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第五章 「勝者」と「陰謀」
97.足掻くさ!
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「ーーっ!」
グラリと身体が揺れ地面近くまで高度を落とす。脇腹のシャツが赤く染まって行く。
「んふー!どう?槍だけじゃ無いのよ?」
「.........成る程.........銃か.........」
奴の周りに無数の銃口が作られ此方を向いていた。
「万能でしょ?スピードはイマイチだけど、幾らでも作れるわ。神の力って最高よね~?」
「.........そう、みたい、だな」
「.....じゃあね、アウィン。死なない程度にやっつけてあげるわ」
「.........まだ、勝ち宣言は早いぜ?」
「神の力に勝てるとか思ってんの?」
「.................足掻くさ!」
ブワッと身体の周りに結界を張り、風で一気に上昇。一斉に銃口から最強強度の鉱石の弾丸が発射される。軌道を変えながら闘技場の周りを回って回避する。追いかけて来る弾丸を風ではたき落としながらガイザックに向け風の刃を浴びせる。身体を覆う程のデカイ盾に当たり跳ね返される風。
「無駄よ~無駄無駄!風じゃ切れないわ!」
「.................」
調子に乗ったのか地面から一段ググッと突き出した岩の上に乗り、傘の様な形の鉱石を作り出すガイザック。楽しそうにクルクルと回し出した。
「.........うっ」
俺は脇腹の傷を押さえフラリと身体を揺らす。
思った以上に出血している。血が滴りブーツの爪先から赤い滴が溢れている。
その瞬間、弾丸が俺の張った結界を突き破り側頭を掠めて行った。衝撃で仰向けに飛ばされそのまま地面に向かって落ちて行く。
「やったーーー!あたしがアウィンに!アウィンに勝ったのよーーー!!」
小躍りしながらクルクル回るガイザック。
地面に落ちながら傘を突き上げ大喜びする奴を目の端に入れ、俺は右手指2本でフイッと風を操った。
ズバッッッ
「は?」
一段飛び出ているガイザックが乗っていた岩ごとレイピアで切り取った俺は、すかさず風の結界で奴を包み、そのまま空中へ投げ上げ、奴を俺の居る場所手前まで運ぶ。
「は?」
「あのレイピアさ.........鉱物で出来て無いんだわ」
「え?」
「.........薄っすらだが特徴的なマダラ模様。あれヤマアラシの棘で出来てんだよ。まあ、俺もさっき気付いたんだけど」
「ヤマアラシ?棘?嘘よ」
「だからさ、風を纏わせといたんだ。お前が、油断する瞬間の為にな」
「溶けなかった.........って事?」
「鉱物じゃねーからな。後.........」
俺は両手を広げガイザックの周りの風を圧縮。渾身の力を込めてギュリギュリと風速を上げて行く。
「お前を地面から離す為に.........ワザと石に当たってやった。どうだ?俺を痛め付けて楽しかったか?」
「ば、馬鹿な!負け惜しみよ!!」
「風が弾丸程度の速度避けられない訳無いだろ。油断させたんだよ。お前手の内明かし過ぎ。さあ、どうする?負けを宣言するか、このまま潰されてカラカラになって粉になるか。どちらでも好きな方を選びな」
「クッ!嘘でしょ?神の力よ?負ける筈無いわ!こんな.........風如きに!!」
「まあ、確かに半分人間だけどな。その分頭を使ってる」
俺の圧を掛けた風は『真空』を作り出す。つまり
「人の形にも戻れず、息も出来ず、音も聴こえず、唯々"有る"だけの空間の塵になる....死ぬ事すら出来ないぞ?良いのか?」
ギラリとガイザックを睨み付ける。コレが.........最後だ。
「ーーは、はは.........は.........」
「.....奥の手は最後まで取っとかないと、な?」
グッと圧を掛ける。ギシギシ震えていた手と脚と顔半分がクシャッと潰れて粉々になる。長い薄い青の髪が頭や身体にギュッと寄せられ、ガイザックがまるで氷の彫刻の様に見えた。
「っ!い"やぁ!がっぁ!ば....めて!!」
「後3秒」
「ア、アウ"ィーンー!」
「2」
「ーーーーーっ!」
「1」
「ーーーま"けました"ぁぁぁーーー!!」
空間の圧縮を止め、ガイザックを地表に降ろす。地面に潜ればまた復活するだろ。土の神族は身体を再生出来る。
ゴゴゴゴ.........と音と振動を伴い、闘技場の上に突き出していた鉱石が地下へ入り込んで行く。後には再び石畳の元の床に戻っていた。
「便利だな。屋敷とか作り放題.........そんな要らんか」
審判のラーテルが俺の勝ちを表明し、決勝進出が決まった。
明日はシャザとか。やりたくねーな。
闘技場の壇上から降りると、その当人のシャザが待っていた。相変わらず黒くて表情は分かりにくい。だが、パカッと赤い口が開き白い牙が見えた。
「肉を切らせて骨を断つ。面白かったぞ」
「.....そりゃ良かった」
