舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第3章

第27話 登山ごっこ手前

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 足もとに転がる小枝。それを拾い上げ、人差し指と親指で挟んで、くるくると半回転させるのを繰り返す。一回転させるのは難しい。二本の指をねじれさせることができれば、もう少し上手くいくかもしれない。

「もう、歩けない?」

 先を行く真昼が振り返り、月夜に声をかける。彼女は顔を上げて首を振った。

「まだ、そんなに疲れていない」

 グラウンドの向こう側にある斜面を、二人で登っていた。二人で、というと、二人で協力して、といった意味合いにも受け取れるが、別に何の協力もしていない。言い換えるなら、二人揃って、といった方が正確だ。しかし、揃うためには二人以上いなくてはならないのだから、初めから、揃って、といえば良かったかもしれない。

「この辺りには、たしか、奇妙な実ができる木が生えているんだ」歩きながら真昼が説明した。「赤くて、小さな実。興味本位で食べてみたことがあるけど、なんだか変な味だったなあ……。甘すぎず、酸っぱすぎず。食感も、柔らかすぎず、硬すぎずという感じで、どっちつかずな感じだった。債務不履行というか」

「また、食べたい?」月夜はなんとなく質問する。

「うーん、ま、食べなと言われたら、食べるかもね」

「じゃあ、食べな?」

「この季節に成っているかは、分からないよ」

 斜面を登りきると、目の前に柵が現れた。柵といっても、二本の鉄の棒を伴っただけの、いたって簡単なものだ。境界を示すくらいの機能しかない。そして、その一部に開けている部分があって、そこから先に進めるようになっていた。立入禁止のために建てたものではないらしい。

 抜けた先は、公園と同じくらいの広さがある芝生の地面で、点々と古ぼけた木が立ちっぱなしになっていた。灰色で、枝が少なく、幹の途中に大きな穴が開いていたりする。

 この場所が何のために残されているのか、月夜には分からなかった。土地としてはかなり広いから、住宅を建てようと思えば建てられなくもないだろう。今はそれほどの人口ではないということかもしれない。

 芝生の終着まで行けば、今度は山へ繋がる入り口が現れる。入り口といっても、明確なものではなく、枝葉に囲まれてトンネルみたいになっているため、それらを掻き分けない限り見つけるのは難しい。

 今は山には登らずに、この芝生の範囲内にいることにした。

 真昼は、ふらふらと歩いて、それから、勢いを失って背中から地面に倒れた。

「大丈夫?」そんな真昼を、月夜は上から覗き込む。

「自然に還る感じ」
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