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第八章 あなたと選択
135.置き土産
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「分かった」
「どうするんだ?」
「王位継承権は破棄していない、そこから大まかな過去を創り直そうか」
「創り直す...........?」とレジン。
「それから、シーラはミリアーナの姉妹にする。そっくりだしね。見た目シーラが次女だね。記憶の操作をしよう」
「次女................?」とシーラ。
「2人には力が半分に分けられている。2人で完全だけど、1人でも治療は出来るよ。だから2人の『聖女』の誕生だ」
「2人の『聖女』...........?」とミリアーナ。
「精々護ってやりなさい。剣と盾になって」
「ん?つまり狙われるって事には変わり無いのか」
「だから君に地位を与えるんだよ。特別な力は要らない。その代わり周りを使いなさい。まあ、分かってるだろうけど。君は人を上手く使うだろう?ふふ」
レジンは少し呆れた様にふっと笑う。
「ミリアーナにはダヤン。シーラには俺。どこからこのシナリオ作られてたんだよ。巧妙で回りくどくて恐ろしいな」
「.........どうだろうね?嫌になったかい?」
「俺は受け入れるよ。それで構わない」
ダヤンは事もなげに言い放つ。
「ダヤン.................」
「レジン。掌の上は嫌か?ふふ」
「...............なんかダヤンが大人になってる」
「今日から大人だよ。俺もお前も。逃げられない責務と肩書。そして護る者が出来ただろ? 後は死ぬまで大人だよ。レジン」
「ちぇっ。しょうがないな。まあ、俺の子供時代もあんまり今と変わらなかったけどな。やるか、大人」
ダヤンがふふっと笑う。
「レジン様。どうか私達のお願いを聞いて下さいませ」
ミリアーナは先程の不完全な『許し』の証を両手で持つ。
「ん?何?」
「シャルの魂を大地に還したいのです。優しい彼の魂の存続をお許し下さい」
シーラはその玉に両手を乗せた。2人は目を閉じ魔力を流す。ぐるぐると手の中で魔力が凝縮していき、やがて青緑の玉にオレンジの螺旋状の筋が入った証が出来上がった。中央には淡いシャルの想いが白く光る。
「これを受け取って頂けますか?彼が行った罪の『許し』の証。貴方が許したと言う証なのです」
レジンはその美しい玉をじっと見ながらシーラに問うた。
「シーラ。君にとってシャルは何だ?」
「え?」
「君を想ってたんだろ?それを知ってどう思ったんだ?」
シーラは少し考えてから素直に答える。
「.................嬉しかったです。愛されていたんだと知りました」
「で?好きにはならなかったのか?」
「.................分かりません。いつかそんな目で見れる日が来るかも知れませんが............今は彼の魂に安らかに休んで欲しいです」
「ふーん。近過ぎたのかもな。君が彼に求めたモノは異性の愛じゃ無かったのかな?」
「異性の愛.........そうですね。.......今は.........違うと思います」
「そうか。なら受け取ろう。俺は敵に塩は送らん主義だ。君は今世は俺のモノだからな。奪いに来たら全力で追い返す。いや、余計な敵は発生する前に叩き潰す」
「ふぁっ!」
驚くシーラ。
「だから聞いたんだよ。敵になるのかどうかを判断しなくちゃ。もし、今世で生まれ変わって、後から両想いだったとか洒落にならんだろ?」
「あ、あの、あの........」わちゃわちゃわちゃ
「あ、因みに、基本側室とか妾は摂らないから」
「え?」
「王家の側室の制度はなかなか無くすの難しいんだけどな。政治的な何処もあるし。まあ、うちは大国だし、俺は征略戦争するつもりも無いから。父の代は秘密裏に戦争は阻止してきたから「人質」って言う側室も必要無かったけど。でも、いずれ公認妾制は廃止を推奨していく。魔力の所為で子供が出来にくいのが大きな原因だしな。これからは高い魔力の心配も減るし不幸の芽は作りたくない」
「は?はい.....?」
