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第一幕
5.第1、第2段階施行:最悪な目覚め
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「ん?えらく破損してるじゃないか。骨は?」
「恐らく全て有ると思う」
「まあ、無くても大丈夫だよ。うちのも問題無く歩けてるし」
「不思議と丈夫になるよな~」
「身体に付いている虫や泥は落とした。薬品にも漬けた。例の魔術師の首飾りも付けたし、魔術法陣も描いた。.................これで良いのか?」
「うん。完璧。じゃあ.........始めようか」
「ああ.........」
「楽しみだな~。まあ暫くは大変だけど。そこは愛の力で乗り切れよ~」
「.........頑張るよ。いや、やるしか無い」
「ああ.........そうだ。やるしか無い。例え恨まれていようとも.........」
『「俺達にはこれしか道は無いのだから」』
そう言って4人の男達は自らの手首に刃物を当て躊躇いなく切り裂いた。
****
何だか良い匂いがする.........
何の.........甘い.........花の.........
昔、子供の頃に嗅いだ.........薄紫色の.........
何と言う名前だっただろう.........
ラ.........ク.........ラ.........ライ.........ク
.........ライラック.........
庭に有った.........毎年.........良い匂いがして.........
妹と2人で良く花びらを取りに行ったっけ.........濃い色だとラッキーで、4枚の花弁が5枚有ったらその日1日スペシャルラッキー.........なんて......
あの花びら.........どうしたんだっけ.........
ぼんやりした思考に促され、私は重たい瞼を上げた。此処は.........どこだろう.........
見た事があるような.........いや.........無いな。壁に目をやる。古いゴツゴツとした岩肌。少し湿っているかの様な表面の艶。蝋燭の灯りがユラユラと揺れていた。
頭が重い。動けない.........身体が.........私の身体では無い様に言う事を聞いてくれない。私は.........どうしたんだっけ?
.........あ.........雨が.........降っていて.........馬が.........馬車で.........雷.........
その時、脚側からガチャ、っと音がしてコツコツと靴の音が聞こえて来た。私は少し怖かったので再び目を閉じる。その足音は私に近づいて来て、左側でピタリと止まった。カタンと音がしてチャプっと水の跳ねる音が同時に聞こえる。徐ろに私の上に被さっていた寝具を剥ぎ、腰の辺りをゴソゴソし始める。
「?」
次いでシュルッと音がしたと思ったら胸の前の布を開ける。途端に冷たい空気が襲い掛かって来た。
「!!」
も.........もしかして.........今私.........貞操の危機なのでは?い、嫌だ!嫌!でもっ.........動かない!
どうしようどうしようっ.........助けて!助けて!
オーラ.........
ギュッと目に力を入れる。涙がホロッと溢れた。
その瞬間、ふわっと温かい物が胸に当てられ身体をなぞられる。胸から首、顔、肩に降りて腕から指先。またチャプッと音がして再び腹に温かい物が乗せられ、身体をなぞっていく。
.........これは.........身体を拭かれているのだ!なんて事!恥ずかしい!でも.........取り敢えず襲われているのでは.........ないようだ。少しホッとしたが徐々に下半身を拭き出した事に内心ビクビクした。恥骨を通り太腿へ。膝まで行ってから反対の脚へ。水音が聞こえる度にそれは温かくなり、私を拭いて行く。片方の私を支える手が暖かくて何だか気持ちいい。
だが、グイッと私の膝を広げて内太腿や脚の付け根を拭かれた時は死にたくなった。こんなあられも無い姿.........酷すぎる!
恥ずかしさと戸惑いと、見せてはいけない部分を知らない人に見られていると言う恐怖で鳥肌が立つ。抵抗しようにも顎にすら力が入らず私は成すがままだった。その手は留まる事無くいやらしさもないまま、淡々と隅々まで拭き切り、最後に私の上半身を起こし、背中を拭きあげた。
身体を抱え込まれ押し付けられたその先は.........やはり男性の胸。固い胸板にカーッと身体の熱が上がる気がした。
私もしかして.........あの後誰かに見つけて貰ったのかな?助かったの?
だったらきっと山の中大変な思いをして連れて来てくれたに違いない。それでこんなに優しく丁寧に身体を拭かれるなんて.........何から何まで申し訳無さ過ぎる。でも.........今目を開けるのはダメだ!絶対気まずい!モンモンとしながらキュッと目を閉じていたが、ふと、過去に嗅いだ事が有るような匂いで懐かしい気分になる。
いつ.........どこで.........いや、この人から.........何の匂い?違う.........?ライラックの.........香水?
その人は身体を拭き終え再び服を整えて、寝具を被せた。どうしよう.........目を開けた方が良いのかな?次いつ誰が来るか判らないし.........
でも.........怖いな.........
そう思っていたらスイッと頬を何かが撫でる。指?髪を梳いて額に温かい手が乗せられる。
優しい手.........。きっとこの人は優しい人だ。見ず知らずの私なんかを看病してくれたんだろう。
私は思い切って薄っすらと目を開けた。
暗闇からオレンジ色に照らされた室内に切り替わる。まだ額には手が乗っている。キョロっと目だけを動かして手の主を見ようとした。
え?
途端に心臓が跳ねるようにドクドクと脈打ち始める。
有り得ない.........
あってはならない.........
神様.................酷すぎます.................
やっと解放されたと思ったのに.........
全てまたやり直し.........
私はまた
あの地獄である屋敷に戻されていたのだ
そこに居たのは.........
私を追い詰め
私の身体以外を取り上げて
私の全てを否定して来た
憎い悪魔の様な.........美しい夫だった。
「恐らく全て有ると思う」
「まあ、無くても大丈夫だよ。うちのも問題無く歩けてるし」
「不思議と丈夫になるよな~」
「身体に付いている虫や泥は落とした。薬品にも漬けた。例の魔術師の首飾りも付けたし、魔術法陣も描いた。.................これで良いのか?」
「うん。完璧。じゃあ.........始めようか」
「ああ.........」
「楽しみだな~。まあ暫くは大変だけど。そこは愛の力で乗り切れよ~」
「.........頑張るよ。いや、やるしか無い」
「ああ.........そうだ。やるしか無い。例え恨まれていようとも.........」
『「俺達にはこれしか道は無いのだから」』
そう言って4人の男達は自らの手首に刃物を当て躊躇いなく切り裂いた。
****
何だか良い匂いがする.........
何の.........甘い.........花の.........
昔、子供の頃に嗅いだ.........薄紫色の.........
何と言う名前だっただろう.........
ラ.........ク.........ラ.........ライ.........ク
.........ライラック.........
庭に有った.........毎年.........良い匂いがして.........
妹と2人で良く花びらを取りに行ったっけ.........濃い色だとラッキーで、4枚の花弁が5枚有ったらその日1日スペシャルラッキー.........なんて......
あの花びら.........どうしたんだっけ.........
ぼんやりした思考に促され、私は重たい瞼を上げた。此処は.........どこだろう.........
見た事があるような.........いや.........無いな。壁に目をやる。古いゴツゴツとした岩肌。少し湿っているかの様な表面の艶。蝋燭の灯りがユラユラと揺れていた。
頭が重い。動けない.........身体が.........私の身体では無い様に言う事を聞いてくれない。私は.........どうしたんだっけ?
.........あ.........雨が.........降っていて.........馬が.........馬車で.........雷.........
その時、脚側からガチャ、っと音がしてコツコツと靴の音が聞こえて来た。私は少し怖かったので再び目を閉じる。その足音は私に近づいて来て、左側でピタリと止まった。カタンと音がしてチャプっと水の跳ねる音が同時に聞こえる。徐ろに私の上に被さっていた寝具を剥ぎ、腰の辺りをゴソゴソし始める。
「?」
次いでシュルッと音がしたと思ったら胸の前の布を開ける。途端に冷たい空気が襲い掛かって来た。
「!!」
も.........もしかして.........今私.........貞操の危機なのでは?い、嫌だ!嫌!でもっ.........動かない!
どうしようどうしようっ.........助けて!助けて!
オーラ.........
ギュッと目に力を入れる。涙がホロッと溢れた。
その瞬間、ふわっと温かい物が胸に当てられ身体をなぞられる。胸から首、顔、肩に降りて腕から指先。またチャプッと音がして再び腹に温かい物が乗せられ、身体をなぞっていく。
.........これは.........身体を拭かれているのだ!なんて事!恥ずかしい!でも.........取り敢えず襲われているのでは.........ないようだ。少しホッとしたが徐々に下半身を拭き出した事に内心ビクビクした。恥骨を通り太腿へ。膝まで行ってから反対の脚へ。水音が聞こえる度にそれは温かくなり、私を拭いて行く。片方の私を支える手が暖かくて何だか気持ちいい。
だが、グイッと私の膝を広げて内太腿や脚の付け根を拭かれた時は死にたくなった。こんなあられも無い姿.........酷すぎる!
恥ずかしさと戸惑いと、見せてはいけない部分を知らない人に見られていると言う恐怖で鳥肌が立つ。抵抗しようにも顎にすら力が入らず私は成すがままだった。その手は留まる事無くいやらしさもないまま、淡々と隅々まで拭き切り、最後に私の上半身を起こし、背中を拭きあげた。
身体を抱え込まれ押し付けられたその先は.........やはり男性の胸。固い胸板にカーッと身体の熱が上がる気がした。
私もしかして.........あの後誰かに見つけて貰ったのかな?助かったの?
だったらきっと山の中大変な思いをして連れて来てくれたに違いない。それでこんなに優しく丁寧に身体を拭かれるなんて.........何から何まで申し訳無さ過ぎる。でも.........今目を開けるのはダメだ!絶対気まずい!モンモンとしながらキュッと目を閉じていたが、ふと、過去に嗅いだ事が有るような匂いで懐かしい気分になる。
いつ.........どこで.........いや、この人から.........何の匂い?違う.........?ライラックの.........香水?
その人は身体を拭き終え再び服を整えて、寝具を被せた。どうしよう.........目を開けた方が良いのかな?次いつ誰が来るか判らないし.........
でも.........怖いな.........
そう思っていたらスイッと頬を何かが撫でる。指?髪を梳いて額に温かい手が乗せられる。
優しい手.........。きっとこの人は優しい人だ。見ず知らずの私なんかを看病してくれたんだろう。
私は思い切って薄っすらと目を開けた。
暗闇からオレンジ色に照らされた室内に切り替わる。まだ額には手が乗っている。キョロっと目だけを動かして手の主を見ようとした。
え?
途端に心臓が跳ねるようにドクドクと脈打ち始める。
有り得ない.........
あってはならない.........
神様.................酷すぎます.................
やっと解放されたと思ったのに.........
全てまたやり直し.........
私はまた
あの地獄である屋敷に戻されていたのだ
そこに居たのは.........
私を追い詰め
私の身体以外を取り上げて
私の全てを否定して来た
憎い悪魔の様な.........美しい夫だった。
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