舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第3章

第30話 単一的な存在の仕方は可能か?

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 そのまま探索を続けても良かったが、段々と疲れてきたので、二人は家に帰ることにした。疲れてきたからというのを理由にしたのは真昼の方だ。月夜は特に疲れていなかった。普通に、移動した、という感じがするだけだ。

 家に戻ってきてから、月夜は真昼のためにオムライスを作った。月夜自身は食べないので、あくまで彼一人分だ。真昼がどのような食生活をしているのか、月夜はほとんど知らない。食生活、という言葉は少々下品な感じがするが、どうだろう、と彼女は料理をしながら考える。

 月夜は、自分の料理の技能に関して、上手だとも、下手だとも思っていなかった。自分の技能についてそういう観点からは評価しない。とりあえず、作れれば良いだろうと思っているから、もしかすると下手な部類に属するかもしれない。かもしれないというのは可能性を示唆しているわけだから、下手だと言っているのではない。ときどき、そういうわけの分からない誤解をされて、望まない反感を買うことがあるから困ってしまう(特に困らないが)。

 オムライスは無難な感じにできて、真昼も無難な感じで食べてくれた。「ああ、うん、美味しいね」というのが彼の感想で、彼自身の認識を向上させるわけでもないのに、語尾に「ね」がつけられたことに少々違和感を覚えたが、何だか不思議な感じがして良い表現だと月夜は思った。

「僕の存在理由について、話しておかないといけない」

 オムライスを食べていると、唐突に真昼がそんなことを呟いた。彼は一時的に空になっている銀色のスプーンを、まるでタクトのように振りながら話す。

「存在理由なんて、ないと思うけど」月夜は率直な意見を述べた。

「一般的にはそうだろうけど、僕の場合は少々都合が異なるんだ」真昼は話を続ける。「僕は一度なきものとして扱われた。しかし、対になるものは、必ず、そのもう一方と同時に存在しなくてはならないというルールがあるから、本当になきものにすることはできなかった。右を捨てて、左だけ使うのができないのと同じだよ。右を捨てたって、それは左なんだから。そういうわけで、僕はもう一度呼び戻されることになった。呼び戻されて、きちんと自分の役目を果たせと言われたのさ」

 真昼の言葉の意味を、月夜は数秒間黙って考えた。

 分かったような、分からないような感覚だった。だから、彼女は思ったことを素直に口にした。

「分かったような、分からないような気がする」
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