62 / 255
第7章
第62話 How ?
しおりを挟む
「物の怪は、私を殺すことが目的なんでしょう?」
月夜は小夜に尋ねる。小夜はフィルとじゃれ合っていた。合っていたというより、彼女が一方的にじゃれているのだが。
「ええ、そうです」
「それなら、今私が殺されておけば、問題は解決するのでは?」
小夜に一番訊きたいのはそれだった。しかし、小夜は表情を変えずに淡々と答えるだけだった。彼女にとっては想定していた質問の一つなのかもしれない。
「どういう視点から見るかによって、問題は異なります。当然ながら、物の怪たちからすればその通りです。貴女を殺すことが目的なのであれば、貴女を殺してしまえば、万事解決です」
小夜は眠ろうとしているフィルを両手で掴み、そのまま無理に上へと持ち上げる。フィルは抵抗しようとはしなかったが、不機嫌そうな表情になった。
「ですが、私たちの立場から見れば、そうではありません。私たちの目標は、そうですね、あえて物の怪たちと対比させる形で言えば、貴女を生きながらえさせることです。ですから、貴女に死なれてしまうと、問題の解決ではなく、問題の肥大化に繋がります」
「小夜がここにいるのは、私が殺されないようにするため?」
月夜の質問を受けて、小夜は少し目を細めて笑った。
「そのためだけではありません。これも私の仕事の一つだからです。ただし、リソースの多くはこの問題に割かれています。それくらい重要な任務ではあります」
「仕事とか、任務ということは、それは誰かから与えられたものなの?」
「うーん、どうなんでしょう……。……与えられたというのは違うかもしれません。そうせざるをえないので、私がやっていると言った方が正しいでしょうか。だから半ば自主的にやっていると言っても差し支えありません。仕事とか任務とかと言ったのは、そういう言い方の方が格好良いと思ったからです」
やはり、自分は生きる方向で考えなければ駄目らしい、と月夜は現状を理解する。そして、そうなると、それは物の怪を殺す方向で考えなければいけない、ということをも意味することになる。
「物の怪は、どうやって殺すの?」
月夜の質問に対して、小夜は少し首を傾げて答えた。
「私にも分かりません。物の怪を殺したことがないので」
月夜は小夜に尋ねる。小夜はフィルとじゃれ合っていた。合っていたというより、彼女が一方的にじゃれているのだが。
「ええ、そうです」
「それなら、今私が殺されておけば、問題は解決するのでは?」
小夜に一番訊きたいのはそれだった。しかし、小夜は表情を変えずに淡々と答えるだけだった。彼女にとっては想定していた質問の一つなのかもしれない。
「どういう視点から見るかによって、問題は異なります。当然ながら、物の怪たちからすればその通りです。貴女を殺すことが目的なのであれば、貴女を殺してしまえば、万事解決です」
小夜は眠ろうとしているフィルを両手で掴み、そのまま無理に上へと持ち上げる。フィルは抵抗しようとはしなかったが、不機嫌そうな表情になった。
「ですが、私たちの立場から見れば、そうではありません。私たちの目標は、そうですね、あえて物の怪たちと対比させる形で言えば、貴女を生きながらえさせることです。ですから、貴女に死なれてしまうと、問題の解決ではなく、問題の肥大化に繋がります」
「小夜がここにいるのは、私が殺されないようにするため?」
月夜の質問を受けて、小夜は少し目を細めて笑った。
「そのためだけではありません。これも私の仕事の一つだからです。ただし、リソースの多くはこの問題に割かれています。それくらい重要な任務ではあります」
「仕事とか、任務ということは、それは誰かから与えられたものなの?」
「うーん、どうなんでしょう……。……与えられたというのは違うかもしれません。そうせざるをえないので、私がやっていると言った方が正しいでしょうか。だから半ば自主的にやっていると言っても差し支えありません。仕事とか任務とかと言ったのは、そういう言い方の方が格好良いと思ったからです」
やはり、自分は生きる方向で考えなければ駄目らしい、と月夜は現状を理解する。そして、そうなると、それは物の怪を殺す方向で考えなければいけない、ということをも意味することになる。
「物の怪は、どうやって殺すの?」
月夜の質問に対して、小夜は少し首を傾げて答えた。
「私にも分かりません。物の怪を殺したことがないので」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
痩せたがりの姫言(ひめごと)
エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。
姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。
だから「姫言」と書いてひめごと。
別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。
語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる