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第六章 「精算」と「真相」
100.俺の....全て(100話御礼)
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暗い.........
冷たい.........
身体が.........動かない.........
そうか.........
俺は.........捕まったんだな.........
サラ.........サラ.........
どうか無事で.........いてくれ.........
本当はお前の笑った顔で別れたかった.........
でもそれは.........無理だよな.........
俺が笑えなかったんだ.........
サラ.........俺の.........罪.........言えなかった.........
その空間は何も無い。唯の闇が広がる。全神の力を借り凡ゆる能力も通用しない、逃げる事は叶わない。天界に在る中で最も無意味且つ強固な場所。審判神の名の下に存在する独房であった。
この天界で審判神に裁きを受け、有罪になれば地獄へ落とされ2度と地上にすら元に戻される事は無い。死して魂だけの存在になろうともだ。だから神族達は決して神に刃向かわず、制約を守り続ける。
業火で焼かれるとはそう言う意味だ。
アウィンはこの制約を破った。神の造りし結界をサラの為に壊した。この独房から出されるまで、いや、裁きが行われ無罪になるまで
.........もう元には戻れない。
それが例え神の策略であったとしても.........
*
暗い闇を歩く白い脚。
脚音も無く、迷い無く向かうその先には
プラチナブロンドの髪をした罪人が居た。両腕を鎖に繋がれて血に濡れた身体で脚を投げ出し座っている。
神力を抜かれ身体を動かす事は叶わない。目を開ける事も出来ないのだ。呼吸も薄くいつ死んでも可笑しくは無い。
唯、思考のみが許される状態だった。
脚が彼の前でゆっくりと止まり、次いで頭に白い手を延ばす。サラリと髪を撫でた。
『貴方は......強いわね.........』
そう独言ると白い布を身体に纏ったボンヤリと白く光を発する女は、男の脚の上を跨いで座り、下を向く顔に両手を添えてジッと見る。長い睫毛、真っ直ぐな眉。薄い唇。鼻筋の通った、少し女性的な綺麗な顔をしている。
女はゆっくりと顔を近づけてその薄い唇に自身の小さな唇を合わせた。温かい優しい神力が彼の身体に入って行く。暫くして口を離し、もう1度顔を覗く女。
ピクリと瞼が動きピクピクと目に力が入る様に眉間に皺が寄る。ゆっくりと開け放たれた瞳は赤紫色で、濁りの無い甘い透き通る果実を思わせる。
『ふふ。目が覚めた?痛い処は無いかしら?』
「.........どうして.........此処に.........」
『貴方ったら本当可愛い人ね?私の為に禁忌を犯すなんて。でも素敵。愛が溢れていたわ』
「........女神.........サラを.........護って下さい。神に.........弄ばれ無い様に.........」
『もう.........困った人ね?ふふ。自分の心配はしないの?』
「.........今更しても仕方ない。俺は彼女を黙って放っておくなんて出来なかった。罠だと分かっていても.........出来なかったんだ。すまない.........」
『.........良いのよ。貴方はそれで良いの。私がそう望んだのよ。貴方のままで、「凄く愛してくれれば良い」と言ったでしょ?貴方の行動1つ1つから私への愛が溢れていたわ。私のお腹は底など無いのにとても満たされた。嬉しいわ』
「.........女神.........貴女は.........何の.........女神なんだ?」
『.........明日教えてあげる。でもその前に、約束を果たしてもらうわよ?』
「.........やく.........そく.........?」
『この身体に.........精を.........私を目覚めさせて?貴方の愛で私を本当の女神にして頂戴。これは貴方にしか出来ないの。何故なら.........サラが貴方を愛しているから』
「ーーーっ」
両の赤紫の瞳から雫が溢れ落ちる。うっうっと嗚咽が漏れる。
女神が覚醒すればサラは.........消えてしまうかも知れない。でも覚醒しなければ男神と渡り合えないかも知れない。もう1択しか無いのだ。自由の効かない罪人にまで落ちた男に残してやれるものはもう、それしか無い。
「サラ.....サラ....」
「.........アウィン?」
「! サ、ラ?サラか?」
「あ.........私.........また.........記憶が無い。此処は.........?アウィン?アウィンね?ああ.........」
サラはポロポロと涙を溢し、アウィンの首に両手を延ばしてギュウッと顔を抱え込んだ。
「サラ.........サラ.........っ」
「もう何処にも行かないで.........貴方無して生きて行くなんて出来ないよ。そんなの意味なんて無い。お願いアウィン.........連れて行って。私を貴方の妻のまま死なせて?そしたら.........貴方の家族のまま.........っ。離なさないって、一緒に逝くって言ったじゃないっ。酷いわ!」
2人はポロポロ泣きながら額を合わせる。もう会えなくなると思っていた。だが今、触れ合う身体の熱と質量に閉じ込めていた感情が溢れ出す。
「すまんーーーサラ.........愛してるよ。俺がお前を1番愛してる。サラ.........俺の妻。俺の唯一。お前は俺の.........俺の.........全て。離したく無いよ.........誰にも......渡したく無いっ」
「うん、アウィン。私も、私も貴方を誰にも渡さない。それが例え神であっても。私の全てを掛けて.........貴方を愛し抜くから。だから最後まで.....私を諦めないで」
2人は雫を落としながら深く深く1つになる様にお互いの口を繋げた。
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