シスターと機関銃

れいん

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第一章

白猫と子供達と刻印

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 あれから私はオーディンにご機嫌を取られ、少しだけ落ち着いたと思う。
 
 

 もう隣町の事が依頼になったので、オーディンの指示通りに帝国の宰相様(ファスアル公爵)にお会いしに行くのです。
 なぜ宰相様にお会いするかと言うと、隣町のカヴァナリアの情報収集と、そして私が御指名依頼でカヴァナリアへ向かう旨を報告にです。


 私がスターチスを不在にしてる間は、仲間が子供達のお世話と、教会への来訪者様の対応して下さるから安心よね。



 まだ夜明け前だし、スターチスの自室で少しだけ仮眠しましょう。寝不足で王城へ向かいたくないので。



 私はオーディンに微笑を浮かべて、最上級の礼をした。


 「御依頼を承りました。では私は失礼致します。」



 《くれぐれも無理だけはしない様に。そして気を付けて行って来るんですよ。》


 
 そう心配そうにオーディンが私に声を掛けた。
 いつも御指名依頼を受けて祭壇の間を出る前に、オーディンはそう心配してくれる。


 「必ずブルーローズに恥じる事のない様に、最善の結果をこの手に掴んで参ります!!」


 そう返事をした。


 私は祭壇の間から出て、ブルーローズからスターチスへ戻った。
 軽くシャワー浴びて寝衣を着て、ベッドへ倒れ込む様に横になる。
 
 あれ!?何か忘れてる気がするけれど…大丈夫よね?
 思い出せないから眠りましょう。



 何やらモフモフとした物が頬に当たる気がしたのではなく、実際に真っ白な長い尻尾が頬をくすぐっていた。
 そんなイタズラを誰がしたのか分かっているのです。
 もう少し眠っていたいけれど、仕方なく瞳を開けた。



 『ディア、ディア起きた?昨日、オーディンの所に置いて行ったの覚えてる?』



 神々しいくらいの真っ白な長い毛で、金色の眼の猫が話し掛けてきた。大型の犬より、小さいが普通の猫に比べたら有り得ない大きさだ。




 そんな真っ白な猫が凄く不機嫌な様子で、私に文句を言っている。
 これは…ご機嫌斜めだなって分かる。



 「フェリスお早う。そして今日も素敵な毛並みもだけど、神々しい真っ白な長い毛だし、それにキラキラ輝く金色の眼も素敵よ!!」



 『ご機嫌取りみたいにお世辞言われてるの分かってるんだから!!』




 拗ねた様にツンと横を向かれたので正直に謝る事にした。
 そう今更だけど、この真っ白な猫の名前はフェリス。神々しい程の真っ白な長い毛に、キラキラと宝石の様な金色の眼の猫。



 その神々しい真っ白の毛が誘惑してる様に感じるが、今は我慢しないと…




 「フェリスを置いて帰って本当に申し訳なかったわ。ごめんなさい。」



 『ディアって酷いんだから…』



 まだフェリスは拗ねてるみたい。
 こっちを向いてくれないから、まだまだ拗ねてるって分かるのよね。




 「ねぇ、フェリス許して欲しいわ。こっち向いてくれないと寂しいし、悲しくなるもの…」


 私が困った様に上目遣いで言うと、やっとフェリスの金色の眼がこちらを見た。



 『仕方ないなぁ…許してあげる。本当にディアってズルイよね』
 


 そうフェリスに言われたのだ。
 私はキョトンとした眼でフェリスを見つめた。
 私の何がズルイのか分からないのですから。


 アリディアーナからしたら、フェリスの可愛らしく拗ねた感じの方がズルイ気がするのです。
 フェリスの方があざといのだと、アリディアーナは思っていた。



 フェリスからしたらアリディアーナの上目遣いでの懇願が、凄くあざといって思っていた。
 アリディアーナの上目遣いは、美人系と可愛い系の両方があるのだから。



 そんな事をお互いに思ってる事なんて、知らないままだった。



 そっとフェリスを両腕で抱きしめて、首の所に顔を埋めた。いつもと同じ様にモフモフしてて気持ちが良いわ。



 そんな私をフェリスの尻尾があやす様にして、モフモフと頭を撫でてくれた。
 暫くフェリスとそうしていてから、私は顔を洗って着替えた。トゥニカの上にスカプラリオ、ウィンプルを身につけた。
 子供達の様子を見に、子供達が居る部屋へ向かう。


 照明の魔道具の灯りが照らす廊下を、私とフェリスが歩いていた。



 『宰相に会い王城へ向かうんだよね?』



 「今日、子供達に朝食を食べてもらってから、王城へ向かう予定になってるわ。」



 『宰相の所か…ディアを盗られないか心配だな…』



 「…帝国の宰相様なのだから、それは……ないと思いたいわ。(いやアリディアーナの願望なのだ)それ以前に宰相様にお会いするのが不安でしかないのよね…」



 盗られるって何事!?
 私は物じゃないのよ⁇って言いたい所だけれど、フェリスの言いたい事が分かるのです。溜め息が出そう…。



 ファスアル公爵を「お父様」って呼ばないのには、本当に色々とあるのです。



 そしてシスターの見た目では、王城に行けないので、ファスアル公爵家へ行き着替えてからだわ。
 今からドレスを着る事と、その為のコルセットに憂鬱になるけど…。



 色々とフェリスとお話ししてる内に、子供達の部屋に着いた。
 ノックをしてみたが返事がないので、そっと扉を開けて中を覗く。



 お2人とも疲れてるからか、良く眠って居る。
 そっと室内へ入って少年と少女の寝顔を見つめた。そして頭を撫でる。


 もうこの子達に悲しく、辛い思いなんてさせないと強く決意した。確か少年がウル。少女がヴェル。



 ウルは…決闘の神だったと思う。
 そしてヴェルが詮索の意味の名の女神。



 まだ覚醒してない様子なのだし、普通の子供として接しましょう。フェリスが側に寄って来て、軽く裾を引っ張る。



 フェリスが時間を心配してるので、そろそろ朝食の準備をしましょう。
 今日は子供達の為に具沢山のキッシュ、野菜のスープ、パンにしましょう。



 子供達の居る部屋を出て、フェリスと私は厨房へ行って調理を始めた。
 オークのお肉があったよなぁ…って思って、インベントリからじゃなくて冷蔵庫から出した。
 オークのお肉を一口大にして、塩胡椒で下味をつけて、串に一口大のオーク肉を刺しオーブンへ入れて焼く。



