アンデッド・レシピ【正しい妻の作り方】〜呪われた夫に死んでから溺愛されました〜

平川

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第二幕

48.経過観察:家系図

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 朝食の後、オーランドの執務室に向かう。そう言えば凄くお酒臭かったけど.........大丈夫かしら?だが扉を開けると、匂いがしなかった。窓が開け放たれている。成る程。勿論空き瓶も片付けられていた。

「風の魔術で部屋の空気を入れ替えた。まだ匂う?」
「もう大丈夫よ。早速だけど話しておかないといけない事があるの。魔女の呪いについて、よ」

私達は其々向かい合ってソファに座った。

「え?どう言う事?」
「信じられ無いかもしれないんだけど.........この屋敷に幽霊が居るの」
「.........は?」
「ライラックの林にね、居るの。しかも魔女だって言うのよ」
「.........アリエラ.........その.........」

 オーランドがちょっと困った様な顔を向けて来る。私だってこんな話信じて貰えるとは思ってはいないが、魔術が有って幽霊は居ないなんて道理は無いじゃない。

「大丈夫。正気よ。それでね、その魔女はどうやらこの呪いを解きたいらしいの。恐らくだけど過去貴方の先祖の誰かの妻だった人なのかも。身体は崩れたけど魂はライラックに留めたと言っていたわ」
「.........いや、なら何故今現れるんだ。私は一度も見た事が無いぞ?」
「これも憶測だけど.........乙女にしか見えないんじゃないかと........乙女の味方だって言ってたから」
「乙女.........」
「.........そうよ」
「.........ああ、........うん、成る程」
「オッホン!でね、魔女の呪いを解く方法が有ると言うのよ。何だか.........時間がなくて集められなかった、と言っていたから、生前は間に合わなかったんでしょうね。ライラックに憑依しながら沢山集めたって言ってた」
「沢山?なんだろうな」
「形の無いものだって。魔女の呪いを解くには3つのモノが必要で、1つ目はその魔女が集めたモノ。2つ目は魔法陣。3つ目はアンデッド、つまり私らしいわ。何故今なのかと言う問いは恐らく私が居るから。壊れたアンデッドでは役に立たないそうよ?」
「............」

オーランドは眉間に皺を寄せ、顔をしかめている。

「私はその幽霊に魔法陣を書いて残したある本を探して欲しいと言われたの。どんな形かは判らないんだけど。内容は呪いの魔女の事を書いた日記なんだって」
「いつの時代なんだい?日記なんて探しようが無いじゃ無いか」
「それがね、どうやら簡略化されて物語風の絵本にされてるらしいの。彼女の親族が日記を絵本仕立てにして後世に残せる様にって作ったらしいわ」
「! アリエラ.........それ.......」
「そうよ、私はディラン様が探しに行ったあの絵本、それじゃないかと思うのよ。日記風だったかは覚えていないんだけど」
「まさか、そんな偶然.........」
「ライラックの魔女がね、集まって来ているんじゃないかって。そしてそれは、良いモノばかりじゃ無く.........悪いモノも」
「悪いモノ?」

「.................ピナーナの召喚した中の人。誰か気にならない?」

 オーランドは暫く固まっていた。

 そうだ。突然魔術が支える様になんて普通は出来ない。しかも魔力が半分になったとは言え、オーランドですら歯が立たないなんて。そんな強い何かをピナーナが簡単に召喚出来るとも思えない。つまり.........呪いを受けているオーランドの元に降りて来たと考えるのが私の推測だ。

 なので彼は狙われているのでは無いかと思う。
 あの街で戦った際にピナーナの中のモノが言っていた言葉がずっと脳裏に焼き付いている。私はライラックの魔女からその話を聞いた時、ゾッとしたのだ。全てが合致している気がして.........


「眼に魂を移して食べちゃった」
「やだ、忘れちゃったの?」
「綺麗なままで残してあげる」

「もう少ししたら入れ替われるんだけど」


 ピナーナの中のモノは.........

 もしかして呪いの根源なのではないかと。

兎に角何でも良いので情報を集めよう。あ、そうだ

「ねぇ、家系図なんてある?」
「ああ、有るよ。ちょっと待って」

 オーランドがソファから立ち上がり薄い皮張りの本を持って来る。中を開くと名前がギッシリ書いてあった。

「1番始め、つまり呪いを受けた宮廷魔術師はこの人だ。名前はシュリアスタオーリグ。大陸らしい名前だな」
「大陸の名前は何が違うの?」
「母と父の名前の間に本人の名前がある。つまり母は「シュリ」父は「オーリグ」本人は「アスタ」と言う名前だ。もし、片親しか判らない場合は母だけとか父だけ、とか。誰が誰の子か判るようになってる」
「そうなんだ。面白い!」
「これを見ているとかなり複雑でね。.........なんて言うか.........この2人は夫婦なのに叔父との間に子供が居たり、妻と義父との間に子供が居たりと.........真面じゃ無い時代も有る」
「それ、ライラックの魔女から聞いたわ。貴方はそんな事しないでよね」
「.........え?う、うん。勿論!ア、アリエラ......」
「あ、ほら見て?このアスタの所。没期不明って書いてある。子供は1人で男の子か。.................ん?え?男しか居ない!貴方の先祖は皆んな男よ!400年もの間1人も女の子が産まれてないわ.........」
「これも呪いだろうね」
「.........アンデッド妻を作り続ける.........呪い?」
「.........アリエラ.........済まない.........君を巻き込んで.........」

 そう言って悲しげな顔で俯くオーランド。馬鹿ね。今更.........もう良いわよ、とは言わない。そうやって沢山の女性が命を落とし、泣き、苦しめられて来たのだ。
でも、この元凶は何なのか.........知りたい。このアスタと言う魔術師に何があったのか。

 ふと、ライラックの魔女がオーランドは呪いを受けた過去の魔術師と生き写しだと言っていたのを思い出す。
 ライラックの魔女は何故アスタの顔を知っているのか。過去には彼の姿絵でもあったのかも知れない。
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