舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第7章

第70話 relation

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 携帯電話にメッセージが届いて、送り主を確認すると真昼からだった。メールには一言、


>また会おう


 とだけ書かれていた。

 このメールが送られてきたのは今だが、書いたのが今だとは限らない。先に書いておいて、なんとなく送るのを躊躇して、でもあとでやはり送りたくなって送った、ということも考えられなくはない。送信するにはボタンを一度押すだけで済む。いたって簡単な操作だ。一度飲み込んだ言葉を再び喉にまで持ち上げて、口を開いて音を発するよりは簡単だろう。

 たった一行のメッセージだったが、月夜はそこから色々な情報を読みとれるように感じた。読みとれるというのは、可能性を意味している。つまり、別の表現を用いれば、読みとれうる、ということになる。

 自分は真昼ではないので、真昼がどのようなつもりで、どのような心境でこのメッセージを送ったのか、本当のところは分からない。けれど、想像することはできる。そして、送り主である真昼は、自分が送ったそのメッセージを、相手がどのように受け取るか想像することができる。人間同士のコミュニケーションは、通常幾重ものイメージによって支えられている。

 自分と他者を分けることはできるだろうか?

 自分とは、自ら分けると書いて、自分という。つまり、意識的か無意識的かはともかくとして、そこには分ける操作が関わっている。もしその操作をしなかったら、自分と他者は不可分な存在となるだろうか? あるいは、本来不可分な存在なのだろうか? 生態系というような言葉を使って、一つに纏めて捉えることもできなくはない。しかし、そのように捉えているのは主体であり、主体とは要するに自分のことだ。そうなると、やはり自分は自分で、他者は他者だというような解釈をするのがベストのように思えてくる。

 人は常に繋がりを求めている。

 そして、繋がったと感じる瞬間がある。

 それは幻想で、初めから繋がっているものなのだろうか?

 自分と真昼はどうだろう、と月夜は考える。そして、自分とフィルの場合も。そこに何らかの繋がりを感じているだろうか? おそらく、感じているように、彼女には思えた。

 この世界に存在する物質の内、たぶん、繋がっている物質の方が、繋がっていない物質よりも多い。心と呼ばれるものは、おそらく物質ではないだろうが。
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