舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第9章

第90話 変わらない日常と捉えるか?

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 午後の陽光に照らされる教室。

 眠っている学生。

 話している教師。

 窓から差し込んだ光に照らされて、机の表面が温かくなっていた。掌で触れると皮膚が解れるような気がする。黒味がかかったシャープペンシルをそこに置き、どれくらい早く温かくなるか確かめる。

 現代文の授業だった。いつも通り、物語文や説明文を読んで、それに対して回答する形式だ。今は文章を読んでいる段階で、教師の声が教室の中に漂っていた。音読に慣れているのか、なかなか良い発音で、だから生徒の睡眠欲を掻き立てているようにも思える。一方、月夜はまったく眠くはならなかった。昨晩もあまり眠っていない。

 フィルは、皿を落とした犯人を見つけることができただろうか? たぶん、見つかっていないのではないかというのが、月夜の予想だった。根拠はない。ただ、なんとなくそんなふうに思えただけだ。だから、そういうことは人には伝えない方が良い。

 黒板にチョークを打ちつける音。教師が板書をし始めたから、皆ペンを持って各自のノートにそれを写す。月夜もそれに従う。大抵の場合、そこに書く内容はさほど重要ではない。たぶん、大学に進学したときや、就職したときに、自らノートをとるための訓練をしているのだろう。

 文字を、書く、書く、書く。

 文字が繋がって文になり、文が繋がって文章になる。

 文章を構成しているのは文であり、文を構成しているのは文字なのに、一つの文字から文章の全体像をはかることはできない。つまり、出来上がった文章には、構成要素一つ一つが持つものだけではない意味が生じることになる。

 人間の社会はどうだろう? 以前、法律に関する授業を受けたが、あれも、人間が沢山集まると、ルールが必要になるという話だった。この場合も、構成要素が集まることによって、新しい力が生じるのだと解釈することができるだろうか?

 物の怪は、どんなルールに則っているのだろう?

 彼らの目的は、自分を殺すことだ。では、殺すのはどうしてだろう?

 一番簡単な答えは、彼らにとって自分という存在が障害になるというものだ。たしか、小夜もそんなことを言っていなかったか。物の怪たちからしてみれば、自分はシステムの構成要素として相応しくない存在なのかもしれない。

 やはり、死は何も特別なものではないだろう。

 特に自分自身の死に関しては……。
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