22 / 255
第3章
第22話 外部通信
しおりを挟む
ソファに腰かけて、真昼はコーヒーを飲んでいる。月夜はその隣に座って、彼をじっと見つめていた。彼女の鋭利な瞳で見られても、真昼はまったく動じない。まるでこれから謎解きを始める探偵のように、いたって安定した落ち着きを維持している。
フィルは月夜の足もとをうろちょろしていた。彼も真昼のことは知っている。ただ、月夜は二人の関係がどの程度なのか知らない。それなりに気が合いそうではあるが、仲良く話しているところは見たことがなかった。
「最近は、どうだった?」
持っていたカップを目の前の机に戻して、真昼が月夜に問うた。
「どうって、何が?」
「何も不思議なことは起こらなかった?」
「不思議なこと?」
「あっとびっくりするような、仰天驚きな出来事」
「びっくり仰天するような、あっと驚く出来事、じゃなくて?」
「そういうの、なかった?」
「高校に入学した」月夜は簡潔に述べた。「中学とあまり変わらなくて、多少驚いた」
月夜の返答を聞いて、真昼はけたけたと笑った。彼は見た目がどこか貧弱そうで、節々の繋がりが弱い作り物の人形のような動きをする。
「それは、ビッグニュースだね。受験、頑張ったのかな? お疲れ様」
「特に頑張ってはいないし、疲れてもいない」
「ま、そうだろうけど」
真昼はソファから立ち上がり、月夜の部屋の中を歩き始める。とはいっても、彼女は一人暮らしだし、歩き回って新しい発見ができるほど、部屋の中は広くない。
月夜には、真昼が今どういう生活をしているのか、推測することができなかった。同い年くらいには見えるが、彼が自分と同じように高校に通っているのかすら分からない。そして、彼に家族がいるのかも不明だった。真昼は、世紀という単位が千年に一度訪れるかのように、あるタイミングで突然彼女の前に姿を現す。でも、本当にいきなり現れるのではなく、ときどき携帯電話にメッセージを送ってくれた。
「暫く、ここにいさせてよ」部屋の中央で振り返って、真昼が言った。「まだ、少し寒いから」
「外で過ごしているの?」
「いや、うーん、なんて言ったらいいかなあ……。うん、僕はね、そういうのの適用範囲外にいるからさ」
「適用範囲外?」
「ま、お察しの通り、ということで」
暫く考えてみたが、月夜は何も察することができなかった。そして、察すると、考えるというのは、果たして同じだろうか、と疑問に思った。
フィルは月夜の足もとをうろちょろしていた。彼も真昼のことは知っている。ただ、月夜は二人の関係がどの程度なのか知らない。それなりに気が合いそうではあるが、仲良く話しているところは見たことがなかった。
「最近は、どうだった?」
持っていたカップを目の前の机に戻して、真昼が月夜に問うた。
「どうって、何が?」
「何も不思議なことは起こらなかった?」
「不思議なこと?」
「あっとびっくりするような、仰天驚きな出来事」
「びっくり仰天するような、あっと驚く出来事、じゃなくて?」
「そういうの、なかった?」
「高校に入学した」月夜は簡潔に述べた。「中学とあまり変わらなくて、多少驚いた」
月夜の返答を聞いて、真昼はけたけたと笑った。彼は見た目がどこか貧弱そうで、節々の繋がりが弱い作り物の人形のような動きをする。
「それは、ビッグニュースだね。受験、頑張ったのかな? お疲れ様」
「特に頑張ってはいないし、疲れてもいない」
「ま、そうだろうけど」
真昼はソファから立ち上がり、月夜の部屋の中を歩き始める。とはいっても、彼女は一人暮らしだし、歩き回って新しい発見ができるほど、部屋の中は広くない。
月夜には、真昼が今どういう生活をしているのか、推測することができなかった。同い年くらいには見えるが、彼が自分と同じように高校に通っているのかすら分からない。そして、彼に家族がいるのかも不明だった。真昼は、世紀という単位が千年に一度訪れるかのように、あるタイミングで突然彼女の前に姿を現す。でも、本当にいきなり現れるのではなく、ときどき携帯電話にメッセージを送ってくれた。
「暫く、ここにいさせてよ」部屋の中央で振り返って、真昼が言った。「まだ、少し寒いから」
「外で過ごしているの?」
「いや、うーん、なんて言ったらいいかなあ……。うん、僕はね、そういうのの適用範囲外にいるからさ」
「適用範囲外?」
「ま、お察しの通り、ということで」
暫く考えてみたが、月夜は何も察することができなかった。そして、察すると、考えるというのは、果たして同じだろうか、と疑問に思った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる