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第一章 「番」と「想い」
20.大人しくしとけ!
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俺は暴れている眷族達をヒュッと口から息を吹き風で拘束する。
ガチリと全身を固められた奴らはゴロンと床に転がった。見ると全員獣人タイプの眷族だった。
「なんだ?野生が強い奴らが反応してるのかな?しかし、何でだよ。神族関係無くなってるじゃねーか」
「うーん。なんか昨日よりサラちゃんの匂い強くなってるからかな?正直言って私もギリギリだ。触れてもいないのに物凄く惹かれる。これはまずいよ。アウィン、離れちゃダメだからね?危ない」
「マジか。昨日より?何だろ。そう言えば、サラがあの土野郎に会ってからおかしくなったって言ってたっけ?ん?日にちが合わんな」
「んー。何だろう?とにかく獣人は近づけないようにしよう」
そう言うと爺さんは眷族に向かって声を張る。
「症状のある者は名乗り出なさい。ちょっと彼女は特殊でね、番のような匂いを発しているが、実際は違う。何とかするから今暫く我慢しておくれ。この子は我々風の当主アウィンの番だ。決して手は出さないように」
「.................ああ。そうだ。彼女は俺のモノだからな。俺が13年掛けて漸く手に入れた番だ。誰かに譲る事は決して無い。死にたく無ければ大人しくしておけ。数日後には何とかする」
俺はそう言うと俺達の寝室までサラを運びベッドに寝かせる。
さて。困った。確かに匂いは強くなってるか。俺は番だし一緒にいるからこんなモノかとあんまり気にしていなかったが。そうだよな。あのサラが発情したんだ。可笑しいと思わないといけなかった。あっ!まさか傷口から何か入り込んだとか?神族が付けた傷だ。何かあってもおかしく無い!くそ!うっかりしてた。
.............仕方ない。借りは作りたく無いがアイツに診てもらうか。超面倒な奴だが腕は確かだし。
俺は風を飛ばして今から行く事を伝える。俺の風は返信出来るようその場に一時的に留められるので何度もやり取りしなくて済む。暫く待っていると返信の風が戻って来る。手元に1枚の紙が落ちた。
【ダーリン!嬉しい!待ってるわー♡(キスマーク付)】
「ヤッベェ.................行きたくない」
*********
爺さんに伝えてから、俺はサラを再び抱き上げ風に乗る。此処から奴が居る場所は人の形で最速で30分くらいかな。風に成れば2分だがサラが居るから無理はしない。呼吸が出来なくなる。
グンッと空に舞い上がり雲の下ギリギリを飛んだ。なるだけ海から離れよう。
奴の居る場所はパラントラス山の中腹。割と寒い。アイツは神族のくせに暑いのが嫌い、と雪深い山に住居を構えた。まあ、他にも理由は有りそうだが。
サラをしっかり防寒対策してから山の上まで飛んだ。
「うーん。雪だらけ。もう春なんだがな。まあ、ここは年中雪が残ってるからこんなもんか。えっと.........あそこか」
目印は意味がよく分からんが、赤い土で出来たハート型の岩。勿論人工的に作ってある。その下に奴の屋敷があるのだ。変わった奴だ。
俺は屋敷の前に降り立つ。いや、雪が深いので雪の上を風で滑る。埋まるからな。ついでに屋敷の周りの雪を吹き飛ばしといた。邪魔だから。
扉の前まで来て風でベルを鳴らす。カランカランと高い音が鳴った。
扉が自動で開いて行く。俺は戸惑い無く中に入った。ここには何度か訪れた事がある。主に怪我が酷い時だ。つまり、この屋敷の主人は治療が出来る奴なのだ。それも神族。土の神族だ。そう、一昨日サラを襲った奴と同じ。だが、土は子沢山で、更に言うなら世界中に子孫が居る。神族は隔世相続だが元々の数が多いので神族も多い。だが、他の属性と均衡を守る為か力はあまり強く無い。
だが、こいつはちょっと違う。
中央の階段を登り切り、左端の部屋へ向かう。此処がアイツの私室だからだ。風でノックを二回する。
「おい、入るぞ。良いのか?」
「いらっしゃい~良いわよ~」
「ああ」
扉をゆっくり開ける。中は相変わらず寒い。いや、この屋敷で暖かいものなど見つけられない。だが、部屋の装飾は暖かい色ばかりだった。主に............ピンクだ。
カーテンから椅子、テーブル、クッションに茶器。ベッドもクローゼットも何もかもピンク。マジであり得ない。寒さも吹き飛ぶ色彩だった。そして、薔薇の香り。アロマオイルが香っている。兎に角ちょっと色々慣れるまで時間がかかる。
「........相変わらずだな。この部屋」
「お姫様みたいで可愛いでしょ?このレースなんか厚みがたまんないわ!かーわいっ♡」
そいつは俺に背を向け紅茶の用意をいそいそとしている。
「ん?あっ!何?」
「.................」
「............甘い。果実。花?」
「.................」
「やだ、アウィン、お土産持って来てくれたの?凄い匂いね!」
「.................」
「.....凄い.................匂い.................これ.................」
「ガイザック。土産じゃない。俺の妻だ」
振り向いた男は目を見開く。
「.................番の.................匂い」
