舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第1章

第5話 朝

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 二十分ほどバスに乗り続けて、終点で月夜は車外に出た。目の前にはバスロータリーが広がり、その向こうに駅がある。駅は今は改装作業中で、所々に鉄骨が組まれていたり、カバーがかけられていたりして、全体像が見えない。

 駅の高架下を通って、その向こうの裏道を歩く。こちら側から学校にアクセスする場合、この高架下を抜けるか、もう少し先の踏切を渡るかのどちらかを選択しなくてはならないが、月夜はこちらの手段を選んでいた。

 朝の空気に包まれた道を進む。左手には疎らに家が並び、暫く行くと大学の校舎が見えてくる。その反対側に踏切。今もかんかんと音を上げながら赤いランプを点滅させて、電車が通り過ぎるのを警告している。この辺りを通る電車は基本的に車体が赤い。ときどき、青や黄色、それに白いものが通ることもあるが、それらはごく少数しか存在しないので、見られればラッキーという扱いになっている。

 大学の入り口を通り過ぎて、さらに進むと月夜が通う高校へと辿り着く。大学と隣接していることから、それに関連したカリキュラムが組まれることもあるらしい。

 門を潜ったタイミングで、正面にある時計で時刻を確認すると、ちょうど午前七時を過ぎた頃だった。この時間に登校するのは、部活動に所属している者がほとんどだ。けれど、教室に入れないわけではないから、月夜は今後もこのくらいには学校に来よう、と考えていた。

 早く来ることに理由はない。

 それが彼女のスタンスだという話に終始する。

 学校の昇降口は年柄年中ひんやりとしていて、どこか陰気な印象を受ける。ロッカータイプの下駄箱の扉を開いて、月夜は外履きから上履きに履き替えた。ついでに同じ場所に収納されている教科書を取り出して、両手で抱えたまま教室へと向かう。左右に伸びる廊下を右に曲がり、階段を下りれば彼女が所属するクラスの教室だった。

 扉を開ける。

 もちろん、誰もいない。

 誰もいない教室を、月夜は真っ直ぐ進んで自分の席に着く。目の前に黒板。その前に教壇。そして規則的に整列された机たち、椅子たち。頭の上に浮かぶ蛍光灯は今は光を宿していない。照明は日中も点いているが、月夜は今は点けなかった。自分一人のために電気を使うなんて、あまりにもエネルギーの無駄だ、と思ったからだ。

 高校の授業はどんな感じだろう、となんとなく想像。

 きっと、中学のものと、あまり変わらないだろう。

 昨日のガイダンスも、今までと何ら変わらない内容だったし……。 
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