アンデッド・レシピ【正しい妻の作り方】〜呪われた夫に死んでから溺愛されました〜

平川

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第二幕

62.経過観察:同じ匂い

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 頬から耳に唇を擦らし、オーランドが耳元で甘く囁く。

「アリエラ.........ベッドに行くよ?」
「! や......ぁ...ダメ.........まだ.........」
「.........どうしても?」
「オ、オーランド!今は、お、お昼よ!」
「あ.........、忘れてた。でも良いよ別に」
「ヤダヤダヤダ~!宿で.........そ、そう!こんな場所でなんて。は、(恥ずかしいし)嫌よ。馬鹿にしないで!」
「.........そう.........そうだな、ちょっと強引だったね。急ぎ過ぎた。アリエラが可愛い事言うから箍が外れた。.........胸、気にしてたんだ、ふふ」
「!! オーランドの馬鹿ぁ!やっぱり嫌い!」

 私は急いで浴衣を正す。先が敏感になっていて触れるとピリッとした。カアッと再び顔に熱が。そして何故かオーランドが私の腰を抱く腕の力を強める。

「気にしないよ、そんな事。言ってるだろ?君の全部が好きなんだ。部分で好きになってる訳じゃ無い。アリエラならなんだって良いんだよ」

「っ......!」
 やめて~耳元で囁かないで~力抜けちゃうっ!

「もうちょっと君を味わいたいな」

 そう言って私の頬にキスをする彼。

 でも.........「もうダメ....」
 限界~っ!

「本当に?片方だけ?」
「ーーっ! 馬鹿!じゅ、充分でしょ?もう!着替えるわ」
「じゃあ、屋敷に帰ったらもう片方を頂くよ」
「ーーーっ!絶対あげないんだから!調子に乗り過ぎ!」

 私はオーランドの胸をグイッと押してサッと隙間から抜け出し、衝立の後ろに回り込む。

 脚がガクガク震えてる。身体が熱い。はぁ、と息を深く吐いた。座り込んでしまいそうだ。右の先がジンジンしてる。

 こんな.........の.........困る。


 *


 腕の中からアリエラが抜け出して衝立の裏に隠れてしまった。

「.................やってしまった」

 額に手を当て目を閉じる。

(始めはいつもの調子で悪戯程度で身体を触ろうとしただけだったのに.........いや、まあ、出来れば.........そうなれば良いなとは思ってはいたが。気付いたら.........貪ってた。あれだアレ。「お胸無くなっちゃったの」とか涙目で言われたら.........頭にそればかりグルグル回ってもうもうもう可愛い過ぎるだろうアリエラ!私は悪くない!君が悪い!いや、そうじゃないだろ私!!)

 オーランドは、はぁ、と息を深く吐いた。
 ツイッと指でお湯玉を頭の上に移動させ指先で突く。パシャンッと割れてドバッと頭から湯を被った。濡れた髪をかき上げながら独り言ちる。

「なんてな。本当、参る。新婚みたいだ.........いや、結婚する前みたいだな。まあ、変わらないか。6年間何も.........出来なかったし」

(でも、嫌がられ無かった?もしかしてアリエラは.........あんなに虐げて来た私を許してくれているのか?期待しても良いのかな?)

 いつも拒絶とまでは行かない態度。それは優しいアリエラの性格からなのかまだ判らない。一度逃げられているオーランドにとって次は決して間違えてはいけないのだ。慎重にならざるお得ない。様子を探りながら少しずつ慣らし、キスまで出来る様になった。出来れば期限の二月の間に無理矢理では無くお互いに求め合って第5段階を迎えたい。そうでなければきっとアリエラの心にまた傷を付けてしまう。.........なのに襲う様な真似をしてしまった。これ以上はいけない。

 チラッと衝立の方を見る。アリエラはまだ出て来ない。

「.........片付けるか」

 先程使っていた琥珀色の魔石と紺色の魔石を片方ずつ手に持ち土と石と水を分解しながら収めて行く。結局湯船に入り損ねた。まあ、それは構わない。本当はアリエラを胸に納めてゆったりするつもりだった。それが.........あの白い華奢な身体を抱きながらいつの間にか小さな膨らみを.........

「.................」

 オーランドは再び頭の上に水の玉を出し、ぶつぶつ唱えてから指先で突いた。パシャンッと弾けて全身に掛かるそれは、氷水だ。

「ーーーっ!くーっ~~~!!」

 カラコロと床に氷が転がる。

「はぁぁーーーっっ!目が覚めた。昼食を取ったら領に戻ろう。まだ何も終わってないしな.........」


 ****


 新しい暗いワインレッドのドレスワンピースに着替えて衝立から部屋を覗くと、既にお風呂は無くなっていてオーランドが白い新しいシャツを羽織っていた。

 おずおずと衝立から出ると彼が私に気付き
「髪乾かそうか」と言って来る。

「.........うん」
「あっという間に乾くよ。オイルも付けるね?櫛貸してくれる?」

 そう言ってまたぶつぶつ。多分魔術の詠唱なんだろうけど聞き取れない。

 フワリと風が吹き徐々に私とオーランドを包む。暖かい。一瞬下から上に吹き抜けた後、それは治った。彼が私に椅子に座る様に促す。

「どう?乾いてる?」
「.........ええ、凄いわ。オーランドは便利ね?」

 私は自分の髪に手櫛を入れる。本当に乾いてるわ。魔術凄い!

「君にしかしないよ。普段は私も濡れたまま放ったらかしだ。これからは一緒にお風呂に入る度に洗って乾かしてあげるからね?」
「入る度に貞操の危機に晒されるのは嫌だから遠慮しておきます」
「夫婦だよ?」
「.........まだちゃんと.........まだ、ダメ!」
「.................分かった。でも引かないから。君が好きだから。そして私だけを見て欲しいから。君の気持ちも大事にするから.........逃げないで」
「.........」

 オーランドは椅子に座る私を後ろから抱き締める。

 今の彼の匂いは.........私と同じだ。いつものライラックの香りでは無い。
 何だかそれだけで嬉しくてドキドキする。

 ああ.........オーランド。

 後一月、私頑張るわ!きっと一回り大きなお胸にしてみせる!私だって自信が欲しいのよ。貴方はキラキラ過ぎて

 貧相な自分が悲しくなってしまうんだもの!!


 .........言わないけどね。

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