緑色の瞳。薄青い長髪にピンクのリボンを付け、ヒラヒラの艶のあるブラウスに白のスラックス。そしてピンクのふわふわのシフォンが付いたエプロンをつけた美丈夫がこちらを向いて固まっていた。
ガチリと全身を固められた奴らはゴロンと床に転がった。見ると全員獣人タイプの眷族だった。
「なんだ?野生が強い奴らが反応してるのかな?しかし、何でだよ。神族関係無くなってるじゃねーか」
「うーん。なんか昨日よりサラちゃんの匂い強くなってるからかな?正直言って私もギリギリだ。触れてもいないのに物凄く惹かれる。これはまずいよ。アウィン、離れちゃダメだからね?危ない」
「マジか。昨日より?何だろ。そう言えば、サラがあの土野郎に会ってからおかしくなったって言ってたっけ?ん?日にちが合わんな」
「んー。何だろう?とにかく獣人は近づけないようにしよう」
そう言うと爺さんは眷族に向かって声を張る。
「症状のある者は名乗り出なさい。ちょっと彼女は特殊でね、番のような匂いを発しているが、実際は違う。何とかするから今暫く我慢しておくれ。この子は我々風の当主アウィンの番だ。決して手は出さないように」
「.................ああ。そうだ。彼女は俺のモノだからな。俺が13年掛けて漸く手に入れた番だ。誰かに譲る事は決して無い。死にたく無ければ大人しくしておけ。数日後には何とかする」
俺はそう言うと俺達の寝室までサラを運びベッドに寝かせる。
さて。困った。確かに匂いは強くなってるか。俺は番だし一緒にいるからこんなモノかとあんまり気にしていなかったが。そうだよな。あのサラが発情したんだ。可笑しいと思わないといけなかった。あっ!まさか傷口から何か入り込んだとか?神族が付けた傷だ。何かあってもおかしく無い!くそ!うっかりしてた。
.............仕方ない。借りは作りたく無いがアイツに診てもらうか。超面倒な奴だが腕は確かだし。
俺は風を飛ばして今から行く事を伝える。俺の風は返信出来るようその場に一時的に留められるので何度もやり取りしなくて済む。暫く待っていると返信の風が戻って来る。手元に1枚の紙が落ちた。
【ダーリン!嬉しい!待ってるわー♡(キスマーク付)】
「ヤッベェ.................行きたくない」
*********
爺さんに伝えてから、俺はサラを再び抱き上げ風に乗る。此処から奴が居る場所は人の形で最速で30分くらいかな。風に成れば2分だがサラが居るから無理はしない。呼吸が出来なくなる。
グンッと空に舞い上がり雲の下ギリギリを飛んだ。なるだけ海から離れよう。
奴の居る場所はパラントラス山の中腹。割と寒い。アイツは神族のくせに暑いのが嫌い、と雪深い山に住居を構えた。まあ、他にも理由は有りそうだが。
サラをしっかり防寒対策してから山の上まで飛んだ。
「うーん。雪だらけ。もう春なんだがな。まあ、ここは年中雪が残ってるからこんなもんか。えっと.........あそこか」
目印は意味がよく分からんが、赤い土で出来たハート型の岩。勿論人工的に作ってある。その下に奴の屋敷があるのだ。変わった奴だ。
俺は屋敷の前に降り立つ。いや、雪が深いので雪の上を風で滑る。埋まるからな。ついでに屋敷の周りの雪を吹き飛ばしといた。邪魔だから。
扉の前まで来て風でベルを鳴らす。カランカランと高い音が鳴った。
扉が自動で開いて行く。俺は戸惑い無く中に入った。ここには何度か訪れた事がある。主に怪我が酷い時だ。つまり、この屋敷の主人は治療が出来る奴なのだ。それも神族。土の神族だ。そう、一昨日サラを襲った奴と同じ。だが、土は子沢山で、更に言うなら世界中に子孫が居る。神族は隔世相続だが元々の数が多いので神族も多い。だが、他の属性と均衡を守る為か力はあまり強く無い。
だが、こいつはちょっと違う。
中央の階段を登り切り、左端の部屋へ向かう。此処がアイツの私室だからだ。風でノックを二回する。
「おい、入るぞ。良いのか?」
「いらっしゃい~良いわよ~」
「ああ」
扉をゆっくり開ける。中は相変わらず寒い。いや、この屋敷で暖かいものなど見つけられない。だが、部屋の装飾は暖かい色ばかりだった。主に............ピンクだ。
カーテンから椅子、テーブル、クッションに茶器。ベッドもクローゼットも何もかもピンク。マジであり得ない。寒さも吹き飛ぶ色彩だった。そして、薔薇の香り。アロマオイルが香っている。兎に角ちょっと色々慣れるまで時間がかかる。
「........相変わらずだな。この部屋」
「お姫様みたいで可愛いでしょ?このレースなんか厚みがたまんないわ!かーわいっ♡」
そいつは俺に背を向け紅茶の用意をいそいそとしている。
「ん?あっ!何?」
「.................」
「............甘い。果実。花?」
「.................」
「やだ、アウィン、お土産持って来てくれたの?凄い匂いね!」
「.................」
「.....凄い.................匂い.................これ.................」
「ガイザック。土産じゃない。俺の妻だ」
振り向いた男は目を見開く。
「.................番の.................匂い」
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