 人参と玉ねぎ、じゃが芋を切って、ベーコンと一緒に鍋へ入れる。それを軽く炒めてから、水とトマトを切ったのを後から入れた。塩と胡椒で味付けをして出来た。



 トマトと玉ねぎ、じゃが芋とキノコなどを切って、炒めてバターを塗ったフライパンに入れ、混ぜた卵を入れる。暫くしてからチーズをのせて、弱火で焼いていく。


 トマトを炒めて潰して塩と胡椒を入れ、トマトソースを作った。
 これで朝食の出来上がり。オーク肉のオーブン焼きも焼き上がったので盛り付けていく。



 我慢出来なかったのか、フェリスがツンツンと前足で突っついて居るので、オーク肉のオーブン焼きを差し出した。
 すると嬉しそうに齧り付いている。


 『美味しい!!もっと欲しい!!』


 アリディアーナはフェリスの為のオーク肉のオーブン焼きは、大きな肉の塊でだったのだけど…
 食欲旺盛でペロリと平らげてる。


 フェリスに先程より大きな肉塊(フェリスの顔くらい)のオーブン焼きを差し出して、私は子供達の為に皿に盛った料理をテーブルへ並べた。



 フェリスは大きな肉塊を食べて満腹になったのだろう。
 ソファで満足そうに毛繕いを始めた。



 私は子供達を起こしに向かう。
 子供達が寝ている部屋にノックしてから入り、子供達を軽く揺すって起こす。


 「お2人とも、そろそろ起きましょう。着替えを持ってきましたよ。」



 眠そうに目を擦りながら、お2人が起き上がった。




 「もう…朝なの?」


 「まだ少し眠い…」



 そう小さく言ってたので可愛いなって思って見ていた。
 すると目を擦ってたのに、急に部屋を見渡して思い出したのだろう。



 「すいません。寝坊してしまって」


 「起きるの遅かったですよね?」



 と慌てて謝ってくるので、大丈夫と返事をして落ち着く様に、子供達の頭を撫でた。



 「気にしなくて大丈夫よ。後、お2人のお名前を教えて下さいますか?」



 「私はヴェルディです」


 「僕はウルウェルって言います」


 
 「ヴェルディとウルウェルね。私の名前はアリディアーナです。お2人ともお顔を洗って、こちらに着替えて下さいね。」


 男の子の洋服と、女の子の洋服を手渡す。
 

 「ヴェルディは、こちらの部屋で着替えて下さいね。


 ウルウェルは、こちらで着替えて下さい。お顔を洗う場所は、この部屋から出て廊下を歩いて直ぐに、お手洗いと洗面所があるわ。」



 そう声を掛けて、私は子供達が支度が終わるのを待っていた。
 ヴェルディとウルウェルが支度が終わり、私の元へ来るまで子供達が眠っていた部屋のベッドメイキングを終えた。



 そしてベッドの近くにあるソファに座って、自分の左手の甲にある鮮やかなブルーローズとブラックローズ。薔薇の花と蔓の刻印が描かれてるのを撫でた。右手の甲にはダリアとステラマリスの花。
 刻印が多くある自分の身体を見ていた。



 するとヴェルディが戻って来た。


 「アリディアーナ様、挨拶が遅いですが…お早うございます。」



 「ヴェルディお早うございます。良く眠れましたか?」


 「寝衣と寝る場所を提供して下さったので良く眠れました。」


 そう笑顔で返事があり、ホッとしました。


 「それなら良かったわ。こちらに来てヴェルディ」
 

 そう呼んでヴェルディをソファへ座らせ、ヴェルディの髪の毛を編み込んだ。
 ヴェルディの髪の毛を結い終わってから、ウルウェルが支度を終えて来た。



 「遅くなりすいません。お早うございます。そして支度が終わりました」
 


 「支度が終わったわね。それでは朝食へ行きましょう。」


 「「はい!!って朝食まで良いんですか!?」」



 そう聞いてきた子供達に笑顔で答える。



 「気にしなくて大丈夫ですよ。沢山食べて下さい。」



 3人で廊下を歩き食堂へ向かう。
 その時にヴェルディがソワソワとしていた。



 「どうかしましたか?ヴェルディ?」



 「あの……アリディアーナ様に質問ですが…」



 「なんですか?」



 そう返事をするも、なかなかヴェルディは質問をして来ない。
 不思議に思い首を傾げて、ヴェルディを見つめた。



 「えっと…アリディアーナ様の手なのですが…」


 「私の手ですか?」


 「私とウルウェルを撫でてくれた後、体の傷とか痛みが消えたんです。」



 「それは私の手から治癒の為に、魔力が出たからですね。」



 そう返事をすると一緒に歩いていたウルウェルが問い掛けてきた。



 「僕からも質問になるんですが…宜しいですか?」



 ウルウェルが緊張しながら声を掛けてきた。
 一体どうしたのだろう?



 「なんでしょう?」



 「アリディアーナ様の両手の甲の模様って素敵ですが、どうしてタトゥー?みたいなのがあるんですか?」



 「あっ!!私も気になってたの!!私達を撫でてた時にタトゥーが光ってたから」


 
 はい。難しい質問が来ましたよ~。
 さて…どう説明した方が良いのでしょう?


 
 普通のシスターにタトゥーなんて入ってないですよ?
 見えない所にタトゥー入れてるシスターって居ますか?



 「まず…この両手の甲はタトゥーでは有りません。刻印って言ったら良いですか。この刻印が入っているので、色々と」

 

 「「刻印!?」」



 「治癒魔法の時に光ったのは、私が治癒魔法を使ったから刻印が光ったのです。」




 「そうなんですね。それにアリディアーナ様からお花の匂いがします。」



 「それも刻印があるからですね。」



 困ったけれど本当の事を答えた。
 まさか刻印が光るのを見られてたなんて思ってもなかったわ。



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