舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第6章

第60話 表裏一体

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 雨が降り始めた。天気予報では言われていなかったことだ。しかし、天気予報は確率を基にしているので、外れるのは特別珍しいことではない。それも一つの現象として、初めから想定されている。

 折り畳み傘を持ってきていたので、帰るのに困るということはなさそうだったが、月夜はもう少し教室に留まって、様子を見ることにした。様子を見るというのは、止むようにお祈りするということと大して違わない。いずれにせよ、帰るにはまだ早い時間だったので、教室に残ること自体はいつも通りだった。

 フィルは今は眠っている……、ように、少なくとも月夜には見えた。彼は教壇の上が気に入ったようで、今もその上で丸まっている。

 自分は、きっと夜が好きなのだろうな、と月夜は思いついた。好きとか嫌いとか、そういう判断をいちいち持ち出すことはあまり好きではないが、夜という時間帯に関しては、自分の好感度が高いというのは、疑いようのないように思えた。

 以前にも考えたように、好きという感情はそれ単体で存在しているように思える。何かを見たり聞いたり知ったりしたときに、ああ、好きだな、と感じるだけで、何かと比べて好きだという判断は、ナチュラルなプロセスとはいえない。

 昼間の騒がしい教室と比べて、夜の静かな教室の方が好きだ、と言っても間違いではないが、そんな比較なしに、つまり、昼間の騒がしい教室など意識の範疇にない状態において、夜の中に身を投じていると、ああ、この時間が好きだなと感じるのだ。

 自分の名前に夜という言葉が使われていることと、関係があるだろうか、と月夜は考える。

 関係がないと言い切れる根拠などない。しかし、関係があったとしてもそれほど大きなものではないようにも思える。ただ、人間は記号というものに敏感だから、もしかすると、多大な影響を受けているかもしれない。私は月夜、私は月夜、という意識が、あるいは保身として、自分に夜が好きだという意識を芽生えさせたのかもしれない。

 夜とは、太陽の光が届かない時間帯のことだ。届かないだけで、太陽が存在しないわけではない。

 夜とは、昼と表裏一体の関係にある。球体のある一定の範囲が夜であるとき、その反対側は必ず昼になっている。

 ……その思考が何のために成されたものなのか、月夜は瞬時に判断できなかった。
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