25 / 50
第25部 jo
しおりを挟む
上半身はフード付きのブレーカー、下半身は黒いスパッツ、両手に薄手のグローブを嵌めて、シロップは走りに出かけた。玄関の前で靴紐を結び、軽く準備運動をしてから走り始める。
曇っているせいで、太陽がもう昇っているのかまだ昇っていないのか、分からなかった。全体的にどんよりとしている。どんよりしているのは恐らく自分がだろう、とシロップは考えたが、それ以上思考を発展させるのは控えた。
吐き出す息が白く染まる。
走ることで得られるものとは、何だろう? むしろ、エネルギーや時間を失う気がする。けれど、それでも、人は走りたくなるものだ。走るというのはもちろん比喩で、必ずしも物理的な移動を意味しない。
どこかの企業に就職するというのは、誰かに走らせてもらうということだ。自分で走るのではない。英語を勉強したことがあるから、なんとなくそんなふうに考えた。人に走らせてもらうのと、自分で走るのでは、前者の方が簡単に決まっている。しかし、その分面白みが薄れる。そして、面白みを求めようとすると、必然的に生命を危険に晒すことになる。面白みというのは、リスクがなければ生じない。成功するか否か分からないから面白いのだ。始めから成功すると分かっているのであれば、やる必要がない。成功とともに得られる感覚を想像で充分に補うことができる。
もしかすると、自分は想像力が優れているから、毎日が面白くないのかもしれない、と考えたことがあった。しかし、だから何だというのかというのが、シロップが得た結論だった。それでも、自分は毎日生きていかなければならないのだ。面白くない毎日を。
もちろん、死ぬこともできる。
けれど、ルンルンと同じで、自分も、死とは縁がないかもしれない。
それでは、この先、どうやって生きていけば良いのだろう?
出現したマンホールを、なんとなく次々に飛び越して走っていく。飛ぶ前は飛べるか分からないのに、足が地面から離れた瞬間には飛べると確信できるから凄い。少し先の未来を先取りしているようだ。
そうか、遠い未来まで想像するからいけないのかもしれない。人が行き着く先は決まり切っている。それが死だ。しかし、それについて考えるのは、今いる位置とゴールとの間に存在する数々の詳細を省いて、結果だけを得ることといえる。生きるというのは、死に向かって歩むことではないはずだ。
しかし、自分が死んだあとは、どうなるのだろう?
普通に考えれば、自分が死んでも、世界は存続するはず。
世界のゴールとは、何か? どこか?
赤信号。
シロップは一度立ち止まり、散漫になりつつあった思考と、息を整えた。
曇っているせいで、太陽がもう昇っているのかまだ昇っていないのか、分からなかった。全体的にどんよりとしている。どんよりしているのは恐らく自分がだろう、とシロップは考えたが、それ以上思考を発展させるのは控えた。
吐き出す息が白く染まる。
走ることで得られるものとは、何だろう? むしろ、エネルギーや時間を失う気がする。けれど、それでも、人は走りたくなるものだ。走るというのはもちろん比喩で、必ずしも物理的な移動を意味しない。
どこかの企業に就職するというのは、誰かに走らせてもらうということだ。自分で走るのではない。英語を勉強したことがあるから、なんとなくそんなふうに考えた。人に走らせてもらうのと、自分で走るのでは、前者の方が簡単に決まっている。しかし、その分面白みが薄れる。そして、面白みを求めようとすると、必然的に生命を危険に晒すことになる。面白みというのは、リスクがなければ生じない。成功するか否か分からないから面白いのだ。始めから成功すると分かっているのであれば、やる必要がない。成功とともに得られる感覚を想像で充分に補うことができる。
もしかすると、自分は想像力が優れているから、毎日が面白くないのかもしれない、と考えたことがあった。しかし、だから何だというのかというのが、シロップが得た結論だった。それでも、自分は毎日生きていかなければならないのだ。面白くない毎日を。
もちろん、死ぬこともできる。
けれど、ルンルンと同じで、自分も、死とは縁がないかもしれない。
それでは、この先、どうやって生きていけば良いのだろう?
出現したマンホールを、なんとなく次々に飛び越して走っていく。飛ぶ前は飛べるか分からないのに、足が地面から離れた瞬間には飛べると確信できるから凄い。少し先の未来を先取りしているようだ。
そうか、遠い未来まで想像するからいけないのかもしれない。人が行き着く先は決まり切っている。それが死だ。しかし、それについて考えるのは、今いる位置とゴールとの間に存在する数々の詳細を省いて、結果だけを得ることといえる。生きるというのは、死に向かって歩むことではないはずだ。
しかし、自分が死んだあとは、どうなるのだろう?
普通に考えれば、自分が死んでも、世界は存続するはず。
世界のゴールとは、何か? どこか?
赤信号。
シロップは一度立ち止まり、散漫になりつつあった思考と、息を整えた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる