舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第7章

第62話 How ?

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「物の怪は、私を殺すことが目的なんでしょう?」

 月夜は小夜に尋ねる。小夜はフィルとじゃれ合っていた。合っていたというより、彼女が一方的にじゃれているのだが。

「ええ、そうです」

「それなら、今私が殺されておけば、問題は解決するのでは?」

 小夜に一番訊きたいのはそれだった。しかし、小夜は表情を変えずに淡々と答えるだけだった。彼女にとっては想定していた質問の一つなのかもしれない。

「どういう視点から見るかによって、問題は異なります。当然ながら、物の怪たちからすればその通りです。貴女を殺すことが目的なのであれば、貴女を殺してしまえば、万事解決です」

 小夜は眠ろうとしているフィルを両手で掴み、そのまま無理に上へと持ち上げる。フィルは抵抗しようとはしなかったが、不機嫌そうな表情になった。

「ですが、私たちの立場から見れば、そうではありません。私たちの目標は、そうですね、あえて物の怪たちと対比させる形で言えば、貴女を生きながらえさせることです。ですから、貴女に死なれてしまうと、問題の解決ではなく、問題の肥大化に繋がります」

「小夜がここにいるのは、私が殺されないようにするため?」

 月夜の質問を受けて、小夜は少し目を細めて笑った。

「そのためだけではありません。これも私の仕事の一つだからです。ただし、リソースの多くはこの問題に割かれています。それくらい重要な任務ではあります」

「仕事とか、任務ということは、それは誰かから与えられたものなの?」

「うーん、どうなんでしょう……。……与えられたというのは違うかもしれません。そうせざるをえないので、私がやっていると言った方が正しいでしょうか。だから半ば自主的にやっていると言っても差し支えありません。仕事とか任務とかと言ったのは、そういう言い方の方が格好良いと思ったからです」

 やはり、自分は生きる方向で考えなければ駄目らしい、と月夜は現状を理解する。そして、そうなると、それは物の怪を殺す方向で考えなければいけない、ということをも意味することになる。

「物の怪は、どうやって殺すの?」

 月夜の質問に対して、小夜は少し首を傾げて答えた。

「私にも分かりません。物の怪を殺したことがないので」
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