付く枝と見つ

彼方灯火

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第24部 ke

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 結局のところ、毎日は繰り返しなのだと、シロップは思う。起きて、食べて、風呂に入って、眠って、の繰り返し。つまり、悩もうが、楽しもうが、関係がない。悩んでいても、楽しんでいても、その悩む時間や楽しむ時間は必ず過ぎ去って、次へ移行していく。それは、最早悩むのと楽しむのが中和されてゼロになるというよりも、そもそも最初からゼロだと捉える方が正しい。ゼロという色の中で、自分たちは生きているのだ。

「起きなきゃいけないってこと?」と、目を開ける前にシロップは言った。

「ソウイウコトデス」と机から声。

 はだけていた毛布をもう一度身体にかけ直して、シロップは寝返りを打つ。しかし、一度目覚めてしまっては、もう眠る気になどなれなかった。というのは嘘で、眠ろうと思えばいくらでも眠れる気がする。ただ、眠るというのも、何もしないということではなく、それも立派な行動であって、つまりは、眠るという行動をしているのであって、その行動の結果は後々必ずやって来る。

「ううう」と唸り声を上げながら、シロップは起き上がる。「頭、痛い」

「フツカヨイデスカ?」

「五日酔いです」そう言って、シロップは額を押さえる。「だいたい、身体が弱いんだ、私って」

「ダイタイトイウノハ、テイドガ、トイウイミデスカ?」

「ココア飲んだからかな」

「コーヒーガヨロシイデスカ?」

「早く、入れてきてよ!」

 シロップがそう叫ぶと、デスクの中からたちまちカップが出現した。そして、その底の方から体積を増しながら液体が湧き出てくる。

「ハイ、ドウゾ」

 デスクからカップを受け取って、シロップはコーヒーを飲む。受け取ると言っても、デスクには、少なくとも、今のところは腕はないので、差し出されたものを掴んだのではない。

「毎日の繰り返しというのは、つまり、運動なんだな」とシロップは言った。コーヒーを飲みながらだったから、実際には、「“毎”“日”“の”“繰”“り”“返”“し”“と”“い”“う”“の”“は”“、”“つ”“ま”“り”“、”“運”“動”“な”“ん”“だ”“な”」という感じだった。「運動しなければ、生きていけないのだ」

「ウンドウスルノデスカ?」

「してこよう」そう言って、シロップは寝間着を抜ぐ。「走るのだ」
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