「本当に解ってるか?君が王妃になるんだぞ?」
「え"?」
「『聖女』なんだから当然だろ?頑張って勉強しような?」
「わ、わた、私が?王妃?...........ええ?」
「さあ、その証。貰おうか」
「ふぇぇぇーーーーーっ!」
レジンはシーラからヒョイッと『許し』の証を取る。
「ダヤン。小さくしてくれ」
「ああ」
縮小の術が掛けられる。いつものビー玉サイズだ。
「成る程な。優しい想いか。確かに暖かいし、不思議とスッとする清涼感がある。人を想う気持ちが綺麗なんだな」
「.................レジン様」
「大地の管理者レジン・バドワージウ。ここに『許し』の証、確かに受け取った」
ニヤリ。
レジンは再び胸にぶら下がる編み紐の中に証を入れる。
「我《妖精王》。三界の管理者。『許し』の証を受け取った事を確認したよ。では今度は私が約束を守ろうか。さあ、シャルおいで」
《妖精王》の両手の間から青緑色の淡い光に包まれたシャルの魂が現れる。
「シーラの魔力に包まれているからとても穏やかな清い魂になっているね。良い具合に浄化されているようだ。これなら直ぐにでも大地に還せるだろう」
「シャル.................良かった」
ミリアーナが涙ぐむ。
「シャル。ありがとう。本当にありがとう!また会える日を楽しみにしてる。貴方の「愛」忘れない。またデートしましょうね!」
「.................デート?」
レジンの眉がピクリと動く。
「もう、夜の浜辺で集まる蟹は懲り懲りだけど。2人で食べたパフェは美味しかったわ。大道芸も素晴らしかったし。ふふ。寝顔見られちゃいましたけど。楽しかった。シャル、ありがとう!」
「.......夜の浜辺?2人でパフェ?ね、寝顔?」
ダヤンの眉間に皺が寄る。
「さあ、お還り。大地へ。そしてまた戻っておいで。いつの日か」
《妖精王》がそう言うと光る地面に魂が吸い込まれて行く。
シャルの魂は大地へ還された。
「「良かった。本当に良かった!」」
ミリアーナとシーラは抱き合って涙を流す。だがそれを尻目に2人の男達は揃って叫んだ。
「「ちっとも良くない!!」」
シャルの置き土産は男達にとってちょっとしたジェラシー爆弾だった。
「どうするんだ?」
「王位継承権は破棄していない、そこから大まかな過去を創り直そうか」
「創り直す...........?」とレジン。
「それから、シーラはミリアーナの姉妹にする。そっくりだしね。見た目シーラが次女だね。記憶の操作をしよう」
「次女................?」とシーラ。
「2人には力が半分に分けられている。2人で完全だけど、1人でも治療は出来るよ。だから2人の『聖女』の誕生だ」
「2人の『聖女』...........?」とミリアーナ。
「精々護ってやりなさい。剣と盾になって」
「ん?つまり狙われるって事には変わり無いのか」
「だから君に地位を与えるんだよ。特別な力は要らない。その代わり周りを使いなさい。まあ、分かってるだろうけど。君は人を上手く使うだろう?ふふ」
レジンは少し呆れた様にふっと笑う。
「ミリアーナにはダヤン。シーラには俺。どこからこのシナリオ作られてたんだよ。巧妙で回りくどくて恐ろしいな」
「.........どうだろうね?嫌になったかい?」
「俺は受け入れるよ。それで構わない」
ダヤンは事もなげに言い放つ。
「ダヤン.................」
「レジン。掌の上は嫌か?ふふ」
「...............なんかダヤンが大人になってる」
「今日から大人だよ。俺もお前も。逃げられない責務と肩書。そして護る者が出来ただろ? 後は死ぬまで大人だよ。レジン」
「ちぇっ。しょうがないな。まあ、俺の子供時代もあんまり今と変わらなかったけどな。やるか、大人」
ダヤンがふふっと笑う。
「レジン様。どうか私達のお願いを聞いて下さいませ」
ミリアーナは先程の不完全な『許し』の証を両手で持つ。
「ん?何?」
「シャルの魂を大地に還したいのです。優しい彼の魂の存続をお許し下さい」
シーラはその玉に両手を乗せた。2人は目を閉じ魔力を流す。ぐるぐると手の中で魔力が凝縮していき、やがて青緑の玉にオレンジの螺旋状の筋が入った証が出来上がった。中央には淡いシャルの想いが白く光る。
「これを受け取って頂けますか?彼が行った罪の『許し』の証。貴方が許したと言う証なのです」
レジンはその美しい玉をじっと見ながらシーラに問うた。
「シーラ。君にとってシャルは何だ?」
「え?」
「君を想ってたんだろ?それを知ってどう思ったんだ?」
シーラは少し考えてから素直に答える。
「.................嬉しかったです。愛されていたんだと知りました」
「で?好きにはならなかったのか?」
「.................分かりません。いつかそんな目で見れる日が来るかも知れませんが............今は彼の魂に安らかに休んで欲しいです」
「ふーん。近過ぎたのかもな。君が彼に求めたモノは異性の愛じゃ無かったのかな?」
「異性の愛.........そうですね。.......今は.........違うと思います」
「そうか。なら受け取ろう。俺は敵に塩は送らん主義だ。君は今世は俺のモノだからな。奪いに来たら全力で追い返す。いや、余計な敵は発生する前に叩き潰す」
「ふぁっ!」
驚くシーラ。
「だから聞いたんだよ。敵になるのかどうかを判断しなくちゃ。もし、今世で生まれ変わって、後から両想いだったとか洒落にならんだろ?」
「あ、あの、あの........」わちゃわちゃわちゃ
「あ、因みに、基本側室とか妾は摂らないから」
「え?」
「王家の側室の制度はなかなか無くすの難しいんだけどな。政治的な何処もあるし。まあ、うちは大国だし、俺は征略戦争するつもりも無いから。父の代は秘密裏に戦争は阻止してきたから「人質」って言う側室も必要無かったけど。でも、いずれ公認妾制は廃止を推奨していく。魔力の所為で子供が出来にくいのが大きな原因だしな。これからは高い魔力の心配も減るし不幸の芽は作りたくない」
「は?はい.....?」
「本当に解ってるか?君が王妃になるんだぞ?」
「え"?」
「『聖女』なんだから当然だろ?頑張って勉強しような?」
「わ、わた、私が?王妃?...........ええ?」
「さあ、その証。貰おうか」
「ふぇぇぇーーーーーっ!」
レジンはシーラからヒョイッと『許し』の証を取る。
「ダヤン。小さくしてくれ」
「ああ」
縮小の術が掛けられる。いつものビー玉サイズだ。
「成る程な。優しい想いか。確かに暖かいし、不思議とスッとする清涼感がある。人を想う気持ちが綺麗なんだな」
「.................レジン様」
「大地の管理者レジン・バドワージウ。ここに『許し』の証、確かに受け取った」
ニヤリ。
レジンは再び胸にぶら下がる編み紐の中に証を入れる。
「我《妖精王》。三界の管理者。『許し』の証を受け取った事を確認したよ。では今度は私が約束を守ろうか。さあ、シャルおいで」
《妖精王》の両手の間から青緑色の淡い光に包まれたシャルの魂が現れる。
「シーラの魔力に包まれているからとても穏やかな清い魂になっているね。良い具合に浄化されているようだ。これなら直ぐにでも大地に還せるだろう」
「シャル.................良かった」
ミリアーナが涙ぐむ。
「シャル。ありがとう。本当にありがとう!また会える日を楽しみにしてる。貴方の「愛」忘れない。またデートしましょうね!」
「.................デート?」
レジンの眉がピクリと動く。
「もう、夜の浜辺で集まる蟹は懲り懲りだけど。2人で食べたパフェは美味しかったわ。大道芸も素晴らしかったし。ふふ。寝顔見られちゃいましたけど。楽しかった。シャル、ありがとう!」
「.......夜の浜辺?2人でパフェ?ね、寝顔?」
ダヤンの眉間に皺が寄る。
「さあ、お還り。大地へ。そしてまた戻っておいで。いつの日か」
《妖精王》がそう言うと光る地面に魂が吸い込まれて行く。
シャルの魂は大地へ還された。
「「良かった。本当に良かった!」」
ミリアーナとシーラは抱き合って涙を流す。だがそれを尻目に2人の男達は揃って叫んだ。
「「ちっとも良くない!!」」
シャルの置き土産は男達にとってちょっとしたジェラシー爆弾だった。
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