喜んでる様だ。仕方無いな。お互い満足出来る様頑張るか。
俺達はフッと笑い合った。
グラリと身体が揺れ地面近くまで高度を落とす。脇腹のシャツが赤く染まって行く。
「んふー!どう?槍だけじゃ無いのよ?」
「.........成る程.........銃か.........」
奴の周りに無数の銃口が作られ此方を向いていた。
「万能でしょ?スピードはイマイチだけど、幾らでも作れるわ。神の力って最高よね~?」
「.........そう、みたい、だな」
「.....じゃあね、アウィン。死なない程度にやっつけてあげるわ」
「.........まだ、勝ち宣言は早いぜ?」
「神の力に勝てるとか思ってんの?」
「.................足掻くさ!」
ブワッと身体の周りに結界を張り、風で一気に上昇。一斉に銃口から最強強度の鉱石の弾丸が発射される。軌道を変えながら闘技場の周りを回って回避する。追いかけて来る弾丸を風ではたき落としながらガイザックに向け風の刃を浴びせる。身体を覆う程のデカイ盾に当たり跳ね返される風。
「無駄よ~無駄無駄!風じゃ切れないわ!」
「.................」
調子に乗ったのか地面から一段ググッと突き出した岩の上に乗り、傘の様な形の鉱石を作り出すガイザック。楽しそうにクルクルと回し出した。
「.........うっ」
俺は脇腹の傷を押さえフラリと身体を揺らす。
思った以上に出血している。血が滴りブーツの爪先から赤い滴が溢れている。
その瞬間、弾丸が俺の張った結界を突き破り側頭を掠めて行った。衝撃で仰向けに飛ばされそのまま地面に向かって落ちて行く。
「やったーーー!あたしがアウィンに!アウィンに勝ったのよーーー!!」
小躍りしながらクルクル回るガイザック。
地面に落ちながら傘を突き上げ大喜びする奴を目の端に入れ、俺は右手指2本でフイッと風を操った。
ズバッッッ
「は?」
一段飛び出ているガイザックが乗っていた岩ごとレイピアで切り取った俺は、すかさず風の結界で奴を包み、そのまま空中へ投げ上げ、奴を俺の居る場所手前まで運ぶ。
「は?」
「あのレイピアさ.........鉱物で出来て無いんだわ」
「え?」
「.........薄っすらだが特徴的なマダラ模様。あれヤマアラシの棘で出来てんだよ。まあ、俺もさっき気付いたんだけど」
「ヤマアラシ?棘?嘘よ」
「だからさ、風を纏わせといたんだ。お前が、油断する瞬間の為にな」
「溶けなかった.........って事?」
「鉱物じゃねーからな。後.........」
俺は両手を広げガイザックの周りの風を圧縮。渾身の力を込めてギュリギュリと風速を上げて行く。
「お前を地面から離す為に.........ワザと石に当たってやった。どうだ?俺を痛め付けて楽しかったか?」
「ば、馬鹿な!負け惜しみよ!!」
「風が弾丸程度の速度避けられない訳無いだろ。油断させたんだよ。お前手の内明かし過ぎ。さあ、どうする?負けを宣言するか、このまま潰されてカラカラになって粉になるか。どちらでも好きな方を選びな」
「クッ!嘘でしょ?神の力よ?負ける筈無いわ!こんな.........風如きに!!」
「まあ、確かに半分人間だけどな。その分頭を使ってる」
俺の圧を掛けた風は『真空』を作り出す。つまり
「人の形にも戻れず、息も出来ず、音も聴こえず、唯々"有る"だけの空間の塵になる....死ぬ事すら出来ないぞ?良いのか?」
ギラリとガイザックを睨み付ける。コレが.........最後だ。
「ーーは、はは.........は.........」
「.....奥の手は最後まで取っとかないと、な?」
グッと圧を掛ける。ギシギシ震えていた手と脚と顔半分がクシャッと潰れて粉々になる。長い薄い青の髪が頭や身体にギュッと寄せられ、ガイザックがまるで氷の彫刻の様に見えた。
「っ!い"やぁ!がっぁ!ば....めて!!」
「後3秒」
「ア、アウ"ィーンー!」
「2」
「ーーーーーっ!」
「1」
「ーーーま"けました"ぁぁぁーーー!!」
空間の圧縮を止め、ガイザックを地表に降ろす。地面に潜ればまた復活するだろ。土の神族は身体を再生出来る。
ゴゴゴゴ.........と音と振動を伴い、闘技場の上に突き出していた鉱石が地下へ入り込んで行く。後には再び石畳の元の床に戻っていた。
「便利だな。屋敷とか作り放題.........そんな要らんか」
審判のラーテルが俺の勝ちを表明し、決勝進出が決まった。
明日はシャザとか。やりたくねーな。
闘技場の壇上から降りると、その当人のシャザが待っていた。相変わらず黒くて表情は分かりにくい。だが、パカッと赤い口が開き白い牙が見えた。
「肉を切らせて骨を断つ。面白かったぞ」
「.....そりゃ良かった」
喜んでる様だ。仕方無いな。お互い満足出来る様頑張るか。
俺達はフッと笑い合った。
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