舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第5章

第42話 観察者

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「小夜は、いつも、どこにいるの?」

 月夜は質問した。

「うーん、ここではない、どこかです」小夜は少し首を傾げて答える。「もちろん、その社の中に収まっているわけではありません。それはあくまでゲートのようなものです」

「ここではないどこかで、何をしているの?」

「特別何かをしているわけではありませんが、物の怪たちの動向を探っています」

「どうやって?」

「どうやってというのは、少し答えにくい質問ですね……」小夜は考える素振りを見せる。「そうですね。たとえば、私たちが毎日天気を気にして生活しているのと同じ感じです。朝起きたら、まずは窓を開けて外を確認します。本を読んだり、料理をしたりしていて、意識が別のところに向かっていても、雨が降ってきたら誰でも気がつきます。それと同じです。私の対象は物の怪が専門ですが、それ以外にも色々なことを専門にしている人がいるかもしれません」

「小夜が物の怪のことを理解できるのは、フィルとの関係があるから?」

 月夜がそう質問すると、小夜は肩を震わせて小さく笑った。

「ええ、そうです」

 フィルはもともと小夜のもとにいた。そして、二人はそれなりに親密な仲だったらしい。それなりに親密な仲というのも、また理解に差が生じるような表現だが、俗っぽくいえば、単なる知り合いのレベルではない、ということになるだろうか。もう少し噛み砕いていえば、友達ではなかった、といえるかもしれない。いずれにせよ、これらはすべて二人の関係が特別だったことを意味している。だから、特別な関係だったと最初から言えば良かったかもしれない。

 小夜には左腕がない。それは彼女が物の怪と関わりがあることと関係している。

 小夜は、一度、死を見ている。

 左腕を犠牲にして、自らの命を再生させた。

 いや、正確には命ではない。それは命とは呼べないかもしれない。

 いずれにせよ、小夜はまだ活動できる状態にある。そんな彼女が得たのが、物の怪の動向を探る役割だったということだろう。

「何にせよ、月夜は、まず、自分の身を守る必要があります」小夜が言葉を発する。「そのために何をするべきなのか、考えておきましょう。私も協力できることはします。私がいなくても、フィルを通してある程度の情報を伝えることができる、と予想しています」

「どうも、ありがとう」月夜は言った。
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