33 / 255
第4章
第33話 若干unusual
しおりを挟む
月夜の休日はいたって簡単だ。起きて、勉強して、あとの時間は大抵読書をしている。それ以外にはほとんど何もしない。読書も、それが何かのためになる、と思ってやっているわけではない。極端に言えば自己満足にすぎない。社会のためになるわけでも、自分の将来のためになるわけでもないが、とりあえず、読もうと思った本を読む。これほど贅沢なことはないのではないかというのが、月夜の今のところの認識だった。
「うん、そうだね。いいね、そういうの」
そんなことを話して聞かせると、真昼も共感してくれたみたいだった。けれど、月夜としては、共感されるのはもちろん嬉しいが、できるなら別の意見を聞きたい、とも思っていた。他者が存在する、所謂意味というものは、そういうところに表れるのではないかという気がするのだ。何の根拠もないただの発想だったが、そちらの方に答えがあるように、少なくとも彼女には思えた。
ソファの上で、隣に真昼が座っている。少し前と同じ格好だ。互いにそのポーズに飽きることはない。真昼は何をするわけでもなく、月夜の隣でじっとしている。いや、ふらふらしているといった方が正しいか。身体は常に色々な方向に揺れているし、何も掴んでいないのに、指は計算機を叩くみたいに複雑に蠢いている。
一人で綾取りでもするかと思ったが、真昼はそれをしなかった。彼にとって、綾取りは他者に見せるためのものであり、他者と一緒にやるものなのかもしれない。ときどき、コーヒーを飲むという行為についても、そういう属性を適用している者がいる。「一緒に食べよう」というフレーズも度々耳にするが、身体構造がリンクしているわけではない以上、一方が食べたものが、他方の腹の中に入ることはない。つまり、この発言は「二人で同じ行為をしよう」と言っているという解釈になる。
一緒に同じ行動をするのは、人間に備わった特質なのか、それとも、もっと幅広く、生物一般に備わった性質なのか、どちらだろうか。そもそも、人間をとりたてて扱いたがるのは、当然人間だけでしかない。そうすると後者だと考えるのが妥当だろうか。
「本を読みながら、色々と別のことも考えて、月夜もそれなりに忙しいね」
隣から真昼の声が聞こえて、月夜はそちらを見る。
「うん」
簡潔に答えて、彼女はそれから少し笑ってみた。
「うん、そうだね。いいね、そういうの」
そんなことを話して聞かせると、真昼も共感してくれたみたいだった。けれど、月夜としては、共感されるのはもちろん嬉しいが、できるなら別の意見を聞きたい、とも思っていた。他者が存在する、所謂意味というものは、そういうところに表れるのではないかという気がするのだ。何の根拠もないただの発想だったが、そちらの方に答えがあるように、少なくとも彼女には思えた。
ソファの上で、隣に真昼が座っている。少し前と同じ格好だ。互いにそのポーズに飽きることはない。真昼は何をするわけでもなく、月夜の隣でじっとしている。いや、ふらふらしているといった方が正しいか。身体は常に色々な方向に揺れているし、何も掴んでいないのに、指は計算機を叩くみたいに複雑に蠢いている。
一人で綾取りでもするかと思ったが、真昼はそれをしなかった。彼にとって、綾取りは他者に見せるためのものであり、他者と一緒にやるものなのかもしれない。ときどき、コーヒーを飲むという行為についても、そういう属性を適用している者がいる。「一緒に食べよう」というフレーズも度々耳にするが、身体構造がリンクしているわけではない以上、一方が食べたものが、他方の腹の中に入ることはない。つまり、この発言は「二人で同じ行為をしよう」と言っているという解釈になる。
一緒に同じ行動をするのは、人間に備わった特質なのか、それとも、もっと幅広く、生物一般に備わった性質なのか、どちらだろうか。そもそも、人間をとりたてて扱いたがるのは、当然人間だけでしかない。そうすると後者だと考えるのが妥当だろうか。
「本を読みながら、色々と別のことも考えて、月夜もそれなりに忙しいね」
隣から真昼の声が聞こえて、月夜はそちらを見る。
「うん」
簡潔に答えて、彼女はそれから少し笑ってみた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる