【完結】美女と岩

平川

文字の大きさ
2 / 10

1.

しおりを挟む
 あれから4年。俺は9歳になっていた。既に魔力鑑定をして俺には火属性と風属性それから闇属性があるらしい事が分かっている。
普通の奴で1つか多くて2つが一般的らしく、更に闇属性を持つ者は少ないそうだ。暗いイメージはあるが隠密的な能力が発揮出来るらしい。まあ、あるんだったら使いこなそう。日々特訓の毎日だ。12歳になったら魔術剣士のカリキュラムを受ける為寄宿学校に行く。それまでにある程度術を使えるようにしておきたかった。
 何故って?強い者には下らない火の粉はつかないもんだろ?


「ダリ!自主練はもういいから取り敢えず着替えて。今から出掛けるから。アリアンジュちゃんのとこ行くぞ」

 相変わらず父は俺の都合などお構いなしに突然用事をぶっ込んでくる厄介な人だ。まだ朝飯も食ってない。

「あ、大丈夫料理長がサンドイッチ作ってくれたから。馬車で待ってるから15分以内な」
「…」
「ほら、早くしろ!」

 だから、なんで俺を連れてくんだよ?そこだろ。5年前から事あるごとに俺を引き連れて行く。誕生日もそうだけど初めて立ったとか、髪が腰まで伸びたお祝いってなんだよ!意味わかんねぇ。なんでもお祝いにすれば良いってもんじゃないだろ。

 まあ、これも脳内処理で口にはお首にも出さんけどな。

 俺は仕方なく、鍛錬を途中で切り上げ部屋に着替えに行き、15分キッチリで馬車に乗り込んだ。しかも用意された衣装が何だかいつもより華美だ。髪までセットされた。

「よしよし!じゃあ、行くか!」

 そしてまた片道3時間の馬車の旅が始まったのだ。

 ****

 ゴード伯爵家に到着すると何だか邸がざわついていた。なんかあったのかな?そう言えば今日は何のお祝いなんだ?
 だが、他に客人が居る訳では無さそうだ。俺は父の後を歩きながら何だか良く判らないモヤッとしたものを感じた。

 今日はいつもの子供部屋では無く、応接室に連れて行かれる。
 あ、何かあるわ。何だよ…ややこしいのは止めてくれよ。

「いらっしゃいガイザーク。リダリオス君」

 相変わらず優しさの塊みたいな伯爵が俺たちを迎える。あ、因みに父の名前はガイザークだ。俺はリダリオス。父母にはダリって呼ばれてる。

「おう!待たせたな。じゃあ、とっとと始めるか」

「ふふふ。相変わらずせっかちだね。でも、ちょっと待ってね。アリアンジュがまだ用意出来てないかも。まあ、お茶でも飲みながら待とうか。レディの支度を急かしちゃいけないからね」

 レディ?いや、まだ4歳。4歳でもレディになるのか?まあ、アンジュは賢い方だ。だがまだまだ上手く話せない幼子。走っても足がもつれてしょっちゅう転ぶ。俺の4歳の時とはちょっと違うよな…
 紅茶を飲みながらつらつらとそんな事を考えていた。

 コンコンッ

「お嬢様のお支度が整いました」
「待ってたよ。さあ、お入り」

 扉が2人の侍従によって開けられる。

 そこには黄緑色のふわふわしたドレスを身に纏った女の子が立っていた。
 髪は淡いオレンジ色。瞳は大きな濃いピンク。少しタレ目がちだがそれがまた優しげな雰囲気を出している。色白で赤くなると顔が全部ピンクに染まる。小さな口と鼻。なんか妖精みたいだなって思った。

「かわい~い!やっぱり女の子可愛いなー!」

 声デカいよ父上…いや、じゃあ、もう1人作れば良いんじゃないか?とは、言わない。生々しいしな。

「いらっちゃいませ。ごきげんよう」

 アンジュの舌ったらずな挨拶は毎度お馴染みだ。
 俺は会釈してから紅茶を一口くちに含み心の中で呟く。で?今日は何のお祝いなんだ?


「いやー!アンジュちゃん。ダリのお嫁さんに来てくれるなんて本当ありがとう!嬉しいよ!」

 ブッハッ

 俺は豪快に紅茶を吹き出した。

「ゲホゲホッグッ…っは?」
「お嫁さんだよ!ダリ!お嫁さん!」
「いや、意味は分かってる。なんで?」
「婚約するんだ?アリアンジュちゃんと!」
「は?」
「争奪戦だったけど勝ち抜いたのさ。ダリが!」
「いつ!?」

 そんな戦いに参戦した覚えはからっきし無い!
 て、言うか4歳だそ?わからんだろ。婚約なんて。

「じゃあ、そう言う事で、これからはアリアンジュちゃんの婚約者な。良かったな、ダリ」

「…」

 なんで俺?ああ。もしかしてあれか。当て馬ってやつか?取り敢えず虫付かないようにって事かな。確か女の子は16歳までの婚約は王室に本書類提出義務が無いから「破棄」に成らず「解消」で済むんだっけ。つまり仮婚約だ。未成年に手を出してなけりゃ、だが。

「ダリしゃま。わたしダリしゃまのおよめさんになります。よろしくおねがいしまっしゅ」

 ペコリと頭を下げるアリアンジュ。ふわふわと可愛いドレスが揺れている。それ一応カーテンシーだよな?ふーん…

「…うん、分かった」

 しょうがないな。赤ん坊の時から知ってるし、防波堤の役割はしてやるか。流石に未来の嫁だと言われてもピンと来ない。…取り敢えずちゃんと喋れるようになろうな。お漏らし治ったか?

「さあ!今日は騒ぐぞーー!」
「え?」

 どうやら父達は宴会を予定していたらしい。食堂に案内されるといつの間にか招待客が沢山集まっていた。すでに酔っ払っている奴もいるし。もしかして前日から?嘘だろ?
 俺は呆然としながら、今日は帰れない事を悟った。

 ****

「ダリしゃま。だっこしてくだしゃい!」
「ん」

 俺はいつものようにアンジュを抱っこする。
 9歳にしては大きい俺は剣の訓練を始めてから更にグングンと伸びている。すでに剣術の講師が付いているので今は対人戦術を叩き込まれている最中だ。
 アンジュはまだまだ小さくて俺の半分くらいしか無い。軽いし。

「ダリしゃま。わたししろいウサギをととさまにもらったのです。いっちょにみにいきまちょ?」
「アンジュは婚約の意味知ってるのか?」
「およめさんになるんでしょ?たのしみでしゅっ」
「お嫁さんは何するか知ってるのか?」
「はい。ダリしゃまとずーといっちょにいられるのでしゅ!」

「…まあ、良いか」

 何だかアンジュは赤ん坊のイメージが強過ぎて未来の結婚生活が想像出来ない。勿論他の奴に比べれば情はあるんだが…まあ、俺だって一応子供だしな。それに寄宿学校に行くようになれば頻繁には会えなくなるし婚約って言っても実質名ばかりで大変な事にはなら無い筈だ。

 女の子は女学校がある。貴族の子女が花嫁修業をする所だ。そこを卒業すると社交界で相手を探さなきゃならないらしい。相手がいればそのまま結婚して終わりだ。16歳で基本は卒業らしいから結婚出来る歳までって事だ。

 アンジュが16歳になったら…俺が21歳か。随分遠いな…取り敢えずその歳まで様子見かな。

 なんて、割と軽い気持ちでこの婚約の話しを受け入れたんだ。

 でも…俺もやっぱり子供だった。いや、その時は本当に気付いていなかったんだ。

 この珍しい容姿のアリアンジュが…


 将来無類の美女になるなんて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】大好きなあなたのために…?

月樹《つき》
恋愛
私には子供の頃から仲の良い大好きな幼馴染がいた。 2人でよく読んだ冒険のお話の中では、最後に魔物を倒し立派な騎士となった男の子と、それを支えてきた聖女の女の子が結ばれる。 『俺もこの物語の主人公みたいに立派な騎士になるから』と言って、真っ赤な顔で花畑で摘んだ花束をくれた彼。あの時から彼を信じて支えてきたのに… いつの間にか彼の隣には、お姫様のように可憐な女の子がいた…。

氷の宰相補佐と押しつけられた厄災の花嫁

瑞原唯子
恋愛
王命により、アイザックはまだ十歳の少女を妻として娶ることになった。 彼女は生後まもなく始末されたはずの『厄災の姫』である。最近になって生存が判明したが、いまさら王家に迎え入れることも始末することもできない——悩んだ末、国王は序列一位のシェフィールド公爵家に押しつけたのだ。

私を簡単に捨てられるとでも?―君が望んでも、離さない―

喜雨と悲雨
恋愛
私の名前はミラン。街でしがない薬師をしている。 そして恋人は、王宮騎士団長のルイスだった。 二年前、彼は魔物討伐に向けて遠征に出発。 最初は手紙も返ってきていたのに、 いつからか音信不通に。 あんなにうっとうしいほど構ってきた男が―― なぜ突然、私を無視するの? 不安を抱えながらも待ち続けた私の前に、 突然ルイスが帰還した。 ボロボロの身体。 そして隣には――見知らぬ女。 勝ち誇ったように彼の隣に立つその女を見て、 私の中で何かが壊れた。 混乱、絶望、そして……再起。 すがりつく女は、みっともないだけ。 私は、潔く身を引くと決めた――つもりだったのに。 「私を簡単に捨てられるとでも? ――君が望んでも、離さない」 呪いを自ら解き放ち、 彼は再び、執着の目で私を見つめてきた。 すれ違い、誤解、呪い、執着、 そして狂おしいほどの愛―― 二人の恋のゆくえは、誰にもわからない。 過去に書いた作品を修正しました。再投稿です。

円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』

みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」 皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。 (これは"愛することのない"の亜種?) 前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。 エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。 それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。 速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──? シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。 どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの? ※小説家になろう様でも掲載しています ※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました ※毎朝7時に更新していく予定です

溺愛王子の甘すぎる花嫁~悪役令嬢を追放したら、毎日が新婚初夜になりました~

紅葉山参
恋愛
侯爵令嬢リーシャは、婚約者である第一王子ビヨンド様との結婚を心から待ち望んでいた。けれど、その幸福な未来を妬む者もいた。それが、リーシャの控えめな立場を馬鹿にし、王子を我が物にしようと画策した悪役令嬢ユーリーだった。 ある夜会で、ユーリーはビヨンド様の気を引こうと、リーシャを罠にかける。しかし、あなたの王子は、そんなつまらない小細工に騙されるほど愚かではなかった。愛するリーシャを信じ、王子はユーリーを即座に糾弾し、国外追放という厳しい処分を下す。 邪魔者が消え去った後、リーシャとビヨンド様の甘美な新婚生活が始まる。彼は、人前では厳格な王子として振る舞うけれど、私と二人きりになると、とろけるような甘さでリーシャを愛し尽くしてくれるの。 「私の可愛い妻よ、きみなしの人生なんて考えられない」 そう囁くビヨンド様に、私リーシャもまた、心も身体も預けてしまう。これは、障害が取り除かれたことで、むしろ加速度的に深まる、世界一甘くて幸せな夫婦の溺愛物語。新婚の王子妃として、私は彼の、そして王国の「最愛」として、毎日を幸福に満たされて生きていきます。

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

処理中です...