舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第10章

第94話 そもそも人間とは何かと問うのはなぜか

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 コーヒーカップを机の上に置く。

 温かいコーヒーを飲むために、わざわざ電子レンジで温めたのに、何か作業をしている内に、いつも冷めてしまう。最初から冷蔵庫に入っているものよりも、温度が逃げてしまった飲み物の方が冷たく感じられるから、不思議だ。

 箸とプラスチック製のケースと、それからハンバーグの入っていた袋が、机の上に散らばっている。右斜め前方に観葉植物の植木鉢。その隣に、アルコールジェルが入ったポンプ。さらに、陶器製のカップ。

 自分の世界は、この机の上だけで充分かもしれない、などと考えたりする。実際には、パソコンはインターネットに繋がっているし、眠るときは布団に入るわけだから、本当に充分だとはいえない。けれど、仮にそれだけのスペースで生活しろと言われたら、三日くらいはなんとかなるかもしれない。

 頭の良い人間は、頭の中の世界が豊かなのだ、と考えられているみたいだが、そうとも限らない。頭(ここでは脳の意)も世界の一部であり、頭の中で展開されることは、その外から得た情報を基に成り立っている。したがって、どれだけ頭の良い人間でも、外部環境に依存しているのは間違いない。ということは、頭の良い人間、要するに計算能力の高い人間というのは、自分が必要としている情報を外部から素早く取得し、そして、一度取得した情報を逃さない、という能力を持っているように思われる。

 どれだけ頭が良くても、人間には違いない。つまり、同じ言語を用いて思考している。それはコミュニケーションをとるための、言語らしい言語ではないかもしれないが、音であれ、映像であれ、ほかの人間に真似のできないものではない。しかしながら、では頭の良い人間の真似をすれば、自分も頭が良くなるかというと、そういうわけでもない。

 もし緻密に真似をしようとすると、良い頭が必要になる。計算能力を高めるためには、計算能力の高い人間の真似をする必要があり、適確に真似をするためには、計算能力の高い頭が必要になる。

 うーん……。

 どうしてこうなるのだろうか。

 たぶん、いや、おそらく……。

 たぶんでもおそらくでもどっちでも良いが、頭の良い人間が、人間を超越しているということはないのではないか……。あくまで人間の範疇に収まっているわけで、一般には理解できないのだと結論づけてしまうのは、尚早な判断と言わざるをえないのでは……。

 そもそも「人間」とは何か?
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