付く枝と見つ

羽上帆樽

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第18部 i

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 家の前の道路でコーヒーを飲んだ。簡易の座敷を用意し、その上に二人並んで座る。コーヒーを飲むというのに、姿勢は正座で、礼儀正しい。

 カップを持つとき、指をどのくらいの角度で、どのくらいの力で、どのくらいの速度で、リングに差し込むのか、ということで迷うことがシロップにはある。リングの縁に触れてしまうと、電気が流れるのだ。

 恐る恐る指を差し込むと、リングに触れてもいないのに、季節柄か、静電気が作用して、結局電気が流れてしまった。

 感電はしない。

 充電される。

「コーヒーって、嗜好品らしいよ」結局普通にリングに指を引っかけてそれを飲み、シロップは言った。「なんだか失礼な気がするな」

「私も、嗜好品だから」ルンルンが応じる。「容易く声かけてくれちゃ、嫌よ」

「人生って、全部嗜好品な気がする。しなくちゃいけないことなんて、ないんじゃないかな。本当は全部自分で選んでやっているんだろうな。それを、誰かに縛られていると思い込むことで、自分を可哀相な奴だと思って、可愛がってあげたいんだろう」

「私って、嗜好品だから」ルンルンが話す。「気安く声かけてくれちゃ、蚊帳よ」

 座っている場所は、いつの間にか荒野になっていた。水分が蒸発しきった大地が、遙か向こうまで続いている。風が吹くと、砂埃が舞って目に染みた。コーヒーの表面にも細かい汚れが浮かんでいる。

 シロップはなんだか泣けてきた。

 自分って、どうして生きているのだろう、と思う。

 ふと手もとを見ると、いつの間にか携帯電話を握っている。その表面にデスクの画像が表示されていた。

「もう、行かないと」そう言って、彼女は立ち上がる。

「また来てよ、近い内に」ルンルンが言った。「舞ってるから」

「サンバ?」

「彼によろしくう」

 シロップは立ち上がり、座敷の外に出る。指を鳴らすと、たちまちパトカーが飛来してきた。時空のパトロールを行う警察のようだ。

 車の扉が、地面に対して、平行ではなく、垂直に開く。どうでも良いところで機能的なようだ。まるで警察という組織を体現しているように思えた。

「お嬢さん、どちらまで?」

 扉の先に、葉巻を咥えたポリスマンが座っていた。両手に白い手袋を嵌めている。片手でハンドルを握り、もう片方の手で缶コーヒーを持っていた。

「すぐ、そこまで」助手席に乗り込んで、シロップはシートベルトをかける。「彼が待っているの」

「ひゅう、お熱いことで」

 パトカーは、珍しく、左ハンドルだった。
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