舞台装置は闇の中

羽上帆樽

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第13章

第130話 nothing important

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 鳥の鳴き声。虫の鳴き声。

 お腹が鳴る音。

「月夜は食事をしないんじゃなかったっけ?」

 真昼が尋ねてきた。どうやら彼は耳が良いみたいだ。

「しないわけではない」月夜は答えた。「あまりしない」

「今日は食べたの?」

「食べた」

「へえ、珍しいね」

「ルゥラに食べさせられた」

「ルゥラっていうのか」そう言って、真昼は少し笑う。「なるほど。彼女らしい」

「どういう意味?」

「いや、別にどういう意味でもない。単なる感想というか」

 真昼はまたお茶を飲む。

 彼はどこにいるのだろうと、真昼に会う度に月夜は思う。今、目の前にいることは確かなのに、そこにいないように思える。手を伸ばせばきちんと触れられるし、会話もできるのだから、いることは間違いない。

 しかし、存在というのはよく分からない状態だ。その人の身体が見えていれば、それは存在することになるのだろうか? 物理的に触れられる必要もあるだろうか? 声が聞こえる必要もあるだろうか? 見えていて、触れられて、声も聞こえていても、その人がそこにいないように、感じられる、こともある。それは、その人が自分の話を聞いていなかったり、ぼんやりしていたりする場合だ。

 存在とは何か?

「僕が片づけられる皿は、せいぜい十数枚程度だから、あとは小夜に任せることにしよう」真昼が呟いた。彼もフィルと同じで、いつも一人で話しているような感じだ。「そのルゥラという子は、君に何か悪いことをしてくるの?」

「悪いことかは分からないけど、私にご飯を食べさせようとしてくる」

「なるほど。まあ、それくらいなら大丈夫かな」

「何が?」

「害と呼ぶほどではないだろう」

「害とは?」

「危害の害」

 ルゥラは今は二階の自室で眠っている。明日はどうなるだろうか。いつまでこんな生活が続くのだろう。別に不満があるわけではないが、ある程度の期間が分からなければ、対処のしようがないというのが正直なところだ。洋服を買ってやらなければならないし……。

「さて、じゃあ僕はそろそろ行こう」

 真昼は立ち上がって、月夜を上から見下ろした。

「また、会える?」月夜は少し首を傾げる。

「うん、きっと」

 視線が交錯する。

「何?」

「いいや、何でも」月夜は首を振った。「本当は、もう少し一緒にいたかった」

「へえ、君の口からそんな言葉が出てくるなんて、珍しいね」

「たしかに、統計的に頻度が小さいから、珍しい」

「その言い方は、いつも通りだね」
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