目だけどやめられないみたいな…」
「…奥様。旦那様の前でそれは言わないで下さいね。多分部屋から出てこなくなりますよ」
「はーい!」
「まあ、確かにお嬢様は本当に美しくなられましたね。最近は何だか妖精を通り越して神々しいです。なんだろ?滲み出る暖かさ?心が安らぐような…これも魔術師様に愛されてるからですかね?」

【いえ、聖女活動してるからです】

「そうね~多分そうよ!十七歳になったら攫われて行っちゃったけど、ちゃんと三日に一度は連れてきてくれるし。ダヤン君も優しい子よね。転移の術だっけ?出来るようになったからって」

【出会った十歳以前から使えてます。偽ってました。騙してました】

「あんな人外な事出来るって本当に凄い。魔術って。他にどんなものがあるんでしょう?馴染みが無くて想像付かないですけど。私達が使うのって精々火種の魔石とか水を出す魔石くらいですもんね」

【こちらのお嬢様は魔術師より魔力あります。しかも治療出来ちゃいますよ】

「まあ、私達には過ぎる力なのよ。無くても何とかなるし。便利だけど魔力があると死んじゃう子もいるんだから。うちは全員魔力が無くて良かったわー」

【治療の際は王都へお越し下さい。魔力放出もお手伝い致します。無論お宅のお嬢さんが…ね】

「ところで何処からこんなに大量のジャムの購入依頼が来たんですか?いつもはちょっとずつしか作らないのに…」
「えーと、何だかいい感じに口が軽くなるとか、心が素直になるとか何とかで王妃様経由で大口の注文が来たの。王宮の…えと…チョウホウブ?から」

 『「………………」』

(聞かなかったことにしよう!)× 六

 カサナロ邸庭園に賑やかな笑い声がこだまする。

【今日もカサナロは平和です!】
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